不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第四章 波乱の学園生活

81 密談という名の雑談

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入浴まで済ませたノルンに、体を冷やさないようにとカーディガンを着させてから僕は部屋を出る。

「ラスティ様、陛下とジェン様がお呼びです。」

マールが陛下とジェン公が待っているというので急いで準備した訓練用に部屋行く。
ノックしようとしてその手が止まった。
なにやら、二人の楽し気な声がしている。
邪魔しない方がいいだろうとそっと部屋に入った。

先ほどまで居たジークハルトの寝ている部屋とは違い煌々と明かりがつき昼間のように明るい光に目をこする。
楽し気なジェン公の笑い声に少し眉を寄せた。
少し無理をしているような声に感じたからだ。

そりゃ…そうだよなぁ。

息子が、危険な状態で眠りについているのだ。
気にならないはずは無いだろう。
だからと言って自分が落ち込んでしまえば陛下にも心配をかける。
明るくふるまうことでなんでもないことだと、皆に思わせたいのだろう。

陛下もそれがわかっていて敢えて合わせているように感じた。
陛下とジェン公は床に敷いた絨毯の上に置いたクッションにもたれるように座ってた。
どうやら僕に気が付いていないようだ。
いつもは敏い二人なので、かなり疲れているのだろう。

どうしようかなと思っている間も二人の会話は進んでいた。

何やら陛下は一旦話すのをやめ、集中を始める。
が、すぐにため息をついて肩をすくめた。
上手く行かなかったらしい。

「怠けているから、そうなるんだよ。集中できてないぞ。」

ジェン公の言葉に陛下は頭をかく。

「俺はお前みたいに、理論で動かないからな…こうやれって言われると混乱するんだ。どっちかというを…なんだ?適当?」

陛下が俺とか言うのめずらしいなと思っているとジェン公がくすくすと笑い出した。

「お前が理論で動いているのを俺もみたことねーや。大体、野生の感だろうが。この器用貧乏。なんでも簡単にこなすからどれも真剣に取り組まない。だから、こういうことになるんだ。取り繕う俺たちの身にもなれ。ラスティと一緒に訓練しとけ。ついでにもう少し王様業もしっかりしとけ。」

ジェン公の言葉に陛下は深いため息をついた。
しかたねーだろうと、いつもとでは想像つかない乱暴な言葉使いに目を丸くする。

「元々俺は国をおさめるつもりはなかったからな。第三王子なんてどこかの国に嫁がされる使い捨ての立場だ。といっても俺はこの図体に魔力だ…その役目も出来ない。兄たちみたいに開き直って、他国に嫁いで、逆にパートナーを嫁にして乗っ取るとかもめんどうだしな。さっさと地位を返上して冒険者になる予定だったんだが…結局こうなった。」

窮屈だなと陛下の言葉に、ジェン公は肩をすくめる。

「さっさと次代に継承させて隠居するしかないだろうな。幸い俺たち王族は寿命が普通より長い。適当な所で姿をくらまして冒険者でも好きなことするればいいさ。」

陛下は、うーんと唸った。

「とりあえず…ラスティがどうするかだなぁ…ラスティがこのまま俺の嫁になるようならしばらく国王やると思うが…ついてきてくれるなら早々に隠居して、ジークに譲るけど。…でも…まぁ…ジークを選んでも…さっさと譲るかな~。パートナーにって思った子が他のを選んでイチャついてるのを見てるのは流石にきつい。ジークでもきつい。他の子ならなおきつい。」

ジェン公は、首をかしげる。

「ジークを選ぶか?最近ジークはロイスといい感じだとバルから聞いていたんだが。」

陛下は首を横にする。

「違う違う…いい感じに見せてるけども、あいつらは違う。ジークとロイスは仲はいいが…あれは、ライバル同士だ…。お前とバルはライバルとか言っていても結局得手不得手を補い合うパートナーだ。けど…あの二人は系統が似てるから正面衝突してるだけだ。まったく…まさかロイスまでラスティを嫁に欲しいとか言い出すとは思わなかったぞ。」

ジェン公は、はぁ???と目を丸くした。

「待て待て、そっちなのか?」

そうだと陛下は頷く。

「ロイスはわかりにくいが…結局はラスティだ。アニキ分をしてジークも心配しているし、ジークのようなタイプも好きではあるらしいから、構い倒しているが…そうでなければ俺に挑んでくるか?ジークから王子の称号を外したいとか言っていたが、本人が望んだら普通に外すし、ジークの称号は議会で決まったものだ。すでに俺の意思で外すとか言う問題ではない。ロイスにはそれを伝えているし、ジークをって言いながら、ラスティが望んだら降嫁する可能性を聞いてくるんだ。それに、本気でジークをパートナーにと思ったのなら本人に勝負挑むだろう。」

ジェン公はそれもそうかと頷く。

「ラスティには二人で苦しい言い訳しているみたいだから、言わないでいるけど…お前の息子はたまによくわからんことをしているぞ?言い訳が微妙だ。ラスティもなんでそうなるのかわからないって感じだったから混乱していると思うが。ジークはロイスも好きなのだろうが、やはり友人としてのほうが強いみたいだ。ラスティを諦める気は一切ないからな。ラスティが兄としてジークを扱うから兄としての立場を失いたくないとは言っていたが、微妙に行動がすれているように思うのは俺だけか?」

ジェン公は頭をかく。

「バル似か?」

陛下は首をかしげた。

「お前もよくわからん言い訳をするからどっち似とも俺はいわんぞ。」

はぁ…と陛下はため息をつく。

「うちの妃は、人気者で困る。ジークもそうだが、聖者リオンにしても、ロイスにしてもだ。トリスティは負い目があるからって諦めましたとか言っているが油断はできない。マールとトリスティは、パートナー契約をするとは言っているが、前提にラスティを二人で支えるという思いがあるからな。ノルンとマールも溺愛してるところがあるからなぁ…狼の群れに子羊投げ込んでる気分だよ。狼たちが牽制しあっているし、そもそも子羊がもっと美味しくなるのを待ってる状態というのがなんとも…。」

ジェン公は、それはわかるがと頷く。

「ラスティは、どうにも、育っているはずなのに幼いからな。強くなろうと努力している姿さえも微笑ましいと言うか…お前が狼という奴らからしてみたら早く育ってくれないかなぁというところもあるだろう。」

陛下は、ラスティは育ってるはずなんだがなぁ…と陛下は首をかしげる。

「エスターはどうだ?一目見た時にあれほど嫌だと騒いだのだろう。」

陛下は首を傾げた。

「あまり…接点を作ってないからわからないが、あの子の好みとしては大人しい子だと昔は言っていたが…当てはまりはするから、一緒に育てていたら可愛がっていたようにも思うが…今の好みは知らないからわからないが。」

ジェン公は首を横に振った。

「エスターはお前が大好きっ子だから、お前が溺愛してる状態のラスティと一緒に育てていたら確実にラスティを嫌うだろう。今は、傍で育ててないから…客観的に見れる分、これから接点を作ったらエスターも危ないぞ。」

陛下は、だよなぁと言いながら首を傾げた。

「にしてもラスティ、遅いな…」

とこちらを振り返った。
一応家具の陰に隠れていたけど隠れるとことがあまりないので、丸見えだよね。

「あ…。」

ジェン公もこちらを見て固まる。

「え?」

僕は、えへへと曖昧に笑ってごまかした。

「ええ??いつからいたの!!」

陛下が顔を赤くして慌てている。
ジェン公も若干赤くなった。

「え??まずい!!今の話忘れろ!ラスティ!!」

ごまかせませんでした。

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