4 / 164
第一話③『謎のお嬢様』
しおりを挟む「そのお方は貴女様と同じ御校に通っておりますの」
「えっ……」
これには驚いた。だから彼女は見ず知らずの自分を協力者に選んだのだろうか。
同じ高校に通い、万能な魔法少女である嶺歌だからこそ自分は選抜されたのかもしれない。
疑問点はまだ多くあったが、一つの謎はこれで解けた気がする。
嶺歌は妙に納得していると、形南にはまだ話の続きがあるようで「それと」と言葉を付け加え始めた。
「私、貴女とお友達になりたいのですわ」
「……はい?」
「ふふっ言ってしまったわ!! ああどうしよう! ねえ兜悟朗、聞いておりました!? 私ちゃんと言えましたのよ!」
先程より興奮気味になった形南はそう言って黙々と運転をしていた兜悟朗にそう声を掛ける。
すると彼は「はい。聞いておりましたお嬢様。御立派でしたよ」とそんな言葉を返している。
自分は一体何のやり取りを見せられているのだろう。嶺歌は再び混乱し始めていた。
一拍置き、多少落ち着いた様子に戻った形南はもう一度こちらに目を向けると微笑ましそうな笑みを向けて口を開く。
「魔法少女であり、友好的な貴女様だからこそお友達になりたいのですのよ。是非私のお願い、引き受けていただけるかしら?」
そう言って距離を縮めてくる彼女に嶺歌は戸惑いながらも悩んだ。
魔法少女として、彼女の願いを引き受けるのは何ら支障はない。
だが、こんな大役が自分に務まるのだろうか。
彼女はどう見ても間違いなく良いところのお嬢様で、その存在の大きさは形南の佇まいを見れば誰しもが理解出来るものである。
依頼の内容自体に不安はないが、依頼相手に不安がある。ただの魔法少女にすぎない自分が、彼女の望み通りに上手く依頼をこなせるのだろうか。
さまざまな思考が働き、嶺歌が葛藤していると形南は「気負わなくても大丈夫ですのよ」と言葉を返す。
「早くあの方とどうにかなりたい訳ではありませんの。長期戦で構わないのです。その間に、貴女とも交流を深められたらと思っていますのよ」
あっさりとそう言う彼女を嶺歌は思わず凝視した。それで良いのかと、呆気に取られた気持ちになる。
どうやら彼女はその運命の人と少しずつ仲を深めていければと考えているようで、急を要するものではない様子だった。
しかし、嶺歌に財閥の依頼を受けるという大役をこなせる自信はない。
だがそこまで考えて、とある考えに辿り着く。
(今まで助けてきた人間は皆、ごくごく平凡な一般人だった。だけど今回は……)
そう、財閥の娘だ。それはあまりにも重圧な上に大きな試練であり、嶺歌にとって不安ばかり募る依頼だ。だが――
(これが成功すればあたし、もっと自分を好きになれる)
純粋にそう思えた。
正直なところ、財閥の依頼を受けるのは初めての経験であるため彼女への協力が不安要素でしかないのは事実だ。
だがしかしこれらを成し遂げることで自分の評価は確実に上がる。
そしてまた一歩、魔法少女として大きな成長を遂げられるのだ。それならば、受けよう。自分の為だ。
嶺歌は決心すると彼女から外していた目線を元に戻し、しっかりとした口調で言葉を発した。
「分かりました。その依頼、受けます。よろしくお願いします!」
そう言って深く頭を下げる。
すると「まあ」という言葉の後直ぐに形南は頭を下げる嶺歌に抱きついてきた。
「有り難う御座いますの! 助かりますわ! こちらこそよろしくお願いしますのよ」
こうして、不思議なお嬢様――形南との関係が始まった。
そして彼女の護衛でもある執事の兜悟朗とも、この日から少しずつ……やがて深く関わるようになる。三人の出会いはここから、始まりとなる。
第一話『謎のお嬢様』終
next→第二話
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる