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 学期末の試験は散々だった。
 順位は大幅に下がって18位。
 実技が伴うマナーや音楽、ダンスなどの点数が低い。というかつけられなかった。
 通常実技試験を休めば追試験を受けさせてくれるはずなのに、あたしには認められなかった。
 まあどうでもいいや。
 あたしはがんばる事をやめた。
 学費を出してくれている父様の手前、ちゃんと卒業はするつもりだけど、いい成績をとる理由がわからなくなってしまった。
 どれだけ頑張ったって公平な評価をされないとわかってしまったから。
 教師達も選民意識が高い。
 そして生徒達にもその意識を植え付けようとしている。
 学園の運営にはヴァイオレットのアルテモーゼ侯爵家が大きく関わっていて寄付金も桁外れらしい。
 選民意識が強い上に、ブランシェール侯爵家にも対抗意識があるみたいだ。
 年末のパーティーを同じ日に被せてきた。
 どっちの家に行くかでどちらを支持しているか知りたいみたいだ。
 ブランシェール侯爵家は昔から中立で国政には介入していなかった。けれど兄様がエドウィン殿下の側近となった事で警戒しているみたい。
 そしてジュリアス殿下からパートナーのお断りのお詫びが届いた。
 まあ、賢明な判断だわ。
 ジュリアス殿下がこちらについたとなれば王族が二分することになる。そしてそれはジュリアス殿下に反逆の疑惑有りとなる。
 そう考えると陛下があたしにジュリアス殿下はどうか?なんて聞いてきたのはやっぱり冗談だったのだろうな。それか、あんまりよく考えて無かったか。
 あたしとしては断ってくれた事自体はほっとしている。ジュリアス殿下はなんか苦手だ。
 根はいい人だとは知っているけど、真面目で暗い。元がバカだったあたしはこの手のタイプには散々バカにされてきた。実際バカだったんだから仕方ないけど。
 それに変な所ばっかり見られてるし。
 秘密にしている治癒能力も知られている。
 秘密…秘密にする必要あるかな?
 せっかく神様からもらった能力を使わないなんてもったいなくない?
 前回の人生であたしは貧民街にある無料診療所の手伝いをしていた。
 それは母様が亡くなるまで暮らしていた街の人達に恩返しをするため。行き場の無かった私達母子を受け入れてくれた街の為に出来る事をしたかったから。
 またやってみようかな。
 居場所がないなら作ればいい。
 いつまでもぐじぐじ悩んでたって仕方がない。あたしが出来る事をしよう。
 あたしは腰まであった長い髪を切った。
 貴族の令嬢では珍しい、肩までの長さにして大きなリボンを結んだ。
 シルクのドレスを脱いで働きやすいエプロンドレスに着替えた。
 あたしはまた、あたしらしく生きてみよう。
 
 
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