不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

173 黒歴史発動

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アスは、僕が支えても体に力が入らないのか、へにょりとしている。
少しアスは考えるようなそぶりを見せて、支える僕の胸を押して手を離させると床にへにゃりと座り込んだ。
辛うじて上半身は支えることが出来るようだ。
なさけなさそうな顔をして、ジークハルトとロイスを見る。
子竜の光は、じりじりと二人を包む炎に押されている。

「あ…う…」

アスは、何か言おうとして上手く発生できない自分に情けなさそうな顔をした。
こんな時にあれだが、可愛いなぁと僕はほっこりとしてします。

「ラスティ様!!ほっこりしている場合ではありません。こうなったら…王宮を突っ切りましょう…陛下が無事ならばジークハルトとロイスの二人より、あちらの方が逃げ延びれるかと…数は多いかもしれませんが…あの二人よりは僕らも抵抗できるはずです。」

マールの言葉にノルンも頷く。
子竜は、二人を抑えながらそうしろと言う。

「でも…」

嫌な予感がするのだ。
こういう予感は逆らわない方がいい。
子竜がじりじりと後退している。
2人が、顔を上げている。
その目に光がない。
操られているようだった。

「ジーク!!ロイス!!目を覚ましてよ!!」

僕は必死に声を張り上げる。
ジークハルトの瞳が一瞬だけ揺れた。
けれど一瞬だ。
すぐに元に戻る。

「ジーク!!!ねぇ…ジークってばぁ!!」

その一瞬だけでジークハルトの状態は変わらない。
僕は、唇を噛みしめて嫌な予感をねじ込む。

「行こう…」

一か八かだけれども。
そう思ってアスの体を抱えあげる。
アスは、きょとんとしていたが、ふとジークハルトの方を向くと口を開けた。

「…あぁぁぁぁぁぁーーーーー…!!!!!!」

アスは、ただ叫んだ。
2人に向かって…。
たぶん…今のアスにはそれしかできないのだろう。
けれども、その叫びは強力な光線になった。
いや…僕も何が起こったかわからないけども…。

なんで口から光線吐くの??

アスが、叫ぶと同時に光の塊が二人にぶつかって二人を吹っ飛ばしたのだ。
どうやらアスが吐いたのは魔力だったらしい。
子竜の結界を通してみると二人に青い光がまとわりついている。

「は?……」

子竜の纏っている光よりも強力な光がジークハルトとロイスを直撃したのだ。
その光が彼らの動きを抑えている。

『ふおぅぅ!!!』

子竜はすぐ上を通過した光の塊に驚いて頭を抱えた。
がお尻が上がってしっぽがピンと立っていてちょっとカワイイ。

「あーあぁ?」

アスは自分が何をしたか分かっていないらしい。
きょとんとして、あ~と声を出している。
たぶん、あれは火事場の馬鹿力というやつだ。
理屈でなくとっさに力を使ったら、ああなったのだろう。
僅かばかりの抵抗だ。
先に起きたのはロイスだった。
ロイスはまだ操られている。

子竜が慌てて威嚇を再度、始める。
アスの先のモノは偶然だろうから次は期待できない。
蒼い光はロイスにもまだまとわりついている。
動きを封じては、いる。
だが、完全に止めるのは難しいのだろう。
でもジークハルトが倒れたままなのは幸いだ。
ロイスも強いが、子竜も居れて僕とノルンとマールの一頭と三人がかりならば抑えれるかもしれない。
僕の考えを読み取ったのだろう。
ノルンとマールは、僕を庇うように扉から離れて構えた。
僕はアスを座りなおさせて、ポケットに魔石が入っているかか確認する。
子竜も気が付いたのだろう。

威嚇していた体をいつでも飛び出せるように後ろ脚に力を入れなおしてロイスに向きあう。
だが…寝転がっていたジークハルトの腕が動いたのが見えた。

「く…ジークも起きるのか!!」

だが、アスの良くわからない攻撃が直撃したのはどちらかと言えばジークハルトの方だ。
ダメージは確実に受けているように見える。
とりあえず…無謀なのは分かっているがジークハルトとロイスを相手をするしかない。
弱っている今しかチャンスはない。
そう僕は、覚悟を決めた時だった。

ジークハルトの手がつかんだのはロイスの足首だった。
ロイスが不思議そうにジークハルトの方に振り返った。
ジークハルトはロイスの足首を引きロイスを倒すと抑え込んだ。

「ぐ…いてぇ…頭…けど…ロイスを抑え込むのが…正解だよなぁ…ラス…」

ジークハルトは、呻きながらロイスを抑え込んでいる。
が、子竜の力を通してみるとじわじわとロイスの方から炎がジークハルトを包みなおそうとしている。
ジークハルトの守るように彼を包む蒼い光が、炎を押し返しているが、それも少しずつ侵食されている。

「ぢーはぢーあーうだ?あうあ~あぅくぅ…あう~ぢー」

アスが一生懸命訴えているのだが如何せん言葉になっていない。
これは困った。
そうするべきかと僕が眉を寄せると子竜が、叫んだ。

『王の番!!主は、ディーは、ディーはどーした?陛下…はやくぅ~よべーディーと言っているぞ!!』

僕は、はっとして慌ててディーに陛下に助けてと伝えてくれと伝言を頼む。
ディーが転移した感覚が使わってきた。
陛下が来てくれるだろう。
慌ててて忘れてたとアスを見るとふぃ~と変な息を吐きながら僕を見る。
呆れているのがわかる。

なんで表情筋はそんなにうまく使えるのさ!!!

「くぅ…はやく…逃げろ…俺もおかしく…今のうちに…抑えていられるうちに…」

アスはじっとジークハルトを見ていたが、ふむと頷くと子竜を見た。
子竜は驚いたようにアスを見たが、にやりと笑うと頷いて僕を尻尾を来い来いという風に動かし呼ぶ。

「何?」

子竜に耳打ちされた言葉に僕は赤くなる。
縁と言うのはつまりそう言う事なのだろう。
もちろんこの生ではない、以前の繰り返しの生だ。
以前の繰り返しの生の間に、リオンとえっちいことをしたかしていないかという事だ。

「ううう…最低……」

おそらくは、リオンとそういうことをした攻略対象や他にもいたとしたら、そういう人たちは、その縁で操られているという事だ。
今回の生でどんなに清廉潔白でも、以前の生でそういう縁がリオンとあればその縁で強力に操られる。

「つまり…ジークもリオンとそういう関係だったってわけだ…」

子竜は、まぁ今回の生では清廉潔白だぞと言ってはくれるが。

『騎士王子は、王の番ともそちら方向の縁があるのだろう。そなたのほうが濃いからな。騎士王子をその縁を利用して取り戻すしかない。』

トラウマが発動しそうになったが堪える。
忘れてたのに。
忘れてたのに思い出さされるめくるめく、エッチぃ記憶。
あの一回の暗黒の黒歴史だ。

「どうやってよ?」

不貞腐れた僕の言葉に子竜は、困った表情をする。

『うむ…わからぬ。』

どうしろと?僕は突き付けられた黒歴史を抱えたまま呆然とする。
と…その時懐かしい感覚が僕の頭に響いた。

『ごめん!!ラスティ!!ちょっと力かりるよ!!!』

と僕の体がすとんと床に倒れたのはその時だった。

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