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第六章 運命の一年間
160 願い マールside
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マールは、ディオスの背中を泣きながら見つめていた。
何が悲しいのかわからない。
けれど悲しかった。
アスとディオスに名付けられた魂がラスティの器に居る所為で、ラスティが苦しんでいることは理解していた。
だが、それ以上にラスティがアスを大切にしていることも分かっていた。
ラスティから聞いたときはマールはラスティが何を言っているのかわからなかった。
頭の先から足の先までお人好しの主は、自分の中に気味の悪い魔法生物を埋め込まれているのにへらへら笑っているのだから呆れるしかなかった。
なんとしても排除しなければと思った。
ディオスですら気が付かなかったのならば相当に擬態が上手いのだろうと思っていた。
危険なものだと思っていた。
早々に排除するべきだとマールは思っていた。
兄であるノルンにそれを訴えたが、主であるラスティが望んでいないから様子を見ろと言われた。
ノルンもお人好しだ。
ディオスも静観している。
話にならないとマールは、皆を説得できる何かを探すことにした。
だからマールは、アスが危険なものであるという証拠を見つけようとラスティとアスを観察した。
いつもそばにいる自分ならば見つけられると思っていた。
だが、予想に反して善良だった。
完全に信用したわけではない。
けれども結局のところ、お人好しのラスティが意図せず育てた人格だ。
疑うのがバカバカしいほどラスティだった。
ノルンにそれを言うと、警戒するだけ無駄だと呆れられただけだったが。
ずっと監視してきたからわかる。
目の前のラスティからはもうアスは感じない。
アスは小鳥になると聞いていた。
けれども話せると。
なら、小鳥になったアスに色々教えねばと思っていた。
ラスティとディオスの使い魔になると聞いていた。
仕えるものの先輩としてしっかりとおしえようと。
色々話そうと思っていた。
なのにいない。
ラスティの中にいないのだ。
ずっと話したいと思っていた。
ラスティのふりをしたアスではなく、アスとして。
ディオスに名前を貰って嬉しそうにしていたアスを思う。
ラスティと同じようにディオスを見ていたのだから、思いを告げても受け取られないと笑っていても告げるアスが悲しいとも思った。
とっくに絆されていた。
楽しみにすらしていた。
けどいない。
ラスティの中から消えてしまった。
だから、ようやく話せたアスが完全に消えてしまったのだとマールは思った。
肩を支えるバルハルトの大きな手がわずかに震えていることにマールは気が付いた。
悲しみか…怒りかはわからない。
けれども、バルハルトは情に厚い人だ。
アスのような、善良な守るべき弱きものを守れなかったということは騎士団長であるバルハルトにとってはつらいことだろうとマールは思う。
アスは善良で弱い子供のようだとマールも感じていた。
だから、バルハルトはもっとそう感じていただろう。
アスはしっかりしてるし、自分とラスティを守るためにディオス達が来るまでは一人で頑張っていたのだ。
実際は、弱くはないだろう。
だが、マールはアスを守るべきものだと認識していた。
ディオスとバルハルトもそう思っていると疑問も持たずに思っていた。
まだ、アスは…幼かったのに。
何故か、マールはそう思った。
アスは、しっかりしていた。
弱いとは思わない。
けれども、マールはアスを幼いと感じていたのだ。
腕の中で眠るラスティの中で色々見ていただろう。
けれども、アスはずっとラスティの中から見ているだけ。
本当に外に触れたことはなかったのではないか。
「しっかりするんだ…マール…」
バルハルトの声にマールは顔を上げる。
「アスは…どうやら…俺たちが考えていた存在ではなかったようだな…。」
目の前には本でしか見たことが無かった竜が、大きな山のようにそびえている。
ディオスの背はそれに比べれば小さい。
だが、竜はディオスに道を譲るように背に守っていた祭壇をディオスに見せていた。
大きな魔石が輝いていた。
天然の魔石は魔物の核だ。
どのくらいの大きな魔物の核だったのだろうとマールは思う。
核となっている魔物は死んだ魔物。
こんな大きな核ならば、竜より大きかったのではと思う。
ディオスは竜と話しているようだったがマールには竜の声は唸り声にしか聞こえない。
バルハルトは断念的に理解できるようだった。
「アスは…あの魔石の中だ…」
バルハルトは眉を寄せる。
竜がこちらを見ると少し考えるようなそぶりをした。
頭の中で聞きなれない声がした。
