イクメン召喚士の手記

13『千手の一憂一喜』の書

…！？
自宅前で、地べたに両手を置き項垂れる世界調査士の千手がいる。

何だ、何をしているのだ？

訝しんでいると、こちらに気付いた彼はガバッと起き上がり猛ダッシュで近づいて来た。

「はぁぁぁぁ！加護様ぁぁぁぁあ！！いつもご在宅なのに外出してるとかぁ、ベランダに見掛けないオシャレなローブが干してあるとかぁ、オレが渡した『参考書』がビリッビリになって可燃ゴミに纏められて玄関横に置いてあるとかぁ！
色んな意味で心配してたっすー！」

勢いそのままに抱き付かれ、首筋辺りをすんすん嗅がれる。少し気持ち悪い。

「私は魔物には殺されないよ、大丈夫だ」

公園の事件についての心配か？
そう思ったが、微妙に違かったようだ。

「魔物には全く心配してないっす！加護様はめちゃ強だもん。オレの心配はねぇ『浮気』！う、わ、きー！
オシャレな新しいローブは新しいパートナーの為っすか？オレの渡した『参考書』が必要ないくらい、夜の営みが激しいとかぁ～！？」

ガクガク揺さぶられ、腕に抱く未来がとても喜んでいる。

「新しいパートナーとは何だ。不必要じゃないのか？千手様が『とりあえず、嫁』で居てくれるだけで事足りてるのだが。そして非常に申し訳ない。千手様の雑誌は未来の手遊び道具になってしまった…私の不手際だ」
「…っ！！」
「？」
「加護様、天然ジゴロ？そうでしょ？すげぇ愛しちゃう～。うおー！今夜は寝かせないぜぇ！」
「寝不足を加速したくはな…え？」

ぶちゅぅぅぅ♡
熱い抱擁、頬に口付け、しかも大の男から！？
衝撃に言葉は止まり、暫し固まった。