『偽りの血筋が溢れる世界で、ただ一人の君を見つけ出す 〜捨てられた公爵家の猫は騎士団長に溺愛されて逃げられません〜』

高瀬あい

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2章 猫の縄張りは案外広く、世間は意外と狭いもの

12話

「う~ん、まぁそうなるといいですね、というお話ですが、流石にご本人の意思を無視するわけにはいきませんからねぇ」
「んにゃ!?」
(そこでなんで私を見るのよ!!)

「叔父上………?」
はっきりと答えない叔父に、どこか不安そうなレオの表情。
その無垢な視線は、次に私へと向けられる。
「リリちゃんは、叔父上がお嫁さんをもらっても僕たちと一緒にいてくれるよね?僕たち家族だもんね?」
「……な~お」
ーーもちろん、と言ってあげたいところだが、正直現在の雲行きは非常に怪しい。
(そもそも、私が聖獣であるっていうのがみんなの共通認識であるばかりか、リリアーヌの名前まではっきりでてきてるのはどういうことなの!?)
辺境伯爵家の情報収集能力を侮っていたとしか言いようがない。
ここの人間はみな親切で、誰一人として出処の怪しい私を訝しむ様子もなかった。
(………ちょっと待って。今考えるとそれって、まさか全部バレてて泳がされてたわけじゃないわよね)
エリー様?ねぇちょっと??と、思わずエリー様を顔を見すれば、すいと逸らされた視線。
疑惑が確信に変わる瞬間だ。
「にゃ!?」
(嘘でしょ!?)
いつバレたのか。え、いつ?本当にいつ!?
混乱する私をよそに、「ふむ」と軽く納得した様子のジャック。
「もしやレオ様は、団長が奥方を迎えたら自分の居場所がなくなるのではないかと不安なのではありませんか?」
「……レオ?そのようなことはあり得ない」
「そうですよレオ様。レオ様は正式な辺境伯家の跡取りですからね。何も心配はいりませんよ。そもそも公爵家のリリアーヌ様は子供好きであると領内では有名で、孤児院にも多額の寄付をなさっている方ですし、血が繋がらないからといって、レオ様を虐げるような方ではありませんよ?ね?リリ様?」
(ーーーーだからなんで私に聞くのよーー!!)
怒りの攻撃を食らえ、と尻尾をひとふりすれば、「うわっ!やめてくださいよリリ様~」と、薄ら笑いながら、口に入った白い毛をぺぺと手の甲に吐き出し、口元を拭う。
「リリ。毛に汚れがつくぞ」
やめなさいと諭されたが、多少は溜飲が下がったのも事実である。
「とにかくだ。レオ、お前が心配するようなことは何もない。リリは私達のもとにずっといるし、たとえ私が妻を迎え子が生まれたとしても、お前が辺境伯家の跡取りであることは何も変わらない。それはお前の父である兄にも誓った事だ。」
「……僕は……」
ギュッと唇を噛みしめるレオ。
今にも大きな目から涙が零れ落ちそうだ、と思ったのは私だけではないらしい。
「まったく、団長ってば不器用なんですから。レオ様は後継者の地位がどうのこうのなんて心配をしてるんじゃないですよね?大好きな叔父上に邪魔者にされたらどうしよう。お嫁さんがきて、自分だけ家族から除け者にされたらどうしようって心配なんですよ」
その訳知り顔は本当に腹が立つが、その予測はきっと正しかったのだろう。
ハッとしたように顔を上げるレオ。
エリー様はようやく私とレオを腕の中から下ろし、軽く片膝をつくと、真正面からレオを見据えた。
「今からそのような弱気でどうする?レオ。お前は私の兄が命を賭して守り抜いた、この家の唯一の後継者だ。あり得ない話ではあるが、万が一この私の身に何かがあった時、リリやベネディクト、この騎士団を守っていくのはお前しかいないのだから」
優しさでも慰めでもなく、それが生まれながらに背負ったお前の責務なのだと告げるエリー様。
幼い子供には厳しすぎる言葉ではないかと心配するも、それは杞憂に終わった。
「……リリちゃんを、僕が護る」
「そうだ。できるか?」
「……うん!!できる!」
力強くうなずくレオに、それでいいと頭を撫でるエリー様。
子供には厳しすぎる言葉ではないかと心配したが、レオにとって尊敬する叔父からの言葉は、自分は必要とされている!という確かな自己肯定に繋がったようだ。
その瞳にはキラキラとした希望の光が宿っていて、横で様子を見ていたジャックも「良かったですね、レオ様」と、流石に裏のない純粋な笑顔で微笑んでいる。
そしてこちらに視線を向けたレオが言う。
「リリちゃん!リリちゃんは、僕が護るからね。リリちゃんのあかちゃんも、僕が守ってあげるから!だって、僕たちは家族だもんね!」
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