6 / 7
遠恋
しおりを挟む
男女の『友情』って疑われるよね?
私達は違うよ。
絶対不滅な『友情』を貫き通そうよ!
ずっと仲良しでいようね。
「うん、いいよ。友達はさ、切っても切れない“仲良し”が続くんだ。ずっと一緒だよ」
小指と小指の“約束”は小学生の時に結んだ。
だから
私と彼、ヒロ君は…意気投合の『友情』を、中学生になっても高校生になっても続けようとしていたんだ。
* * *
でも、おかしいな。
高校生になると状況が一変。
ヒロ君は、背も伸びて男らしくなり
私も、胸やウエストが女らしくなった。
それは男女の身体の変化。
『友情』があるとはいえ…
手を繋ぐことは、お互いに恥ずかしくて出来なくなった。
横並びでお喋りすることも自然と少なくなった。
心の変化だった。
私達の“約束”は何のためにあるの?
よくわからない溝のようなものを感じて、苦しくなった。
* * *
ヒロ君も同じだったのかな?
「ごめん、『友情』は“おしまい”にしようかと思ってて。好きな女の子に告白したいと思っているんだ。だから、ごめん」
ふいに。
学校の廊下で、すれ違い様に言われた言葉だった。
続きは、流れるような言葉の連鎖。
「ほら、窓の外を見て。飛行機雲が見えるだろう?雲が短ければ、明日は“晴れ”なんだって。晴れたら、僕は告白するって決めた」
「そっか。…じゃあ、最後の『友情』で応援してあげるね」
「うん。ありがとう」
遠ざかるヒロ君の背中を見送った後、ポロポロと涙が出た。苦しみの余波だ。
変だな。
『友情』が終わることへの悲しみからでは無い気がした…。
"応援してあげる"
そう言った筈なのに、心の奥底から「明日は雨になればいいのに…」ゾッとするような自分の声がした。
* * *
「飛行機雲の予報通り、晴れだったね…」
目覚まし時計を止めてベッドから起きると、カーテンの隙間から光が差していた。
ホッとするような残念なような、複雑な気持ちに満たされていた。
ヒロ君は誰に告白するの?
朝食は半分も食べられなかった。
玄関で靴を履いたところで、外からポツポツと雨の音。
「あら、天気雨じゃない?」
すぐに止みそうだけど…と、母の声。
傘を手渡してくれた。
受け取りながら複雑な気持ちは深みを増す。
告白はどうなるのだろう。
晴れで雨で。
モヤモヤしたまま歩いた。
すぐ横を救急車のサイレンが大音量で通り過ぎた。ドキッとして時計を見る。「遅刻しちゃう。急がなきゃ!」モヤモヤは無理やり消した。
* * *
ヒロ君は欠席していた。
ぼんやりと教室の窓から空を眺める。
七色の虹と、飛行機雲が長い線を引いて飛んで行くのが見えた。
明日は雨なのかも知れない。
やっぱり告白するなら今日なのに。
他人事だけれど他人事じゃない。
シャーペンを指でクルクル回しながら、焦る想いに眩暈がした。
放課後に知ることとなった。
ヒロ君の欠席理由は、永遠の欠席だった。
“晴れたら告白をする”そう言っていた当日の朝、工事現場から落ちてきた落下物が頭部に当たり亡くなったのだ。
* * *
ヒロ君が眠る棺の前に私は立っていた。
遠い場所へと旅立つには突然過ぎた。
私は泣きながらずっと考えて、ヒロ君の葬儀に参列した。
そんなに遠い場所へと逝ってしまったら、追いかけることも、伝えたい言葉も届かないけれど。
「友情の“おしまい”の代わりが欲しいよ、ヒロ君…」
喧嘩して決別したわけではなかった。
ヒロ君が誰かを好きになっても、私との『友情』が本当に“おしまい”なのかを考えたら、それは嘘。
『友情』が終わる理由が、どこにも見当たらなかったからだ。
それなら、ヒロ君が“おしまい”と言ったのは何故?
答えが見え始めたとき、心に広がった優しい風のような気持ちが、すとんっと心に落ちた。
「ねぇヒロ君。今度は“仲良し”がずっと続くような『恋』をしようよ」
遠いところに旅立ってしまったヒロ君には、もう届かないだろう。
小指と小指の“約束”もできない。
それでも
『恋をした想い』は結び直したいと思った。
-fin-
私達は違うよ。
絶対不滅な『友情』を貫き通そうよ!
