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第二話①『疑問を問う』
しおりを挟む形南と運命の人の橋渡し役となることに決めた嶺歌は、その後も大人しくどこへ向かうか分からぬリムジンに揺られながら隣に座るお嬢様の形南と会話を続ける。
自分の正体を何故彼女が知っているのか、そろそろ聞くべきタイミングなのではないだろうか。
そう考えた嶺歌は「あの…」と言葉を発し、彼女に目を向けた。
形南は直ぐにこちらに笑みを向けながらどうかされたのですかと言葉を促してくる。
嶺歌はその問いにはいと答えると直ぐに本題の疑問を口にした。
「どうしてあたしが魔法少女って分かったんですか?」
偶々バレてしまったという可能性は絶対に有り得ない事だ。
魔法協会は一般人への口外を一切許していない。露見する事があっても数分以内には対処され、魔法少女の存在が知れ渡る事は一度もなかった。
そのため魔法少女も安心して自身の活動に専念することが出来ているのだ。
勿論、普段から正体をバレぬように注意を払うのも魔法少女の大事な使命であるがどうにもならない時もある。そのための記憶消去なのだ。
嶺歌は、答えに皆目見当もつかぬまま形南の返答を待った。
しかし形南の反応は思っていたよりも軽かった。
彼女は子どものような無邪気な笑みをこちらに向けると「それはですね」と疑問の答えを口に出す。
「お調べさせていただきましたのよ。そうしたら貴女が魔法少女だと分かりましたの」
「いや……それは……」
論点が少しばかりずれている。調べて分かるような簡単な情報ではないのだ。財閥であれどそれは同じだ。
困惑した顔のまま嶺歌はそれを彼女に伝えると形南はくすくすと口元に手を当てながら上品に笑い出す。
下品な笑いというのも見た事はなかったが、彼女の笑い方は今まで見てきた誰よりも品のある笑い方だ。すると形南は再び言葉を口に出した。
「私は高円寺院家の一人娘でございますの。金銭で動かせない情報はないのですよ」
「えっ……?」
驚く嶺歌を横目に形南は言葉を続ける。財閥と言えど魔法協会の機密情報を知り得ることは不可能なはずだ。
それは一度も疑った事のない事柄だった。しかし今、形南はそれを否定している。魔法協会はそんな簡単に口を開く組織であったのか。
疑う事は良くないと思いながらも彼女は現に魔法少女の存在を認知している。
嶺歌は次第に魔法協会への信頼を失いかけていた。だがそれを察したのか否か、形南は再三の声を上げ始めた。
「魔法協会が決して軽挙な訳ではないのですのよ。誤解なきようきちんと説明いたしますわ」
そう言って再びこちらに笑みを向けてくる。
不思議なお嬢様だ。彼女はお嬢様として疑いようのない風格のある雰囲気を放ちながらも、時には子どものような無邪気な様子も見せてくる。
まだ出会ったばかりではあるものの形南は総合的に見て掴み所のない不思議な女の子に感じられた。
形南の話を静かに聞いた。口を挟むのも無礼だと考えた嶺歌はそのまま彼女が話し終えるまでただただ話を聞く事だけに神経を集中させた。
一番の疑問である、魔法少女の存在の認知についてはこのような回答であった。
通常、財閥と言えども魔法協会の重要な機密情報を口外する事は有り得ない事だ。
しかし例外としてそれが特別な財閥であれば話は別であった。
そう、形南はただの財閥ではなく、世界中の誰もが知り得る大きな財閥グループの一つであるご令嬢であったのだ。
その話を聞いて嶺歌も後にその名を明確に思い出す。
テレビやネットでその苗字を聞いた事が少なからずあったからだ。忘れていたというよりはきちんと頭に入っていなかったのだろう。
それは明らかに動揺していたからではあるのだが、何故この瞬間までその有名な苗字を聞き流していたのかと恥ずかしい気持ちになった程である。
つまり大規模な財閥の一人娘である形南が、一般人には触れる事さえ叶わない程の額の金銭を魔法協会に渡したのである。いわゆる賄賂だ。
念の為額を聞いてみるとそれは億どころではないとんでもない額の賄賂であった。
確かにこれほどの額で、それを依頼した人物がとんでもない財閥のお嬢様であれば、魔法協会が口を開くのも頷くしかない。納得だ。
ただし、特別であれども決して第三者に口外しないようにと条約を交わしたらしい。
形南の執事である兜悟朗はその場にいたため例外であるようだが、だからこそ形南は魔法少女の存在を知っており、嶺歌に関しての記憶を失くす事もない。
それは記憶を失わないように魔法協会に特殊な魔法をかけてもらったからという単純な理由であった。
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