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診療所は一週間に一度、学園がお休みの日に通っている。
だけど一週間に一度では困っている人すべてを助ける事は出来ない。
また倒れたりしたら大変だと、心配性の兄様に治癒魔法は1日に5人までと決められた。
じゃないと診療所にいくのは認めないって言われたんだ。
診療所はいつも治療を待つ人で溢れているのに。
仕方ないけれど、その他の人は薬で治療する。
あたしは緊急を要する人を優先して治癒して、その後は時間の許す限り患者さんのお世話をした。
シーツを代えたり体を拭いてあげたり、包帯の交換など、診療所の仕事は尽きる事がない。
こんなに患者さんが多いのはここだけが無料だから。じゃあケチケチしないでお金を払って治してもらえばいいって思うでしょ?貴族の人は。
庶民は高い治療費や薬代が払えない。
貧民だけじゃなくて町の人、貴族以外はみんな払えやしないくらい高くなってしまった。
だけどそれは治癒師が暴利を貪っているわけじゃない。そりゃ中には悪どい治癒師もいるだろうけど、基本的に治癒師は慈愛の心を持っているはず。じゃなきゃ他人を治す力が強くなるわけないんだ。
原因は医療関係者に対しての増税だ。
治癒師だって生活していかなくちゃならない。
限られた魔力で治せる人数は決まっている。
だから治療費を値上げしてお金のある貴族しか治療出来なくなってしまった。
なんでこんな世の中になってしまったんだろう。
神様に記憶させられた物語の街はもっと豊で人々は楽しそうだった。あれは物語だからいい所だけ書かれていたのかな?
無料診療所で働く人の賃金は支払われない。皆ボランティアだ。ボランティアなんてお金に余裕のある人しか出来ない。お金に余裕があるのなんて貴族だけ。だけど貴族が手を汚すような重労働をする訳がない。ここで働いているのは貴族から派遣された使用人達だ。もちろんブランシェール侯爵家からも交代でお手伝いにきてくれている。
あたしもブランシェール侯爵家から派遣されている事になっている。
護衛のフィリップもボランティアで来ている事になっているから庶民っぽい格好だ。
そして今日はあの人も庶民の服を着て手伝いに来ている。
こんな所には絶対来てはいけない人。
ジュリアス殿下だ。
でもそれに気づいているのはあたしとフィリップだけだ。
「お嬢様、大丈夫なんでしょうかね?アレ。」
アレとは体を拭いてあげる為の水桶を運ぼうとしているジュリアス殿下だ。なんともおぼつかない足取り。
「それとなく様子を見て手伝ってあげて。」
慣れない手つきだけど一生懸命頑張ってるみたいでほうっておけない。
年配ボランティアのマリッサさんが、
「ちょっとあんた、男のくせにぜんぜん使えやしないね、そんな弱っちょろい腰じゃ女は満足させらんないよ。」
おいおい、王子に何言ってくれてんの?
だけど回りからは笑いがおこる。
下品な冗談は荒んだ患者の心をらげる。
ジュリアス殿下は顔を真っ赤にしてちょっとかわいい。
だけど一週間に一度では困っている人すべてを助ける事は出来ない。
また倒れたりしたら大変だと、心配性の兄様に治癒魔法は1日に5人までと決められた。
じゃないと診療所にいくのは認めないって言われたんだ。
診療所はいつも治療を待つ人で溢れているのに。
仕方ないけれど、その他の人は薬で治療する。
あたしは緊急を要する人を優先して治癒して、その後は時間の許す限り患者さんのお世話をした。
シーツを代えたり体を拭いてあげたり、包帯の交換など、診療所の仕事は尽きる事がない。
こんなに患者さんが多いのはここだけが無料だから。じゃあケチケチしないでお金を払って治してもらえばいいって思うでしょ?貴族の人は。
庶民は高い治療費や薬代が払えない。
貧民だけじゃなくて町の人、貴族以外はみんな払えやしないくらい高くなってしまった。
だけどそれは治癒師が暴利を貪っているわけじゃない。そりゃ中には悪どい治癒師もいるだろうけど、基本的に治癒師は慈愛の心を持っているはず。じゃなきゃ他人を治す力が強くなるわけないんだ。
原因は医療関係者に対しての増税だ。
治癒師だって生活していかなくちゃならない。
限られた魔力で治せる人数は決まっている。
だから治療費を値上げしてお金のある貴族しか治療出来なくなってしまった。
なんでこんな世の中になってしまったんだろう。
神様に記憶させられた物語の街はもっと豊で人々は楽しそうだった。あれは物語だからいい所だけ書かれていたのかな?
無料診療所で働く人の賃金は支払われない。皆ボランティアだ。ボランティアなんてお金に余裕のある人しか出来ない。お金に余裕があるのなんて貴族だけ。だけど貴族が手を汚すような重労働をする訳がない。ここで働いているのは貴族から派遣された使用人達だ。もちろんブランシェール侯爵家からも交代でお手伝いにきてくれている。
あたしもブランシェール侯爵家から派遣されている事になっている。
護衛のフィリップもボランティアで来ている事になっているから庶民っぽい格好だ。
そして今日はあの人も庶民の服を着て手伝いに来ている。
こんな所には絶対来てはいけない人。
ジュリアス殿下だ。
でもそれに気づいているのはあたしとフィリップだけだ。
「お嬢様、大丈夫なんでしょうかね?アレ。」
アレとは体を拭いてあげる為の水桶を運ぼうとしているジュリアス殿下だ。なんともおぼつかない足取り。
「それとなく様子を見て手伝ってあげて。」
慣れない手つきだけど一生懸命頑張ってるみたいでほうっておけない。
年配ボランティアのマリッサさんが、
「ちょっとあんた、男のくせにぜんぜん使えやしないね、そんな弱っちょろい腰じゃ女は満足させらんないよ。」
おいおい、王子に何言ってくれてんの?
だけど回りからは笑いがおこる。
下品な冗談は荒んだ患者の心をらげる。
ジュリアス殿下は顔を真っ赤にしてちょっとかわいい。
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