ずっと仲良しでいようね。
「うん、いいよ。友達はさ、切っても切れない“仲良し”が続くんだ。ずっと一緒だよ」
小指と小指の“約束”は小学生の時に結んだ。
だから
私と彼、ヒロ君は…意気投合の『友情』を、中学生になっても高校生になっても続けようとしていたんだ。
* * *
でも、おかしいな。
高校生になると状況が一変。
ヒロ君は、背も伸びて男らしくなり
私も、胸やウエストが女らしくなった。
それは男女の身体の変化。
『友情』があるとはいえ…
手を繋ぐことは、お互いに恥ずかしくて出来なくなった。
横並びでお喋りすることも自然と少なくなった。
心の変化だった。
私達の“約束”は何のためにあるの?
よくわからない溝のようなものを感じて、苦しくなった。
* * *
ヒロ君も同じだったのかな?
「ごめん、『友情』は“おしまい”にしようかと思ってて。好きな女の子に告白したいと思っているんだ。だから、ごめん」
ふいに。
学校の廊下で、すれ違い様に言われた言葉だった。
続きは、流れるような言葉の連鎖。
「ほら、窓の外を見て。飛行機雲が見えるだろう?雲が短ければ、明日は“晴れ”なんだって。晴れたら、僕は告白するって決めた」
「そっか。…じゃあ、最後の『友情』で応援してあげるね」
「うん。ありがとう」
遠ざかるヒロ君の背中を見送った後、ポロポロと涙が出た。苦しみの余波だ。
変だな。
『友情』が終わることへの悲しみからでは無い気がした…。
"応援してあげる"
そう言った筈なのに、心の奥底から「明日は雨になればいいのに…」ゾッとするような自分の声がした。
* * *
「飛行機雲の予報通り、晴れだったね…」
目覚まし時計を止めてベッドから起きると、カーテンの隙間から光が差していた。
ホッとするような残念なような、複雑な気持ちに満たされていた。
ヒロ君は誰に告白するの?
朝食は半分も食べられなかった。
玄関で靴を履いたところで、外からポツポツと雨の音。
「あら、天気雨じゃない?」
すぐに止みそうだけど…と、母の声。
傘を手渡してくれた。
受け取りながら複雑な気持ちは深みを増す。
告白はどうなるのだろう。
晴れで雨で。
モヤモヤしたまま歩いた。
すぐ横を救急車のサイレンが大音量で通り過ぎた。ドキッとして時計を見る。「遅刻しちゃう。急がなきゃ!」モヤモヤは無理やり消した。
* * *
ヒロ君は欠席していた。
ぼんやりと教室の窓から空を眺める。
七色の虹と、飛行機雲が長い線を引いて飛んで行くのが見えた。
明日は雨なのかも知れない。
やっぱり告白するなら今日なのに。
他人事だけれど他人事じゃない。
シャーペンを指でクルクル回しながら、焦る想いに眩暈がした。
放課後に知ることとなった。
ヒロ君の欠席理由は、永遠の欠席だった。
“晴れたら告白をする”そう言っていた当日の朝、工事現場から落ちてきた落下物が頭部に当たり亡くなったのだ。
* * *
ヒロ君が眠る棺の前に私は立っていた。
遠い場所へと旅立つには突然過ぎた。
私は泣きながらずっと考えて、ヒロ君の葬儀に参列した。
そんなに遠い場所へと逝ってしまったら、追いかけることも、伝えたい言葉も届かないけれど。
「友情の“おしまい”の代わりが欲しいよ、ヒロ君…」
喧嘩して決別したわけではなかった。
ヒロ君が誰かを好きになっても、私との『友情』が本当に“おしまい”なのかを考えたら、それは嘘。
『友情』が終わる理由が、どこにも見当たらなかったからだ。
それなら、ヒロ君が“おしまい”と言ったのは何故?
答えが見え始めたとき、心に広がった優しい風のような気持ちが、すとんっと心に落ちた。
「ねぇヒロ君。今度は“仲良し”がずっと続くような『恋』をしようよ」
遠いところに旅立ってしまったヒロ君には、もう届かないだろう。
小指と小指の“約束”もできない。
それでも
『恋をした想い』は結び直したいと思った。
-fin-
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる