Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶

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第1章

最終話 決戦・魔獣大氾濫から王都を救え その①

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 最終話 その①




 早朝。日の出よりも早い時間に俺たち三人は冒険者ギルドへと向かっていた。

 昨晩は夢のような時間を過ごして、そのまま眠ることなくスタンピードに挑むことになる。

 まぁ睡眠時間は全く無かったが、身体に疲れは無い。
 これはリーファの使った回復魔法の効果によるものだ。

 現役時代からもお世話になっているもので、三日三晩は不眠不休でもパフォーマンスが落ちることは無い代物だ。

「ふふふ。ベルフォードもまだまだ元気ですね。何度も楽しませて頂きました」
「その歳であれだけ頑張れるなら相当よね。まぁだいぶ溜まってたのもあるでしょうけど?」
「あ、あまりそういう事は言わないで欲しいかな……」

 先程での行為についてはあまり触れないで欲しいかな……
 理性のタガが外れてしまった部分が非常に大きい。

 まぁでも、男としてはとんでもなく幸せな時間を過ごすことが出来たのは間違いないけど。

 そんなことを思いながら、俺たちは冒険者ギルドの前まで辿り着く。

 ガラリと扉を開くと中には既に討伐部隊の冒険者たちが軒を連ねていた。

「おはようございます、ベルフォード師匠。おや……少しばかり疲れた表情をしてますが、大丈夫ですか?」
「おはようエリック。大丈夫だよ。昨日は少しばかり夢の時間を過ごしただけだから……」
「そうですか。まぁ、師匠でしたら何の問題もないと思ってますからね」

「どうせ美人の妻二人と遅くまで宜しくやってたんだろ、おっさん?歳を考えた方がいいんじゃないのか」
「……ノーコメントで」

「おはようございます、ラドクリフ氏。昨日は素晴らしい職人を紹介していただいてありがとうございました。お陰で今日のスタンピードに対する憂いは無くなりました。寧ろこれまで以上の力が出せそうですね」
「おはようございます、豪鬼さん。貴方にそう言って貰えるとこちらとしても助かります。今日は頑張りましょう」

 エリックとシルビア、そして豪鬼さんに朝の挨拶をしていると、長い魔法杖と灰色のローブを身に付けた女の子が俺の元に駆け寄ってきた。

「お、おはようございます!!ベルフォードさん!!」
「おはよう、ルーシーさん。君がスタンピードの兆候を見つけてくれたんだよね。お手柄じゃないか」

 Aランクパーティ ハーピーの羽根に所属する魔法使いのルーシーさん。

 以前。彼女が所属するパーティが不意をつかれてオークの群れに襲われているところを助けてあげたことがあった。

 それ以来。彼女は遠見と探知の魔法を磨いて、パーティが危険に晒される事がないように頑張ってきた。

 今回はそんな彼女の努力が身を結んだ形だな。

「い、いつもの日課で行っている遠見の魔法で、今日はちょっとおかしいな。と思ったんです。そ、それで魔力探知の魔法に切りかえたらスタンピードの兆候と告示してる魔力の高まりを感じたんです。そ、それがまさか四つ同時だったので、最初は自分が信じられませんでした」

 彼女の言うことも最もだ。もし俺に魔法が使えて、そんな状況だと目の当たりにしたらなにかの冗談か、自分の魔法の誤作動を疑ってしまうな。

 俺がそう思っていると、ルーシーさんはその後も言葉を続けた。

「で、でも!ベルフォードさんから助けて貰った時と同じだったんです。あ、あの時も……私はオークの群れに気が付いていたのに、こんなことあるはずないって自分を信じられなかったんです。だから今回は自分の魔法を信じて話すことにしました」
「そうか。じゃあルーシーさんは成長したんだね」

 偉いね。俺はそう言って小柄なルーシーさんの頭を撫でてあげた。

「…………ベルフォードがまた女の子を落としてます」
「…………あいつはいつもそうよ。あぁやって色んな女の子を手篭めにしていくんだから」
「ひ、人聞きの悪い事を言わないで欲しいかな……」

 俺の後ろから送られる妻二人の視線に、俺は背中に嫌な汗をかいた。

「え、えへへ……ありがとうございます。ベルフォードさん。わ、私も頑張りますね!!そしたらまた褒めてください!!」
「あ、うん。期待してるよルーシーさん」

 そんなやり取りをしたあと、彼女は自分のパーティへと戻って行った。

 そして、少しすると部屋の奥から現役時代の服装に着替えていたミソラがやって来た。

「おはよう、みんな。早い時間から集まってくれてありがとう。あと、ベルはやっぱり思った通りだったみたいね」
「ははは……ミソラが言ってたことの意味がようやくわかったよ……」
「まぁ、リーファの回復魔法の効果もあるし、そこまで心配はしてないわよ。さて、それじゃあ作戦の確認を始めるわよ」

