腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶

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第2章

美凪side ② 後編 その③

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 美凪side ② 後編 その③





 浴室から出た私は、濡れた部屋着を脱ぎ捨てて洗濯機の中へと放り込みます。

 彼の服と私の服が絡まるのを見て、何だかえっちに見えてしまうのは……ちょっと変態かも知れません……

 そして、私はかなり大きいバスタオルで身体を覆います。

 流石に素っ裸で浴室に突入するような真似はしませんよ……

 バスタオルを巻いた身体で湯船に浸かることも許してもらいたいところですね。

 スー……ハー……

 私は大きく息を吸って……吐きます。

 深呼吸をした後に、もう一度曇りガラスの扉を開けて中に入ります。


「……し、失礼します」
「お、おぅ……」

 浴室に入ると、隣人さんは身体は既に洗っていたようです。
 後は、頭を洗う感じですかね。

 私はその間に湯船に浸からせてもらうことにします。

「そ、その……私は湯船に入って待ってますね」
「……わかった。俺はあとは頭を洗うだけだから」

 私は湯船に浸かるため、そう言う彼の横を通りました。
 チラリ。と彼が私を見たのがわかりました。

 ふ……ふふーん?怪我の功名かと思いますが、かなり意識してますね。

 で、ですがやっぱり恥ずかしいですね……

「ば、バスタオルを巻いたまま湯船に入るのは許してください……」
「そんなことを気にする人間じゃないから平気だよ。てか……下はやっぱり裸なのか?その……実は下に水着を着てました……とか」

 はぁ……隣人さんは漫画の読みすぎですね。

 まぁ、私が言える立場ではありませんが……

 お風呂に入るのに水着なんて有り得ませんよ。

 私は湯船に身を沈めながら、彼に言いました。

「着てません。その……隣人さんは漫画の読みすぎでは?この時期に水着なんてすぐに用意できませんよ」
「そ、そうか……すまん」

 隣人さんはそう言うと、自分の頭にシャワーをかけ始めました。

「少し泡が跳ねるかもしれないけど、その時はすまん」
「平気ですよ。そのくらいでしたら我慢出来ますから」

 私がそう言うと、彼は頭をシャカシャカと洗い始めました。

 …………無防備ですね。

 私の心に、ムクムクとイタズラ心が湧き出てきました。

「…………えい」

 私はツンと彼の脇腹をつついてみました。

「うぉおおおい!!??」

 驚いて身をよじる隣人さん。
 ふふふ。可愛いですね。

「えへへ。イタズラをしてしまいました」
「こっちは無防備なんだから、それは酷いと思うんですけど!!」

 おやおや?隣人さんが敬語を使って抗議をしてきました。
 なかなか珍しい言葉使いです。

 随分と余裕が無いように見えます。

 そんな彼の姿に、私は愛おしさを感じてしまいます。

「ふふーん?いつもは冷静沈着な隣人さんの慌てふためく所は貴重です。もっとイタズラをしたくなってしまいますね」
「お、お願いします。美凪お嬢様。その……もう少しだけ猶予をくれませんか?」

 敬語で懇願する隣人さん。

 そうですね。でしたら私としても、貴方に是非ともお願いしたい事があったんです。

「仕方ないですね。それでは私の頭を洗ってくれるのでしたら我慢してあげます」
「はぁあああ!!!???」

 どうやらさっさとこの場を立ち去ろうと考えていたようですね。そうは問屋が卸さないです!!

「ふふーん。この私の髪の毛を洗えるなんて光栄だと思ってくださいね!!」
「さ、さっさと風呂場から出て行きたいんだけど……」

 やはりそうでした。
 私はニヤリと笑いながら人差し指を立てました。

「ツンツンされたいんですか?」
「いえ、洗わせてもらいます!!」

 やりました!!彼から良い返事が貰えました!!

 ドライヤーで彼に髪を乾かして貰うのもとても気持ち良かったので、今回も非常に期待しています!!

