腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶

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第2章

第十八話 ~美凪の意外な心情を知り、手を繋いで映画を観た件~

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 第十八話




 電車での移動を終え、俺と美凪は手を繋いで駅を出る。

 ここから歩いて五分ほどのところに映画館がある。

「今回の映画は私はとても楽しみにしてるんですよ」
「わかる。あの監督の六作目だよな。なんだか丸くなった。みたいな事を言われてるけど、どうなんだろうな」

 なんて会話をしながら映画館へとやってきた。

「わぁ……結構大きいですね……」
「だな。俺も初めて来たけどちょっと驚いたわ」

 時間は上映時間の二十分前。
 だいたいこのくらいの時間になるようにあわせてやってきた。

「売店でポップコーンとか飲み物を買おうか。チケットは今朝のうちにアプリで購入してあるから、ここでは買う必要は無いから」
「……え?そこまでしてくれてるんですか!!」

 驚いた表情の美凪に、俺は笑いながら答える。

「当たり前だろ?せっかくのデートだってのに、席が離れてたら意味が無いし、観れませんでした。なんてのもかっこ悪いだろ」
「や、やけにデート慣れしてるように見えますね……今まで何人の女の子を手篭めにしてきたんですか……」

 なんかジトっとした目で見られてるけど、勘違いしないで欲しいな……

「いや、正直な話。これまで彼女なんか居たことないし……そもそも女の子とこうして出かけるのだってお前が初めてだよ」

 こうした行動だって、ネットで必死こいて調べたことだからな。まぁ……そんなことを話すつもりなんか無いけど。

「そ、そうですか……私が初めて……」
「今だってめちゃくちゃ緊張してるよ。そう見えないように取り繕ってるだけだよ」

 俺は苦笑いを浮かべながら、美凪にそう言った。

 こいつは見た目だけならとんでもない美少女だからな。
 こうして外に出て二人で過ごすってのはやはり緊張する。

「ふふーん!!そうですか、やはりこの超絶美少女で美の女神の美凪優花ちゃんです!!一緒に居れば緊張してしまうのも当然と言えるでしょう!!」

 美凪はそう言うと、豊かな胸を張って言葉を続けた。

「ですがあまり気にする事はないですよ。貴方が多少何かを失敗しても、私はそれを気にしたりなんかしませんから」
「あはは。そうか、それなら安心だな」

 とは言っても俺も男だ。
 惚れた女の前ではかっこいい姿を見せて行きたい。

 これからも、この高嶺の花過ぎる美凪のために男磨きを頑張っていかないとな。

 俺はそう決意した。



 そして、俺と美凪はポップコーンとコーラを買って劇場の中へと入った。

 席は真ん中より少し後ろ。俺と美凪は並んで座る。

「なかなか良い席ですね!!」
「だろ?今朝取った割には良いところを選べたと思ってる」

 軽くポップコーンを摘みながら俺たちは開演を待つ。

「その……手を握っててもいいですか?」
「……え?ホラー映画の類じゃないぞ、この映画は」

 予想外の美凪の要求に、俺は疑問符を浮かべた。

「あはは……正直な話をすると、広く開けた場所って寂しさを感じてしまうんです。映画の内容どうこうと言うよりは、貴方と手を繋いでいると安心出来る。そう思ってください」
「なるほどな。暗くて狭い場所が苦手ってのは聞いたことがあるけど、逆もあるんだな。ごめんな、知らなかったよ」

 俺はそう言って美凪の手を握る。
 少しだけひんやりとした、小さくて柔らかい手。

 正直な話。ずっと触れていたいと思ってもいた。

「別に泣き叫ぶようなものでもないですよ。ちょっとだけ、苦手ってだけです。映画が始まればそんなのは気にならないとは思います」

 美凪はそう言うと、前を向いて言葉を続けた。

「貴方と手を繋いでいたかった。その理由の方がしっくりくるかもしれませんね」
「……ずいぶんと可愛いことを言うじゃないか」

「あはは。美凪優花ちゃんはとっても可愛い女の子ですよ。今頃気が付いたんですか?」

 そんな話をしてると、映画が始まった。

「始まりましたね。会話は控えましょうか」
「そうだな。それと、美凪。さっきの質問だけど答えてやるよ」
「……え?」

 俺はスクリーンから視線を外し、美凪の方を向く。
 彼女も同じタイミングでこちらを向いていた。

「お前のことは、始めて会った時から『笑顔が似合う可愛い女だな』そう思ってたよ」
「り、隣人さん……っ!!??」

 俺のその言葉に、美凪は薄暗い中でもわかるくらいに顔を真っ赤にした。

「さ、映画に集中しようか」

 俺はそう言うと、スクリーンに視線を戻した。


 …………映画に集中なんか出来ませんよ……隣人さんのバカ……

 隣の席から、美凪のそんな声が聞こえてきた。

 そうだな、俺も集中なんか出来そうにないな。



 なんて思っていた俺だったが、それは映画が始まる前までのこと。

 ストーリーが始まったら、俺と美凪は有名な監督の作り出した世界観に引き込まれて行った。
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