上 下
40 / 71

40

しおりを挟む
   ゼネス神教皇国

 創造の神ゼネスはこの世界を造った最初の神。
 この皇国は神官達の中から選ばれた教皇が国の頂点に立つ。
 だが、その教皇も敬うべき存在が聖女である。
 聖女は世界中にいるがその中でも特別な存在が聖女の紋章に二重の縁取りがされた者。
 神聖女と呼ばれている。
 神聖女には特別な力を持つ者もいる。
 特に神に愛されている者なのだ。
 その中には巫女として神に仕える者もいる。
「神託です。」
 ある日、巫女は教皇に神託を告げました。
「西の国に三重紋を持つ聖女が現れました。
 神は聖女が不幸に見舞われぬよう万が一の場合は神の元の国である我が国で保護するようにと仰せです。」
 神は本来は世界に干渉する事ができません。
 特別な力を持つ聖女に意思を伝える事が出来ても明確には伝わらないのです。
 長い間、神殿は三重紋の聖女を探しましたが見つかりませんでした。
 神託があってから10年ほどの年月が経ったころ西のガルシアン王国の神殿から連絡がありました。
 三重紋の聖女か現れたと。
 しかし、聖女本人は家族と暮らすことを望み、聖女である事を隠していたいと言うのでした。
 教皇は悩みましたが、聖女本人がそう望むのならばと、見守る事にしました。
 三重紋の聖女の名はサラ・ブランシェール。侯爵家の養女となっている。
 裕福な暮らしに優しい家族と、一見幸せそうだが、近ごろの彼女の表情は暗い。
 私は皇国の神殿から内密に送り込まれた神官。
 この国では学園の教師としてサラ様を見守っている。
「サラさん、近ごろよく図書館に来ているようですね。
 何か面白い本でもありますか?」
 偶然を装い話しかけてみた。
「デューリンガー先生。」
 軽くお辞儀をする。
 私はここではフェルディナンド・デューリンガー。世界史の教師をしている。
「特に何というわけでもないんです。
 ここは涼しくて静かだから。」
「そうですね。」
 辺りには他の人はいない。
「サラさん…いいえ、サラ様。
 実は私は神官です。」
 ひざまづき両手を胸に当て目上の方に対する礼をとる。
「えっ、あの…まさか神殿に連れて行く気ですか?」
「いいえ。
 あなた様に助けが必要な時にはなんなりとお申し付け下さい。私はあなた様の絶対的味方です。」
 怪訝そうな顔で私を見る。
「神様がそうしろって?」
「はい。」
 やはり神の存在を知っていらっしゃる。
 話として聞いたものでは無く、実在する神を。
「三重紋の意味をご存じですか?」
「知らないわ。
 神殿の神官長も知らないって…もしかしてあなた、この国の神官長より偉い人?」
「偉いわけではございません。
 より神を身近に感じる環境にいるだけです。
 ですが、あなた様のほうがより神を身近に感じているはず。
 三重紋は神にお目通りがかなった方の証です。」
「ああ、確かに。」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

選んでください、聖女様!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:52

【長編版】婚約破棄と言いますが、あなたとの婚約は解消済みです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,032pt お気に入り:2,189

私の婚約者は、いつも誰かの想い人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:71,569pt お気に入り:3,498

推しに婚約破棄されたので神への復讐に目覚めようと思います

恋愛 / 完結 24h.ポイント:440pt お気に入り:540

俺に7人の伴侶が出来るまで

BL / 連載中 24h.ポイント:1,881pt お気に入り:1,010

悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,790pt お気に入り:466

婚約破棄に巻き込まれた騎士はヒロインにドン引きする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,726pt お気に入り:995

双月の恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:447pt お気に入り:27

処理中です...