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第2章 前編
第二十七話 ~凛音と話したあとに永久さんに報告をしました~
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第二十七話
雅紀さんの部屋を後にした俺は、階段を上って二階にある凛音の部屋に向かう。
一階の居間では美鈴と静流さんが談笑をしているのが見えた。
時刻は二十一時。凛音との話が終わったら帰るような感じになりそうかな。
そんなことを思いながら、俺は凛音の部屋の扉をコンコンとノックする。
「入りなさいよ」
と言う声が中から聞こえてきた。
俺はガチャリと扉を開けて中に入る。
パジャマ姿の凛音がベッドに腰かけるようにして座っていた。
「これに座るぞ」
「構わないわよ。好きにしなさい」
俺は床に置いてあるクッションに腰を下ろす。
「で?何の話があるんだよ」
俺がそう言って話を切り出すと、凛音は言葉を返してきた。
「あんたの『覚悟』を聞いておこうと思ったのよ」
「覚悟?なんの覚悟だよ」
「北島永久とはどんなつもりで付き合ってるのか?ってことよ」
「本気に決まってるだろ。将来的には結婚して『夫婦としての家族』になるつもりだよ」
俺がそう言うと、凛音はニヤリと笑っていた。
「そう?良かったわ。あんたがここで遊びで付き合ってるなんて言うなら軽蔑してたわ。あの女は男ウケする身体をしてるわよね」
「永久さんは貧乳のお前には無いものを持ってるからな」
俺がからかうようにそう言うと、凛音が噛み付いてきた。
「貧乳じゃないわよ!!ちょっと物足りないだけよ!!それに、私はこれから成長期よ!!」
凛音はそう言ったあと、咳払いをして話を元に戻した。
「先に話をしておくわ。私はあんたと『本当の家族』になる道を諦めてないわ」
「……そうか」
「明日。私は北島永久と桜井霧都の二人に『宣戦布告』をするわ。本気で戦うつもりだから覚悟しなさい」
「宣戦布告か。いいよ。お前が何をしてきても、俺と永久さんは揺るがない」
俺はそう言うと、クッションから腰を上げる。
「話はそんな感じか?」
「ええ、そうよ。美鈴を連れて帰っていいわよ」
俺のその言葉に、凛音は笑って答えた。
……随分と余裕を感じる。
自分の策略に余程自信があるのだろうか……
でも、何かを考えてもわかるものでは無いよな。
俺はそう結論付けることにした。
「後、お昼は放送室に行く予定だからあんた達は食堂で食べてなさい」
「何かあるのか?」
「この間の体育祭の練習場所を確保するにあたって、放送部の三郷先輩と取り引きをしたのよ。私の話を放送の時間にする予定よ」
人気者の辛いところよね。
なんて言葉をヤレヤレと言ってきた。
「そうか。まぁタダではあの場所は貰えないよな」
俺はそう言って凛音の部屋を後にした。
そして、美鈴を連れて自宅へと戻ってきた俺は、自室で永久さん電話をかけることにする。
とりあえず先にメッセージで、
『今帰ってきたよ。電話しても平気かな?』
と送る。
……すぐに既読が着いた。
『はい。お待ちしておりました。いつでも電話は平気です』
と返信が来た。
スマホをずっと見てたのかな……と、思えるようなスピードだった。
そんなことを思いながら、俺は永久さんに電話を掛ける。
プルル……ピッ
『もしもし。北島永久です。霧都くんですね?』
は、早い……
「う、うん。そうだよ。今帰ってきたところだよ」
電話を取るまでのスピードに少しだけ戸惑いながらも、俺は言葉を返す。
『何かありましたか?』
「そうだね。まずは凛音のお父さん。雅紀さんには、きちんと話をしてきたよ。そして俺の覚悟も話してきた」
『覚悟。ですか?』
「うん。雅紀さんは俺が凛音を幸せにして欲しいと思ってる人だったからね。その約束は果たせない。たとえ凛音を傷付けたとしても、俺は永久さんと歩いていく。その覚悟を話してきた」
『……っ!!ありがとうございます。私はその言葉が聞けてとても嬉しいです』
「その後は、凛音とも話したよ」
『……ですよね。内容は聞いても良いですか?』
「もちろん。そのつもりで電話をしてる。俺は君に対して基本的には隠し事をしたくない」
『そうですか。では聞かせてください』
「凛音からはどのくらい本気で永久さんと付き合ってるのかを聞かれたよ。だから答えたよ。本気で付き合ってる。結婚して『夫婦としての家族』になるって話しをした」
『……それに対して南野さんはなんて言ったんですか?』
「私はまだあんたと『本当の家族』になることを諦めてない。そう言われたよ」
言葉の捉え方によっては、凛音は俺に対して『恋愛感情』を持ってる。そうとも思える。
でも、だからなんだと言うんだ。
今更そんなことを言われても俺にはもう何も響かない。
