腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶

文字の大きさ
65 / 94
第2章

美凪side ② 後編 その②

しおりを挟む
 美凪side ② 後編 その②





「……い、居ますね」

 曇りガラスの向こう側に、彼の姿が見えました。

 は、肌色です……
 全裸で居るのがわかりました。

 お、お風呂に入っているんですから当然ですよね……

 私は勇気を振り絞って、曇りガラスをコンコンと叩きました。

「……え?」

 お風呂場から、彼の声が聞こえてきました。

 すると、こちらに振り向いてきて、すごく慌てたように私に声を掛けてくれました。

「どうした!!もしかして、不審者が現れたとかそう言うのか!!??」

 あぅ……も、申し訳ないです……

 そんな心配をさせてしまうとは、考えていなかったです……

 私はかなりの申し訳なさを感じながら、彼に自分の考えを話しました。

「そ、その……お背中を流そうかと……」
「は、はああああああああぁぁぁ!!!???」

 かなり大きな彼の声。相当びっくりしてるのがわかりました。

 あはは……そうですよね。突然過ぎますよね……

「な、何でそんな事いきなり言ってくるんだよ!!」
「お、お世話になってるので……」

 私は彼に理由を話しました。
 するとやはり、当然の返事が来ました。

「そ、そんなことは求めてないんだけど……」
「だ、ダメですか……?」

 ですが、私は引きたくありません……

 貴方からはっきりと『ダメだ』と言われるまでは諦めません……っ!!

