元BL 作家だったけど

ウラ話

　上を、下をの騒ぎ。到着連絡が遅れて、ダリル氏は倒れ。

　その時電話が鳴った。

「はー。やっと帰れた。」魔改造、四人乗りマジかー内。横のシリルは、聖女様から借りてきたという、ドレス姿だ。相変わらず尊い。ドレスの登録したい。自警団から、街道の安全についての報告を受け、出来立てほやほやのマジかーに乗って帰ることにした。安全って。シリル…と一緒なら安全じゃなくとも、ついた先が天国でも構わない。
　
　シリルとの出会いは、領地の仮装大会だ。
　収穫祭の前夜祭として行われるそれは、領地の名物行事として毎年行われていた。俺は、領主の子供として強制参加が面白くなく、マントと面でうろついていた。

　その時、時が、止まった。
　
　本から抜け出たような、妖精。或いは天使。
輝かしい金糸に彩られた愛くるしいかんばせ。きららかな翠の宝石は、祭りのにぎやかな様子を捉えて輝く。
その場で跪いて求愛をした。
作り物の小さな羽を背中につけたシリルは、
「ごめんなさい。僕、男なんです。」と申し訳なさそうな顔をした。
僕はショックで寝込んだ。

シリルが男だったからではなく。
シリルに悲しそうな顔をさせてしまった、こと。
　僕はシリルについて調べる。シリルは、その容姿で有名だった。国内でも大きい商会の三男坊。商会ならなんとかつなぎを、作れるか。
僕は、三兄弟という共通点に興奮する。
　シリルの家が扱っているのは、魔道具。もうすぐ俺の誕生日ということで、品物を持って来てもらった。もちろん年が近い子供も、と添えるのも忘れない。
　うん、男。でも、天使。
「これ、僕が作ったんです。」卵型のボール？と黒い石板を取り出す。シリルが石板をなぞるとボールが浮き上がって、飛ぶ。
「これ、よかったらどうぞ。誕生日おめでとうございます。」そして、笑った。
　シリルは尊い。奇跡。連絡が途絶えてダリル氏、倒れて。わかる俺も倒れそうとか。

「あ、グレン？ごめん、マジかー、襲われちゃって。落ち着いたころ迎えに…」受話器を傍らにいたウイル氏に渡し気絶した。