凛音と俺の間にはもう『恋人になり夫婦になる』そういう未来は存在しない。
『……そう、ですか』
「でも、だからどうした。と思ったよ」
『……え?』
疑問符を浮かべる永久さんに俺は言う。
「捉え方によるけど、凛音が俺に対して恋愛感情を持ってるようにも聞こえる。でも、そんなことはもう俺には関係の無い話で、響かない。俺とあいつが恋人になって夫婦になる。そういう未来は存在しないよ」
『……霧都くん』
「まぁ、別に凛音が嫌いな訳じゃない。『恋愛感情』はもう無い。そうは言っても十年来の幼馴染だ。それなりの仲の良さは残ってると思う。そこは永久さんにもしかしたら心配をかけてしまう部分かも知れない」
『……そうですね』
「でも、俺はもう君と未来を共にすると決めた人間だ。今更凛音が何を言ってきたとしても『幼馴染』以上の何かになることは今後一切無いと断言出来るよ」
『……ありがとう……ございます』
少しだけ……泣いているような気配を感じた。
少しは彼女の不安を取り除くことが出来たのか。
彼女を直接見てないのでそれはわからないが、出来たと信じたい。
『……霧都くんの覚悟と気持ちを受け取りました。ありがとうございます。私はとても嬉しく思います』
「少しは……君の不安を取り除けたかな?」
『はい。ですが、これは今後ずっと抱えていくものだと思っています』
「そう……だよね」
俺と凛音が過ごして来た過去は消えない。
俺が凛音を好きだった過去も消せない。
永久さんの不安な気持ちは今後もずっと続いていく。
俺がしなければならないことは、彼女の不安をずっと解消し続けること。
愛と覚悟を伝え続けること。
「永久さん。俺は君以外の人と結婚して家族になるつもりは微塵も無いからね」
『はい。私も貴方以外の人とお付き合いすらするつもりはありませんから』
「大好きだよ、永久さん」
『はい。私も霧都くんが大好きです!!』
俺は時計を確認する。そろそろ寝る時間になっていた。
「そろそろ寝ようか、永久さん」
『はい。そうですね』
「おやすみ、永久さん」
『おやすみなさい、霧都くん』
俺たちはそう言うと電話を切って、通話を終わらせた。
「もう、凛音を好きな気持ちは微塵も無い。だから……あいつが何をしてきたとしても、俺は揺らがない……」
俺はスマホを片手にそう呟く。
「……寝るか」
俺はスマホを充電器に繋いでから部屋の電気を落とす。
「……おやすみ、永久さん」
目を閉じて、俺は意識を手放して夢の世界へと旅立って行った。
……この時はまだ、俺は知らなかった。
あの南野凛音が……どれほど本気で、覚悟を持って、俺の事を北島永久さんから取り戻そうと考えて居たのかを……
雅紀さんの部屋を後にした俺は、階段を上って二階にある凛音の部屋に向かう。
一階の居間では美鈴と静流さんが談笑をしているのが見えた。
時刻は二十一時。凛音との話が終わったら帰るような感じになりそうかな。
そんなことを思いながら、俺は凛音の部屋の扉をコンコンとノックする。
「入りなさいよ」
と言う声が中から聞こえてきた。
俺はガチャリと扉を開けて中に入る。
パジャマ姿の凛音がベッドに腰かけるようにして座っていた。
「これに座るぞ」
「構わないわよ。好きにしなさい」
俺は床に置いてあるクッションに腰を下ろす。
「で?何の話があるんだよ」
俺がそう言って話を切り出すと、凛音は言葉を返してきた。
「あんたの『覚悟』を聞いておこうと思ったのよ」
「覚悟?なんの覚悟だよ」
「北島永久とはどんなつもりで付き合ってるのか?ってことよ」
「本気に決まってるだろ。将来的には結婚して『夫婦としての家族』になるつもりだよ」
俺がそう言うと、凛音はニヤリと笑っていた。
「そう?良かったわ。あんたがここで遊びで付き合ってるなんて言うなら軽蔑してたわ。あの女は男ウケする身体をしてるわよね」
「永久さんは貧乳のお前には無いものを持ってるからな」
俺がからかうようにそう言うと、凛音が噛み付いてきた。
「貧乳じゃないわよ!!ちょっと物足りないだけよ!!それに、私はこれから成長期よ!!」
凛音はそう言ったあと、咳払いをして話を元に戻した。
「先に話をしておくわ。私はあんたと『本当の家族』になる道を諦めてないわ」
「……そうか」
「明日。私は北島永久と桜井霧都の二人に『宣戦布告』をするわ。本気で戦うつもりだから覚悟しなさい」
「宣戦布告か。いいよ。お前が何をしてきても、俺と永久さんは揺るがない」
俺はそう言うと、クッションから腰を上げる。
「話はそんな感じか?」
「ええ、そうよ。美鈴を連れて帰っていいわよ」
俺のその言葉に、凛音は笑って答えた。
……随分と余裕を感じる。
自分の策略に余程自信があるのだろうか……
でも、何かを考えてもわかるものでは無いよな。
俺はそう結論付けることにした。
「後、お昼は放送室に行く予定だからあんた達は食堂で食べてなさい」
「何かあるのか?」