「ふふーん。今から楽しみです!!期待してますからね、隣人さん」
「……はい。丁寧に洗わせていただきます」

 そして、シャワーで頭の泡を洗い流し終えました。

 彼はお風呂用の椅子から立ち上がり、私にその場を譲りました。

「ほら、椅子に座れよ」
「はい。了解です」

 私は湯船から立ち上がり、椅子へと向かいます。

 ……おっと。いけません。
 濡れたバスタオルが身体から落ちそうになりました。

 そ、それに、身体にピタリと張り付いてるので、この私のパーフェクトボディのラインが丸わかりです……

 こ、これは結構恥ずかしいですね……

「……っ!!??」

 隣の隣人さんを見ると、こちらを見たあとに慌てて視線を逸らすのが確認出来ました。

 ふ、ふふーん?あ、貴方でしたらガン見しても良かったんですよ?

 そんな彼の様子に、私は少しだけ余裕を取り戻して椅子に座りました。

「それではよろしくお願いします」
「あ、あぁ……」

 私はお風呂用の椅子に腰を下ろし、彼にそう告げました。

 そして、彼はキチンとシャワーがお湯になったのを確認してから私の頭を濡らしていきます。

 私用のシャンプーを手に取り、ゆっくりと丁寧に、優しく私の頭を洗い始めました。

「……どうだ?」

 不安気な彼の言葉。私は安心させてあげようと思い、正直な気持ちを告げました。

「……はい。とても気持ちいいです。隣人さんはお上手ですね」

 毎日こうしてもらいたい。そう思うくらいに、彼からの施しは気持ちが良いです……

 そんなことを思ってると、隣人さんはわざとらしく床屋さんみたいなことを言ってきました。

「お客様ー痒いところはありませんかー」

「あはは。大丈夫ですよー」

 きっと余裕が無かったんですね。
 そんなことを言わないと耐えられないくらいに。

「じゃあシャワーで流すからな」

 彼はそう言うと、私の髪の毛からシャンプーの泡をしっかりと洗い流していきます。

 そして、私用のトリートメントを丁寧に塗り込んでくれます。

「髪の毛が長いと大変だな」

 隣人さんは私の髪の毛に触れながらそう言いました。

「そうですね。ですが、こうした努力を普通の女の子ならみんなしてますよ?」
「そうなのか。女の子は大変なんだな」

 そうなんです。女の子は大変なんですよ?

 大好きな貴方に、いつだって最高に綺麗で可愛い私を見てもらいたいから。

「あはは。そうですよ。『気になる男の子』に、綺麗だねって言ってもらいたいですからね」
「………………そうか」

 私の『意味深』なセリフの意味。
 隣人さんならわかりますよね?

 ふふーん。これからもどんどんアプローチをかけていきますからね!!

 我慢出来なくなって、貴方が狼さんになっても私は一向に構いませんからね。

「ありがとうございます。隣人さん。とてもお上手でしたよ」

 私が彼にお礼を言うと、ほっとしたような声でそう返事がありました。

「あはは。どういたしまして。じゃあ俺は風呂から出るよ」

「はい。では私も身体を洗いますね。お風呂から出たらご飯にしましょう」
「そうだな。じゃあな、美凪」

 隣人さんはそう言って、曇りガラスの扉を開けて浴室を後にしました。


「……ふぅ」

 とても緊張しました。

 私は濡れたバスタオルを外してから、私用のボディタオルで身体を洗っていきます。

 まさかこんなことになるとは、夢にも思っていませんでしたが……

「……ですが、とてもとても意識して貰えたのはわかりました」

 お風呂から出たら二人で作ったカレーを食べて、寝る支度をしましょう。

 今日は結構歩きましたからね、しっかりと寝て明日に備えましょう。

 私は髪の毛のトリートメントと、身体の泡をしっかりと洗い流してから、浴室を後にしました。
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