 ミソラはそう言うと、ボードの前に立って俺たちに話を始めた。


「まずは北の門から。ここはゴブリンやオークが多数生息するダンジョンよ。遭遇する魔獣のレベルも低いから初級のダンジョンとも言えるけど、群れを作って襲ってくることがほとんどよ。この場所はハーピーの羽根に任せることになってるわ」
「はい!!大丈夫です!!任せてください!!」

 ミソラの言葉に、リーダーのミカさんが元気よく答えていた。
 彼女はルーシーさんと姉妹で、どちらかと言えば引っ込み思案なルーシーとは違い、ハツラツとした元気の良い女の子だ。

「次は南の門よ。ここにはオーガやサーペント、ウルフなど大型の魔獣が生息するかなり難易度の高い上級ダンジョンよ。ここを担当するのが、トウヨウの豪鬼さんね」
「オーガが単騎でやって来ることが予想されてると聞いています。何故だか教えて貰っても?」

 豪鬼さんの質問に、ルーシーさんが理由の説明を行った。

「そ、その……南のダンジョンに多数のウルフとサーペントの死骸を見つけました。その周辺を確認すると『明らかに通常の個体とは違う』オーガを見つけました……」
「『変異種』のオーガですか。それなりには厄介ですね」

「そのオーガが敵を求めてこちらに来る気配を感じとりました。有する魔力量から……少なくともA++……ともすればSランクの可能性もあります」
「なるほど。なかなかの強さですね。ですが敵では無いでしょう。ソハヤノツルギの力を見るのに打って付けかと」

 ニヤリと笑い、大胆不敵なセリフを言う豪鬼さん。
 ははは。その言葉はとても頼もしいな。

「そして東の門はリーファとエリックが担当するわ。ここは厄介なスライムにレイスやゴースト、高ランクの魔獣が生息しているわ。魔法攻撃が弱点なのも特徴ね」

「はい。俺の魔法剣とリーファさんの高火力魔法で殲滅して行きます」
「まぁ詠唱時間の確保に関しては特に心配はしてないわ。よろしくお願いね、エリック」
「当然です。昨日も言いましたが、師匠の奥様には指一本触れさせません」

「最後は私とベルが担当する西の門ね。ここはホーンラビットやデビルラットとかの小型魔獣が多数生息しているわ。一匹あたりのレベルは低いけど数が膨大なのが難点ね」
「まぁ、俺が時間を稼ぐからミソラが古代魔法で殲滅すれば終わりだろ?」

「簡単に言うわね……千体レベルの殲滅魔法になればかなりの詠唱時間が必要になるわよ?」
「ははは。心配するなよミソラ。一時間でも二時間でも詠唱してくれ。お前には指一本触れさせない」

 俺がそう言うと、ミソラの頬が軽く赤くなった。
 その後、少しだけため息をつきながら彼女は続ける。

「はぁ……そういうセリフはリーファにだけ言ってあげれば良いのよ……」
「何でだよ。俺にはお前だって大切な人間だからな」
「……もう良いわ。これ以上続けるとリーファが怒りそうだわ」

 そんなミソラの言葉を受け、軽く横を見ると

「……やはりベルフォードはハーレムを目指してますね」
「まぁミソラなら構わないかしらね……」

 ジトリとした視線でこちらを見やるツキとリーファが居た。

「は、ハーレムなんか目指してないんだけどな……」

 小さく俺がそう呟くと、ミソラが話を元に戻すようにシルビアを見て言葉を放つ。

「そして、シルビアには王都の中の警備をお願いするわ。後は突破されそうな門があればそこに増援をする形になるわね」
「了解だよ。まぁ殲滅部隊には何の心配もしてないからね。私としては国民が不安から変な行動を取らないかを危惧してたところだったけど、昨日のスフィア王女の演説のお陰でみんな安心したんじゃないかな?」

 確かに、スフィの演説のお陰でみんなの不安はかなり減ったとは思うよな。
 そう考えると彼女の功績はかなり大きいな。

「以上がスタンピードに対しての作戦概要よ。ここまでで質問はあるかしら?」

 特に質問や心配することも無かったので、質問が出てくることは無かった。

「それじゃあ、王都の平和の為に頑張りましょう!!無事に作戦を完了出来たら本日は祝杯よ!!」

 ミソラのその言葉を受けて、俺たちは笑いながら言葉を合わせた。
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