不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第三章 学園生活の始まり

44 門番の騎士

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校門につくと警護の騎士がいた。
門番の騎士という感じだろうか。

聖騎士のようだ。
きちんと騎士の正装をしている。
聖騎士は、王家の紋章を胸に小さく刻んだアーマーを付けている。
戦いの時は全身鎧で固めているが、警護の時は胸当てくらいの軽い鎧をつけて白い制服を身についている。
長いマントにも王家の紋章が刺繍されている。

門番の騎士は、白いマントに白色の紋章を刺繍していた。
遠くからは見えないが、近くに行くとはっきりとわかる。
生徒たちを委縮させない工夫だろう。

聖騎士は、貴族の生徒はともかく、平民は近寄りがたいと思っている者も多い。
学園の、警護とわかっていても聖騎士が立っていれば近寄りがたく感じるだろう。
騎士たちも生徒たちを威圧したいわけではない。

警護任務の時は、紋章を遠くからはわからなくしている聖騎士も多いとマールから聞いたことがある。
この騎士もそう言う騎士なのだろうとも思う。
生徒たちが、学生書を警護の騎士たちに見せている。
僕も準備しないと…、と準備しようとバックの中から出そうとしたらジークハルトに止められた。
ジークが親し気に騎士に手を挙げる。

「よう、ジーク。」

知り合いの騎士だったようだ。
顔パスということなのだろう。
年齢的には、ジークハルトより少し上。
たぶん成人ばかりという風情。

「おはようございます。」

騎士は、僕らを見る。
僕と目が合うと目を細めて軽く会釈をした。
学園では僕は生徒だから、仰々しく臣下の礼はしなくていい。
学園では身分は無いというのが一応のルール。
きちんと心得ている騎士のようだ。
ジークハルトに、にやりと騎士は笑った。

「護衛騎士として、ようやくデビューか?」

ジークハルトは、ええと頷く。

「ようやくです。」

肩をすくめるジークハルトに僕は首を傾げた。
護衛騎士してたけどなぁと思っていると警護している騎士が苦笑した。

「不思議そうですね?ラスティ王妃様。」

僕は、はいと答える。

「ジークハルトは、僕のことを今までも、護衛してくれていましたが…。」

騎士は、ええと微笑む。

「他の騎士が何重にも警護しているお城の中の護衛になりますから、騎士の中ではまだ訓練と見られているのですよ。まぁ、年齢でいえばジークはまだ、訓練でもよい年ですが…。お城から学園までは、確かに城壁や町を警護している騎士がいますが、ジークハルトとっては、初めての本格的な単独の護衛としての仕事になります。だから、今日は、彼の正式な護衛騎士のデビューなのです。」

ジークハルトを見るとそうですよと苦笑している。
楽しそうであり、誇らしそうな彼の表情にそうかと思う。
トリスティが肩をすくめた。

「ジークハルトは、実力があるのに、このままだと護衛騎士どまりで、もったいないって言われてるからな。騎士団長は世襲制ではないから…それなりの実績が必要だろう。今でも十二分に聖騎士でもおかしくない実力を持っているのに…。」

トリスティの言葉に、ジークハルトは肩をすくめた。

「ああ、その噂のことか…。俺の目的は、陛下とラスティ様を幸せにすることだ。正直言えば騎士という地位も別にどうでもいい。陛下とラスティを守れるなら何でもよかった。騎士という立場が都合よかった。それだけだ。」

トリスティが顔をひきつらせた。

「重くないか?」

ジークハルトは肩をすくめる。

「自覚はある。」

僕が首をかしげると、騎士は肩をすくめる。

「トリスティ様の言う通りです。ジークはこの歳ですでに団長に迫る実力を持っているというのに、この調子だ。資質はあるけれど、本人の意思が別の所にあるのは…見ている立場が違えば…もどかしいものです。」

騎士は、小さく呟いた。

「特に、逆の者にとっては…本人の意思に実力がついていかない者にとっては…ジークは憎くてしょうがない存在になってしまっている。私は…それが少し…心配です。ジークにとっても…貴方にとってもだ…ラスティ王妃様。十分に気を付けてください。」

騎士の言葉は真摯なものだった。
複雑な表情になってしまう。
ジークハルトのことは少し僕ももったいないなぁと思ってしまうから。
才能に恵まれている彼が、護衛騎士にとどまるのはもったいない。
さっきの誇らしそうな表情を見てしまえば、余計にそう思う。

ジークハルトはやはり、騎士団長になるべきなのだろう。
護衛騎士で留まるのは彼らしくない。

そんな僕に気が付いたのか、騎士は、にっこりと僕に笑いかけた。

「殆どの者がジークの夢を応援しています。特に…陛下と共に戦った騎士たちは…陛下に幸せになってほしいと願っています…先の戦を私も知りませんが…陛下にとってどれほどつらいモノかは理解できないわけではない。」

そうですかと、頷く僕に騎士は苦笑した。
陛下は、先の戦いで愛する弟君を無くした。
その後の婚姻も、あまりうまく行っていない。
今の平和なこの国で、陛下が戦う必要はない。
陛下も幸せになってほしい。
そう、陛下と共になったかった騎士たちは思っているのですと門番の騎士は言う。
まだ、貴方には難しいかもしれないけれど…と騎士は苦笑した。





「あと…誤解しないでくださいね、ラスティ王妃様。ジークは貴方を陛下から奪いたいのではないのですよ。陛下と貴方の幸せを願っている…それだけなんです。」



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