「この間の体育祭の練習場所を確保するにあたって、放送部の三郷先輩と取り引きをしたのよ。私の話を放送の時間にする予定よ」
人気者の辛いところよね。
なんて言葉をヤレヤレと言ってきた。
「そうか。まぁタダではあの場所は貰えないよな」
俺はそう言って凛音の部屋を後にした。
そして、美鈴を連れて自宅へと戻ってきた俺は、自室で永久さん電話をかけることにする。
とりあえず先にメッセージで、
『今帰ってきたよ。電話しても平気かな?』
と送る。
……すぐに既読が着いた。
『はい。お待ちしておりました。いつでも電話は平気です』
と返信が来た。
スマホをずっと見てたのかな……と、思えるようなスピードだった。
そんなことを思いながら、俺は永久さんに電話を掛ける。
プルル……ピッ
『もしもし。北島永久です。霧都くんですね?』
は、早い……
「う、うん。そうだよ。今帰ってきたところだよ」
電話を取るまでのスピードに少しだけ戸惑いながらも、俺は言葉を返す。
『何かありましたか?』
「そうだね。まずは凛音のお父さん。雅紀さんには、きちんと話をしてきたよ。そして俺の覚悟も話してきた」
『覚悟。ですか?』
「うん。雅紀さんは俺が凛音を幸せにして欲しいと思ってる人だったからね。その約束は果たせない。たとえ凛音を傷付けたとしても、俺は永久さんと歩いていく。その覚悟を話してきた」
『……っ!!ありがとうございます。私はその言葉が聞けてとても嬉しいです』
「その後は、凛音とも話したよ」
『……ですよね。内容は聞いても良いですか?』
「もちろん。そのつもりで電話をしてる。俺は君に対して基本的には隠し事をしたくない」
『そうですか。では聞かせてください』
「凛音からはどのくらい本気で永久さんと付き合ってるのかを聞かれたよ。だから答えたよ。本気で付き合ってる。結婚して『夫婦としての家族』になるって話しをした」
『……それに対して南野さんはなんて言ったんですか?』
「私はまだあんたと『本当の家族』になることを諦めてない。そう言われたよ」
言葉の捉え方によっては、凛音は俺に対して『恋愛感情』を持ってる。そうとも思える。
でも、だからなんだと言うんだ。
今更そんなことを言われても俺にはもう何も響かない。
凛音と俺の間にはもう『恋人になり夫婦になる』そういう未来は存在しない。
『……そう、ですか』
「でも、だからどうした。と思ったよ」
『……え?』
疑問符を浮かべる永久さんに俺は言う。
「捉え方によるけど、凛音が俺に対して恋愛感情を持ってるようにも聞こえる。でも、そんなことはもう俺には関係の無い話で、響かない。俺とあいつが恋人になって夫婦になる。そういう未来は存在しないよ」
『……霧都くん』
「まぁ、別に凛音が嫌いな訳じゃない。『恋愛感情』はもう無い。そうは言っても十年来の幼馴染だ。それなりの仲の良さは残ってると思う。そこは永久さんにもしかしたら心配をかけてしまう部分かも知れない」
『……そうですね』
「でも、俺はもう君と未来を共にすると決めた人間だ。今更凛音が何を言ってきたとしても『幼馴染』以上の何かになることは今後一切無いと断言出来るよ」
『……ありがとう……ございます』
少しだけ……泣いているような気配を感じた。
少しは彼女の不安を取り除くことが出来たのか。
彼女を直接見てないのでそれはわからないが、出来たと信じたい。
『……霧都くんの覚悟と気持ちを受け取りました。ありがとうございます。私はとても嬉しく思います』
「少しは……君の不安を取り除けたかな?」
『はい。ですが、これは今後ずっと抱えていくものだと思っています』
「そう……だよね」
俺と凛音が過ごして来た過去は消えない。
俺が凛音を好きだった過去も消せない。
永久さんの不安な気持ちは今後もずっと続いていく。
俺がしなければならないことは、彼女の不安をずっと解消し続けること。
愛と覚悟を伝え続けること。
「永久さん。俺は君以外の人と結婚して家族になるつもりは微塵も無いからね」
『はい。私も貴方以外の人とお付き合いすらするつもりはありませんから』
「大好きだよ、永久さん」
『はい。私も霧都くんが大好きです!!』
俺は時計を確認する。そろそろ寝る時間になっていた。
「そろそろ寝ようか、永久さん」
『はい。そうですね』
「おやすみ、永久さん」
『おやすみなさい、霧都くん』
俺たちはそう言うと電話を切って、通話を終わらせた。
「もう、凛音を好きな気持ちは微塵も無い。だから……あいつが何をしてきたとしても、俺は揺らがない……」
俺はスマホを片手にそう呟く。
「……寝るか」
俺はスマホを充電器に繋いでから部屋の電気を落とす。
「……おやすみ、永久さん」
目を閉じて、俺は意識を手放して夢の世界へと旅立って行った。
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