 少しだけ思案したあと、彼は絞り出すように答えてくれました。

「…………わかった。良いよ。許可するよ」
「あ、ありがとうございます!!」

 私はあまりの嬉しさに、思わず曇りガラスの扉をガラリと開けてしまいました。

「…………は?」
「…………あ」

 驚いた表情の彼。

 彼は毎日筋トレをしているので、帰宅部とは思えないとても引き締まった身体をしています。

 そして、私は思わず視線を下に向けてしまいました。


『…………な、なるほどぉ』


 小さい頃にお父さんとお風呂に入ったことがあります。

 あのCMのような事をした記憶もありますね。

 その時に目にしたものよりも、彼の方が……


 い、いけません。これ以上は天国のお父さんに対して失礼です……




「…………何か言うことはあるか?」

 彼の声で、私は視線を元に戻しました。

 仁王立ちする彼の姿に私は少しだけ安堵を覚えます。

 お、怒ってはいないように見えます……

 なので私は感想をそのまま伝えました。

「ご、ご立派ですね」

 その言葉に、彼はすごく微妙な表情を浮かべました。

「し、失礼しました……」

 私はそう言って、曇りガラスを閉めました。

 か、顔が熱いです……

 あ、あんな大きいのが私の中に入るのは、ちょっと想像するだけで大変そうです……

 なんてことを思っていると、浴室から彼の声が聞こえてきました。

「…………まぁ、一緒に暮らしていけばこういう事故もあるだろうから特に俺から何かを言うことは無いが、気を付けてくれ」

 ため息混じりでそう言われた言葉。
 本当に……申し訳ございません……


「は、はい……」



 その、貴方が望むのでしたら、私の身体をお見せしても構わないですよ……

 そんなことを考えていました。

「……はぁ。開けていいぞ」
「は、はい!!」

 再び曇りガラスの扉を開けた私の目の前に居たのは、腰にタオルを巻いて、お風呂用の椅子に座った隣人さんでした。

 私は濡れたタイルで転ばないように気をつけながら、浴室の中を進みます。

 そして、彼に先程のことを謝罪しました。

「さ、先程は失礼しました……」
「まぁ気にするなよ。今度はお前の裸を見せてもらうから」

 た、多分冗談だとは思います……
 で、ですが……その、えっちな隣人さんです。
 もしかしたら本気かも知れません……

 で、ですので私は……

「お、お望みでしたら……」

 と答えました。

「頼む。冗談だから本気にしないでくれ……」

 で、ですよねぇ……

 ため息混じりに言われた彼の言葉に、私は少しだけ悔しい気持ちを持ちながらも、こんな対価みたいな形で彼に見せることがなくて良かったと思いました。

 そして、私は彼からボディタオルを受け取りました。

「好きにしてくれ。多少強めに擦ってくれる方が嬉しいかな」
「わ、わかりました。では、失礼します!!」

 私はそう言って、彼の背中にシャワーをかけました。

 だ、大丈夫ですよ!!きちんとお湯が出るようになってから、彼の背中を濡らしていきます。

 そうした後、私はボディソープを付けて泡立てたボディタオルで彼の背中を擦っていきます。

 私が使ってるボディタオルより、かなり目の粗い物を使ってますね。こんなのでゴシゴシしたら、私の柔肌だったら真っ赤になってしまいます。

 そんなことを思いながら、彼の背中をゴシゴシしていると、

「もう少し強くていいぞ?」

 何だか物足りなさそうな声でそんなことを言われました。

「え?結構強くやってますけど?」

 私がそう言うと、彼は少しだけ笑いながら、

「あはは。まだまだそんなんじゃ俺は満足出来ないぞ?」

 なんて言ってきました。

「わかりました!!目いっぱい強くやりますよ」

 少しだけ悔しくなった私は、彼の背中を力いっぱいゴシゴシしてやりました!!

「おぉ……いい感じだな」

 彼がそんなことを言った時でした。

 濡れたタイルで力を込めてたのがいけなかったのでしょうか?

 私はツルッと滑ってしまいました。

「わわ!!」

「美凪!?」

 私は転びたくない一心で彼の身体に抱きつきました。

 泡とお湯で濡れた彼の体を思いっきり抱きしめてしまったので、私の服はびしょびしょです……

「す、すみません……滑りました……」
「わ、わかったから……怪我は無いか?」

 少しだけ焦ったような声で言われた、私の身を案じる彼の言葉に、私は自分の身体は無事だったことを伝えます。

「はい。隣人さんに抱きついたお陰で転ぶことは無かったです」

 お風呂場で転ぶと痣になったり、下手したら骨折とかもあります……

 部屋着がびしょびしょになったくらいなら、全然マシな方だと思います。

 一応。彼にも服が濡れたことは伝えておきました。

「で、ですが……着ていた服はびちょびちょです……」
「だろうな……」

 濡れた服のせいで、私は少しだけ身震いをしました。

 いけませんね。このままでは風邪を引いてしまいます。

「これは、すぐに脱がないと風邪を引いてしまいますね」
「そうだな。身体が冷えるからな」

 ……………………よし。

 私は覚悟を決めました。

「じゃあ。服を脱いで来ますので、一緒にお風呂に入りましょう」
「………………え?」

 このまま濡れた服を着ていては風邪を引いてしまいます。

 そして、まだまだ肌寒い四月に、冷えた身体のままでいるのも健康的ではありません。

 私は浴室から出て行きます。

 そして、服を脱いで彼と共にお風呂に入ることを決めました。

「お前!!マジで言ってるのかよ!!」
「はい。風邪を引いたら大変ですからね」

 焦ったような彼の声。そうですね、覚悟が完了してる私とは違って、隣人さんには少し刺激的かも知れません。

「た、確かにそうだけど……」

 ですが、やっぱり好きな人とは言え、裸を見られるのは恥ずかしいですからね。

 視線は外しておいてもらいたいです……

 私はそのことを彼に伝えました。

「あはは。ですが流石に少しは恥ずかしいので視線は逸らして貰えると嬉しいです……」


 私はそう言って、浴室の曇りガラスの扉を閉めました。

 曇りガラスの向こう側の彼は、お風呂用の椅子に座りながら、頭を抱えているように見えました。

 あはは……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 みんなと同じようにプレーできなくてもいいんじゃないですか? 先輩には、先輩だけの武器があるんですから——。  後輩マネージャーのその言葉が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  そのため、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると錯覚していたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。そこに現れたのが、香奈だった。  香奈に励まされてサッカーを続ける決意をした巧は、彼女のアドバイスのおかげもあり、だんだんとその才能を開花させていく。  一方、巧が成り行きで香奈を家に招いたのをきっかけに、二人の距離も縮み始める。  しかし、退部するどころか活躍し出した巧にフラストレーションを溜めていた武岡が、それを静観するはずもなく——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  先輩×後輩のじれったくも甘い関係が好きな方、スカッとする展開が好きな方は、ぜひこの物語をお楽しみください! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...