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 ジュリアス視点

 休憩時間。
 僕は図書室に行くようになった。
 決してサラの邪魔にはならないように、サラからは見えない本棚の死角に座り、静かに読書をする。
 話しかける事はしない。
 僕はきっとサラには嫌われている。
 だけどサラの近くにいたい。
 出来る事なら傷ついた彼女に寄り添い慰めたい。きっとそんな事はお断りだろうな。
 どうしてこんなにも彼女の事が気になるのだろう。恋とはなぜこんなにも自分を愚かにしてしまうのだろうか。
 ヴァイオレットを好きだった頃とはまったく違う。正直に言えばあの頃の自分のほうがまだ良かった。常識も判別もちゃんとわきまえることが出来ていた。
 おまけにサラを目の前にすると気のきいた事は言えず、言ってはいけない事を言ってしまう。
 本当に馬鹿になってしまう。こんな自分は嫌なのに止められない。
「ジュリアス殿下、こんな所にいらしたのですの?」
 ヴァイオレット?
「あ、ああ。近ごろ無性に本が読みたくなるのだ。」
「来年度の生徒会役員についてですが、どうなさるおつもりですか?」
 二年生からは生徒会役員を二名選出しなければならない。
「私といたしましてはジュリアス殿下と二人で任につきたいと存じます。」
「僕は…しばらく考えたい。」
 ヴァイオレットと役員になれば当然二人でいる時間は長くなる。
「まあ、どうしてですの?いずれ生徒会長になるのならば二年生のうちから生徒会の仕事を把握しておくほうがよろしくありませんか?」
「生徒会長は君がなるつもりだろう?」
 ヴァイオレットは常に先頭に立ちたがる。
 証拠はけして残さないが他者を蹴落とすために画策している事は薄々気がついていた。
 けれど以前の僕はそんな所も彼女の魅力だと感じていた。
 サラがどれだけ努力してもトップにはなれないのもそういう事だろう。
「私が王族を差し置いて生徒会長になれるはずがございませんでしょう?」
「そうだろうか、君ならばなれるだろう。」
「まあっ、何をおっしゃるの?」
 カタン、と椅子を引く音がした。
 サラが静かに図書室から出て行く。
「あっ…。」
 騒がしかっただろうか。ヴァイオレットにはこの空間に入って欲しくなかったのか。
「どうなさいました?」
「いや…なんでもない。」
 僕はまたサラの機嫌を損ねてしまったのか?
 このままではいつまでたってもサラに近づくことが出来ない。
 
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