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「サラ、新しい本は気に入ったかい?」
「もーっ!兄様ったら!」 
 次の朝、からかい半分の兄様。
「ちゃんと言っておいてくれないと困ります。
 私、部屋着のままだったんだから。」
「何を着ていてもかわいいから大丈夫だよ。」
「兄様は女心を勉強したほうがいいです!
 それより、兄様は誰かいい娘はいたんですか?」
「うーん…どうだろう?
 それより休暇中、旅行に行かないか?」
「えっ?旅行?」
 話をはぐらかした感はあるけど。
 旅行なんて貴族だけの贅沢。
「サミュエル、子供達だけでの旅行なんて許せませんよ。」
 父様が遮る。
「もちろん僕達だけじゃないですよ。
 皇太子殿下の旅行に誘われたのですが、サラもどうかと思いまして。」
「王族の方々とか?」
「はい、陛下も同行なさいます。」 
 エディの父様も?
「そんな所に私なんかが行ってもいいの?」
「正直僕がついてきて欲しいんだ。
 きっとつまんないと思うんだよね。だけどサラがいてくれたら楽しめるだろ?」
「どこに行くんだ?」
 と、父様。
「ストラキア山脈の麓にある王家の別荘です。
 湖もあって綺麗で涼しい所だそうですよ。」
「うーん…まあ、いいだろう。
 王族の方々がご一緒ならば間違いはないだろうし、安全だろうからな。」
 渋々ながらOKしてもらえた。
 でも…。
「他には令嬢方はいらっしゃるの?」
 仲良く出来る自信が無い。
「ああ、でも大丈夫だよ。ヴァイオレットはいつも不参加だ。」
 うっ、名指し。
 他の側近の方の妹君も来るから、その娘と仲良くなればいいと言ってくれた。
 それなら行ってみたいな。
 生まれてからずっと王都しか知らないから。

 王家の馬車はさすがに大きい。
 8人乗れる馬車にだいたい4人づつ乗る。
 皇太子殿下の馬車には交代で誰かが乗るみたいだけど…ヴァイオレットいるじゃない。
 いいけど。
 兄様とあたしは皇太子の馬車には乗らない。
 他の側近の方もエディも兄様が婚約解消された経緯をご存知だから配慮して下さった。
 ヴァイオレット本人は周りにはサミュエル兄様が自分に未練があるふうに言ってるから、また腹が立つ!
 他の令嬢はエディの護衛候補のアーサー・トスカリナ伯爵令息の妹でバネッサ。
 もう一人も護衛候補のミハイル・ターナー伯爵令息の妹でルイス。二人はあたしより一つ年上だ。
 バネッサはソバカス顔の赤毛の巻き毛でぶ厚いメガネをかけている。
 ルイスはゆるいウェーブのかかった金髪に茶色の瞳の美人。
 良かった、二人とも優しそう。
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