『このままでは、昔話が出来ぬな…』
そして竜が突然光り出した。
何が悲しいのかわからない。
けれど悲しかった。
アスとディオスに名付けられた魂がラスティの器に居る所為で、ラスティが苦しんでいることは理解していた。
だが、それ以上にラスティがアスを大切にしていることも分かっていた。
ラスティから聞いたときはマールはラスティが何を言っているのかわからなかった。
頭の先から足の先までお人好しの主は、自分の中に気味の悪い魔法生物を埋め込まれているのにへらへら笑っているのだから呆れるしかなかった。
なんとしても排除しなければと思った。
ディオスですら気が付かなかったのならば相当に擬態が上手いのだろうと思っていた。
危険なものだと思っていた。
早々に排除するべきだとマールは思っていた。
兄であるノルンにそれを訴えたが、主であるラスティが望んでいないから様子を見ろと言われた。
ノルンもお人好しだ。
ディオスも静観している。
話にならないとマールは、皆を説得できる何かを探すことにした。
だからマールは、アスが危険なものであるという証拠を見つけようとラスティとアスを観察した。
いつもそばにいる自分ならば見つけられると思っていた。
だが、予想に反して善良だった。
完全に信用したわけではない。
けれども結局のところ、お人好しのラスティが意図せず育てた人格だ。
疑うのがバカバカしいほどラスティだった。
ノルンにそれを言うと、警戒するだけ無駄だと呆れられただけだったが。
ずっと監視してきたからわかる。
目の前のラスティからはもうアスは感じない。
アスは小鳥になると聞いていた。
けれども話せると。
なら、小鳥になったアスに色々教えねばと思っていた。
ラスティとディオスの使い魔になると聞いていた。
仕えるものの先輩としてしっかりとおしえようと。
色々話そうと思っていた。
なのにいない。
ラスティの中にいないのだ。
ずっと話したいと思っていた。
ラスティのふりをしたアスではなく、アスとして。
ディオスに名前を貰って嬉しそうにしていたアスを思う。
ラスティと同じようにディオスを見ていたのだから、思いを告げても受け取られないと笑っていても告げるアスが悲しいとも思った。
とっくに絆されていた。
楽しみにすらしていた。
けどいない。
ラスティの中から消えてしまった。
だから、ようやく話せたアスが完全に消えてしまったのだとマールは思った。
肩を支えるバルハルトの大きな手がわずかに震えていることにマールは気が付いた。
悲しみか…怒りかはわからない。
けれども、バルハルトは情に厚い人だ。
アスのような、善良な守るべき弱きものを守れなかったということは騎士団長であるバルハルトにとってはつらいことだろうとマールは思う。
アスは善良で弱い子供のようだとマールも感じていた。
だから、バルハルトはもっとそう感じていただろう。
アスはしっかりしてるし、自分とラスティを守るためにディオス達が来るまでは一人で頑張っていたのだ。
実際は、弱くはないだろう。
だが、マールはアスを守るべきものだと認識していた。
ディオスとバルハルトもそう思っていると疑問も持たずに思っていた。
まだ、アスは…幼かったのに。
何故か、マールはそう思った。
アスは、しっかりしていた。
弱いとは思わない。
けれども、マールはアスを幼いと感じていたのだ。
腕の中で眠るラスティの中で色々見ていただろう。
けれども、アスはずっとラスティの中から見ているだけ。
本当に外に触れたことはなかったのではないか。
「しっかりするんだ…マール…」
バルハルトの声にマールは顔を上げる。
「アスは…どうやら…俺たちが考えていた存在ではなかったようだな…。」
目の前には本でしか見たことが無かった竜が、大きな山のようにそびえている。
ディオスの背はそれに比べれば小さい。
だが、竜はディオスに道を譲るように背に守っていた祭壇をディオスに見せていた。
大きな魔石が輝いていた。
天然の魔石は魔物の核だ。
どのくらいの大きな魔物の核だったのだろうとマールは思う。
核となっている魔物は死んだ魔物。
こんな大きな核ならば、竜より大きかったのではと思う。
ディオスは竜と話しているようだったがマールには竜の声は唸り声にしか聞こえない。
バルハルトは断念的に理解できるようだった。
「アスは…あの魔石の中だ…」
バルハルトは眉を寄せる。
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頭の中で聞きなれない声がした。
『このままでは、昔話が出来ぬな…』
そして竜が突然光り出した。
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