55 / 292
第1章
第七話 ⑧ ~片親の寂しさを感じる歳はもう終わったと思ってる~
しおりを挟む
第七話 ⑧
「おかえり悠斗」
「ただいま、親父」
バイトを終えて帰ってくると、親父が晩酌をしていた。
ビール片手に今日はあたりめを食っている。
「どうした?なんだか今日はいつもより疲れた顔をしてるな」
「……わかるのか?」
「そりゃあ俺はお前の親だからな。息子のことくらいは朝飯前だ」
時間的には晩飯後だかな!!
と言いながら、親父はゲラゲラと笑う。
俺は雫が作ってくれていた夕飯のカレーライスを温める。
明日のお弁当はカレーかな?
そんなことを考えていると、
「お前にこれをあげよう」
と親父が何やらチケットを出てきた。
「お前に彼女が出来たと知ったからな、これをデートにでも使ってくれればとな」
内容を確認すると、行こうと思っていた水族館のペアチケットだった。
「これでチンアナゴを見て来なさい」
「なんでチンアナゴ限定なんだよ……」
電子レンジから温まったカレーを取りだし、俺はラップを破り捨てる。
冷蔵庫から麦茶と福神漬けの入った器を取り出し、福神漬けをカレーに盛りつける。
福神漬けを冷蔵庫にしまい、俺は席に着く。
カレーを一口食べ、やっぱり雫の料理は美味いな。と舌鼓を打っていると、
「水族館と言えば、イルカ、ペンギン、チンアナゴだろ?」
「……なんで司さんと一緒のこと言うんだよ……」
カレーを咀嚼し、嚥下する。
麦茶を飲んで口をリセットする。
「まぁでもチケットは嬉しいよ。ちょうど水族館でデートしようと思ってたところだから。ありがたく頂くよ」
「そうか、そう言ってもらえると嬉しいぞ」
親父はそう言うと、ビールを飲んでニヤリと笑う。
「俺が母さんと初めてキスをしたのも水族館だ」
「……へぇ、俺は公園だよ」
親父がそんなことを言ってくるので、俺も適当に返す。
「ほぅ、手が早いな。もうしたのか?」
「ほっぺにキスされた」
俺がそう言うと親父が笑う。
「ほっぺにチューなんて今どき小学生だってしてるぞ!!」
「うるせえな。キスはキスだ」
不貞腐れたように俺はカレーを頬張る。
「俺がしたキスの話は唇と唇だよ」
「両親のそんな話なんか気持ち悪くて聞きたくないね」
「そんな事言うなよ。昔は思い出話を聞きたがってただろ?」
「昔の話はもういいだろ?それに母親のことを知りたがる歳はもう終わった」
「そうか……」
親父はそう言うと、仏壇に飾られた母親の写真を見つめる。
若い頃の母親の笑顔の写真だ。
「お前も大人になったってことだな」
そんなことを言う親父。
何言ってんだよ……
俺なんか、まだまだ子供だ。
大人になりたいとは思っていても、なかなか上手くいかない。
俺は皿に残ったカレーを咀嚼しながら、朱里さんをどうやってデートに誘うかと、黒瀬さんにどうやって弁解するかを考えていた。
「おかえり悠斗」
「ただいま、親父」
バイトを終えて帰ってくると、親父が晩酌をしていた。
ビール片手に今日はあたりめを食っている。
「どうした?なんだか今日はいつもより疲れた顔をしてるな」
「……わかるのか?」
「そりゃあ俺はお前の親だからな。息子のことくらいは朝飯前だ」
時間的には晩飯後だかな!!
と言いながら、親父はゲラゲラと笑う。
俺は雫が作ってくれていた夕飯のカレーライスを温める。
明日のお弁当はカレーかな?
そんなことを考えていると、
「お前にこれをあげよう」
と親父が何やらチケットを出てきた。
「お前に彼女が出来たと知ったからな、これをデートにでも使ってくれればとな」
内容を確認すると、行こうと思っていた水族館のペアチケットだった。
「これでチンアナゴを見て来なさい」
「なんでチンアナゴ限定なんだよ……」
電子レンジから温まったカレーを取りだし、俺はラップを破り捨てる。
冷蔵庫から麦茶と福神漬けの入った器を取り出し、福神漬けをカレーに盛りつける。
福神漬けを冷蔵庫にしまい、俺は席に着く。
カレーを一口食べ、やっぱり雫の料理は美味いな。と舌鼓を打っていると、
「水族館と言えば、イルカ、ペンギン、チンアナゴだろ?」
「……なんで司さんと一緒のこと言うんだよ……」
カレーを咀嚼し、嚥下する。
麦茶を飲んで口をリセットする。
「まぁでもチケットは嬉しいよ。ちょうど水族館でデートしようと思ってたところだから。ありがたく頂くよ」
「そうか、そう言ってもらえると嬉しいぞ」
親父はそう言うと、ビールを飲んでニヤリと笑う。
「俺が母さんと初めてキスをしたのも水族館だ」
「……へぇ、俺は公園だよ」
親父がそんなことを言ってくるので、俺も適当に返す。
「ほぅ、手が早いな。もうしたのか?」
「ほっぺにキスされた」
俺がそう言うと親父が笑う。
「ほっぺにチューなんて今どき小学生だってしてるぞ!!」
「うるせえな。キスはキスだ」
不貞腐れたように俺はカレーを頬張る。
「俺がしたキスの話は唇と唇だよ」
「両親のそんな話なんか気持ち悪くて聞きたくないね」
「そんな事言うなよ。昔は思い出話を聞きたがってただろ?」
「昔の話はもういいだろ?それに母親のことを知りたがる歳はもう終わった」
「そうか……」
親父はそう言うと、仏壇に飾られた母親の写真を見つめる。
若い頃の母親の笑顔の写真だ。
「お前も大人になったってことだな」
そんなことを言う親父。
何言ってんだよ……
俺なんか、まだまだ子供だ。
大人になりたいとは思っていても、なかなか上手くいかない。
俺は皿に残ったカレーを咀嚼しながら、朱里さんをどうやってデートに誘うかと、黒瀬さんにどうやって弁解するかを考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました
ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。
意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。
しかし返ってきたのは――
「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。
完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。
その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる