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   エドウィン視点

 どうしたらいいかという質問に対してサラは、何もしないで欲しいと、そっとしておいてくれと言った。
 気になる。
 駄目だとわかっているのにサラが気になって仕方がない。
 あんなに生き生きとキラキラしていたサラが僕のせいで沈んでいると思うと切ない。
 春から僕は学園を卒業し、今は政務官に混じって国の仕事をしている。
 休日の今日は町では春祭りなる催しがあるらしい。そんな中、サラは無料診療所に行くのだとサミュエルに聞いた。
 卒業してからはサラには一度も会っていない。
 会ってどうなるというものでも無いけれど、ちょっとだけ様子を見に行ってみよう。
 庶民の祭りも気になるし。うん、そのついでだ。
 町へ出るのは久しぶりだ。
 護衛は目立たないように一人だけ、ミハイルについてきてもらう。
 アーサーは逞しく大きすぎていかにも護衛という風貌で目立ち、お忍びには向かないからな。
 断じてバネッサに後ろめたいからとかではない。
「サミュエルには内密に!」
 ばれたらきっと小言を小一時間聞かされる。
 貧しい庶民達だが、今日だけは着飾り食べて飲んで騒いで楽しむと聞く。
 庶民の暮らしぶりは話に聞くだけで実際に見た事は無い。
 町へ行った事はあっても商店で買い物をしたくらいだ。
 サラの通っている無料診療所がある下町など行った事もない。
 祭りの準備で活気に溢れる町中を抜け路地に入る。
「なんだ、もっと汚くて殺伐としていると思っていた。」
「去年まではそうでしたよ。」
 ミハイルが答える。
「お前は来た事があるのか?」
「まあ…女の子と遊ぶなら町のほうがいいですからね。」
「衛兵もいるのだな。」
 町のあちらこちらで見かける。
「ブランシェール侯爵が個人で雇い、サラの為に治安強化をなさっているそうです。
 職の無い浮浪者の支援もしているようで、それで下町もこのようにきれいになったのです。
 以前はゴミだらけの道端に生きているのか死んでいるのかわからないような者が横たわっているのが当たり前でした。」
「そう…か。」
 ブランシェール侯爵が?
 個人で?
 殊勝な事だな。
 …。
 それでいいのか?
 何かひっかかるのだが悶々としているうちに無料診療所の近くまで来た。
 診療所は教会の隣にあり教会の前には小さな広場がある。
 町のあちらこちらで見かけたが、広場には人の背丈の倍ほどの高いやぐらが組まれ紙で作られた花が飾りつけられている。
「あれは何の為にあるのだ?」
「詳しくはわかりませんが、たしか天におわすといわれている神様によく見えるように高く飾り付け、祈りが届くようにとあの回りを囲んで踊るらしいです。」
 我々王族は国の繁栄と安泰を願うが、
「民は何を祈るのだ?」 
「春の祭りは豊穣を願ったのが起源だと言われていますが、今は何でも願うらしいです。恋愛成就、家内安全、健康、金運。」
「民は貪欲なのだな。」

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