精霊様と魔法使い~強奪チートで妖精キングダム~

くろげブタ

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13.冒険者との出会い

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 照り付ける日の光の下。
 藪の近くで俺は身体を横たえる。

 光合成。
 日向ぼっこというには、夏の日の光は痛いほどだが、今は我慢。

 ほどなくして。
 3時のおやつであろう時刻に、俺の体力魔力が全回復した。
 シルフィア様も魔石を完食。魔力の上限がアップしていた。

────────────────────────────────────
体力:160(160)
魔力:30 (30) 5UP
────────────────────────────────────

 しかし……
 体力が回復したにも関わらず、俺の左腕は治らない。
 俺は今も片腕のまま。左腕を失った状態だ。

 そもそもが、光合成など雑草ですら持つようなスキル。
 腕が生えてくるわけないのである。

 全く……
 大自然の力だとか、調子に乗って突撃しなくて良かったものだ。
 深謀遠慮。自重を知る天才でなければ、死んでいたところだぞ?

「にゅ」

 俺を気づかってか、失った左肩を撫でるシルフィア様。

 ありがとうございます。
 ですが、何も心配はいりません。

 異世界では、欠損部位であっても治療が可能。

 光魔法の熟練度を上げれば良い。
 最高級治療薬という代物もあるともいう。

 希望がある限り絶望はない。
 一生、片腕で過ごすとなれば発狂するかもしれないが、治せるというのなら話は別だ。

 暴飲暴食。シルフィア様。
 2つの希望がある限り。
 俺の心が折れる事はない。

 だから──今は進むだけだ。

 コソコソ

 辺りにモンスターの姿がない事を確認。
 俺はゴキブリのように藪から藪へと移動する。

 一般常識的に考えて、日が落ちた山は凶暴なモンスターが現れるもの。
 何とか日が落ちる前に村まで帰りたいものだ。

 コソコソ進む俺の耳に、何者かの争う音が聞こえていた。

「うおー冒険者をなめるなー」

 ズバアッ

「ギャイーン」

 藪から頭を出して覗き見る。
 冒険者たちとモンスターの戦い。

 俺を苦しめたサーベルキャットマンがあっけなく切り捨てられる。
 これが辺境に暮らす冒険者の力。
 ギルドで見た時もそうであったが、いずれも荒くれ揃い。
 この程度の力がなければ、辺境では生きていけないのだ。

「ふいー……そこで覗いてる奴は誰だ?」

 俺が隠れる藪に向け、油断なく剣を構える冒険者。
 これは……どう考えても俺の事であろう。
 今はあまり人と顔を合わせたくないのだが……
 気づかれているというのなら、姿を現すしかあるまい。
 だが、その前に……

(シルフィア様。この帽子の中へ)

 シルフィア様を頭に乗せ、高級貴族御用達服のセット品である帽子だけを、その上から頭に被る。
 妖精はダンジョンコアから生まれるモンスター。
 冒険者には、あまり見せない方が良い気がする。

 俺は藪を出て冒険者の前へと進み出る。

「あっぱれな太刀筋。よくぞ凶暴なモンスターを仕留めたものだ」

 うさんくさげな眼で俺を見る冒険者たち。
 何せ今の俺はふんどし一丁に帽子だけ。
 剣を構える者。杖を向ける者。その数は4人。

「誰よこいつ?」
「マッパだし野盗やろ?」
「だな。やるか」

 ……荒くれすぎるだろう。
 なぜ同じ冒険者に殺されねばならないのか?

「待て。待った。待ってください」

 やむを得ず、俺は片手を天に掲げるホールドアップ状態。

「なんや? 遺言か?」

「私は怪しい者ではない。同じ冒険者だ」

 だいたい俺のどこを見れば野盗に見えるのか?
 粗野な振る舞いといい、連中の方こそ本当に冒険者か怪しいものである。

「ほー。にしちゃあ……なんで裸なん?」

 またこのやり取りか……
 せっかく服を買い平民を装ったというのに。
 肝心の服が高級貴族御用達服では、着るに着れないという。

 俺はスモウレスラーだと強気で押すのも手ではある。
 が……村の兵士を相手どった時と状況は異なるのだ。

 一応は治安を、法を守る立場である兵士。
 周囲の村人の目もある。
 犯罪者でないのなら、頭のおかしな事を言おうとも、いきなり殺される事はない。

 冒険者ギルドの場合も同じ。
 ギルド職員の目がある上に、ギルド内では武器の使用が禁止されている。

 対して、ここは山野の無法地帯。
 居るのは俺と4人の冒険者だけ。
 目撃者は誰もおらず、武器の使用も禁止されていない。

 荒くれ揃いの冒険者。
 俺が、ふんどしがーとかスモウレスラーがーなど言おうものなら。
 自分が気に入らないとなれば、あっさり殺す事も厭わないだろう。

 サーベルキャットマンに苦戦した俺。
 サーベルキャットマンに圧勝する冒険者たち。
 争った場合、どちらが勝利するかは明白である。

「す、すみません。野盗に襲われて一文無しなもので……」

 となれば、卑屈な演技で耐えるしかない。
 ここで死ぬわけにはいかないのだから。

「ほー。それで裸なんかー」
「野盗に負けるとか、ダサすぎやん?」

 なんたる侮辱。
 獣の毛皮であろう派手な衣装を身にまとう。
 田舎ヤンキーといったDQNファッションの連中にダサイなどとは。
 現代日本の最新ファッションを知る俺にとって、これ以上ない屈辱。

 だが、俺は天才軍師。

「す、すみません。粗末な物をお見せしまして……」

 そのような気持ちはおくびにも出さず、俺は自身の裸を恥じるよう、片手で身体を隠してうずくまる。

 軍師とは敵を欺き、味方を勝利へと導く存在。
 相手を騙す演技においても天才でなければならないのだ。

「まあまあ。みんな。そこまでにしよう」

 背を丸めて震える俺を見兼ねたのか、連中の1人が制止する。

 なかなか立派な鎧に身を包んだ男性。
 連中のリーダーであろうか?
 俺には劣るが、そこそこのイケメンである。

「さあ。立って。片腕だと大変でしょう? 僕たちも村に帰る所だから送っていくよ」

 なんたるイケメンぶり。
 自分で言うのも何だが、俺のような小汚い男にまで優しいとは。
 俺が女であれば、一目惚れである。
 俺にはシルフィア様がいるため、今さら惚れないが。

「あ、ありがとうございます。恩に着ます」

 イケメンに手を取られ立ちあがる。
 とにかく、これで村まで無事に帰れそうだ。

 片腕を失うなど散々な冒険であったが、収穫はあった。
 体力魔力の上昇。新スキル光合成の習得。
 また一歩最強の座に近づいた事を感じる。
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