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季節はすっかり暖かくなって、今日は春祭りだ。
町のあちらこちらには白・ピンク・赤の三色の色紙で作られた紙の花が飾られる。
広場の中央には祭りの中心になるやぐらが建てられる。
祭りの日は皆、浮き足だって事故で怪我なんかしやすくなっちゃうからあたしは今日は無料診療所で待機している。
でも診療所は広場のすぐ前だからやぐらも見えるし、屋台もすぐ近くにあるから十分楽しめる。
そういえば前の人生ではエディとこっそり祭りに来て楽しかったな。なんて思い出したらちょっと切なくなってしまった。ダメだな、切り替えなくっちゃ。
そんな事を考えていた時だった。
表ですごい音がした。
ガラガラドーン!って。
この音はきっとやぐらが崩れたんだ。
大変!怪我人がいなきゃいいんだけど。
診療所を出てやぐらのあった方をみると、
「ミハイル!早くこの木を持ち上げるんだ!」
「はっ、しかし殿下は下がって下さい!」
「何を言ってるんだ、一人では無理だ僕も持ち上げる!」
聞いた事のある声に見覚えある人影。
「大変!クリフトフ、フィリップ、手伝って!」
あわててあたしの護衛の二人をよんだ。
目の前にはやぐらを組み立てていたと思われる人達が数人倒れていた。
そして倒れたやぐらの木を持ち上げようとしているエドウィン殿下とミハイル様の姿が。
木の下からは子供の声が、
「痛いよぉ…痛いよぉ…。」
エドウィン殿下が力強い声で、
「大丈夫だ!すぐに助けてやるから、がんばれ!」
まわりの大人達も集まって、皆で木を持ち上げるとエドウィン殿下が下敷きになっていた子供を引きずり出した。
泣き叫ぶ子供、そしてもう一人いた子供は意識がないのかぐったりしている。
「早く、こちらへ!」
クリフトフのマントを剥ぎ取って地面に敷いた。その上にフィリップが意識の無い子供を寝かせた。
お願い、間に合って!
最大限の神聖力をぶつける。
まわりの人達も同じように祈った。
子供の体がピクリと動く、そして、
「あれ?僕…あれ?たしかやぐらが倒れて…倒れ…うわぁぁぁ!」
「もう大丈夫、大丈夫よ。」
子供を抱きよせて背中をポンポンする。
まわりから歓声があがる。
群衆をかき分け一人の女性が泣きながら駆け寄ってきた。
「あああああっ!ベノン!良かった、ベノン、ベノン。」
おそらく母親なんだろう。かなりテンパってる。
「ありがとうございます!ありがとうございます!何をお礼にしたらいいの?どうしたらいいの?一生お仕えいたします!天使様!」
「いや、天使じゃないし。
無料診療所の者だから無料だよ。」
良かった、助かって。
「他の方も治療いたしますから並んで下さい。」
先ほどの泣き叫んでいた子供はエドウィン殿下に抱かれてなだめられていた。
「サラ、頼む。」
「はい。」
良かった、こちらは軽症みたいだ。
「よく頑張ったね。」
「ご…ごべんなざいっ…おで…おでたぢふざけて走ってたら…ぶつかって…。」
「そうだったの。今度からは気をつけようね?」
「うん!お姉ちゃん、ベノン助けてくれてありがとう。お兄ちゃんも助けてくれてありがとう。」
と、エドウィン殿下にもお礼を言った。
「ああ、気をつけるのだぞ。」
嬉しそうだ。
町のあちらこちらには白・ピンク・赤の三色の色紙で作られた紙の花が飾られる。
広場の中央には祭りの中心になるやぐらが建てられる。
祭りの日は皆、浮き足だって事故で怪我なんかしやすくなっちゃうからあたしは今日は無料診療所で待機している。
でも診療所は広場のすぐ前だからやぐらも見えるし、屋台もすぐ近くにあるから十分楽しめる。
そういえば前の人生ではエディとこっそり祭りに来て楽しかったな。なんて思い出したらちょっと切なくなってしまった。ダメだな、切り替えなくっちゃ。
そんな事を考えていた時だった。
表ですごい音がした。
ガラガラドーン!って。
この音はきっとやぐらが崩れたんだ。
大変!怪我人がいなきゃいいんだけど。
診療所を出てやぐらのあった方をみると、
「ミハイル!早くこの木を持ち上げるんだ!」
「はっ、しかし殿下は下がって下さい!」
「何を言ってるんだ、一人では無理だ僕も持ち上げる!」
聞いた事のある声に見覚えある人影。
「大変!クリフトフ、フィリップ、手伝って!」
あわててあたしの護衛の二人をよんだ。
目の前にはやぐらを組み立てていたと思われる人達が数人倒れていた。
そして倒れたやぐらの木を持ち上げようとしているエドウィン殿下とミハイル様の姿が。
木の下からは子供の声が、
「痛いよぉ…痛いよぉ…。」
エドウィン殿下が力強い声で、
「大丈夫だ!すぐに助けてやるから、がんばれ!」
まわりの大人達も集まって、皆で木を持ち上げるとエドウィン殿下が下敷きになっていた子供を引きずり出した。
泣き叫ぶ子供、そしてもう一人いた子供は意識がないのかぐったりしている。
「早く、こちらへ!」
クリフトフのマントを剥ぎ取って地面に敷いた。その上にフィリップが意識の無い子供を寝かせた。
お願い、間に合って!
最大限の神聖力をぶつける。
まわりの人達も同じように祈った。
子供の体がピクリと動く、そして、
「あれ?僕…あれ?たしかやぐらが倒れて…倒れ…うわぁぁぁ!」
「もう大丈夫、大丈夫よ。」
子供を抱きよせて背中をポンポンする。
まわりから歓声があがる。
群衆をかき分け一人の女性が泣きながら駆け寄ってきた。
「あああああっ!ベノン!良かった、ベノン、ベノン。」
おそらく母親なんだろう。かなりテンパってる。
「ありがとうございます!ありがとうございます!何をお礼にしたらいいの?どうしたらいいの?一生お仕えいたします!天使様!」
「いや、天使じゃないし。
無料診療所の者だから無料だよ。」
良かった、助かって。
「他の方も治療いたしますから並んで下さい。」
先ほどの泣き叫んでいた子供はエドウィン殿下に抱かれてなだめられていた。
「サラ、頼む。」
「はい。」
良かった、こちらは軽症みたいだ。
「よく頑張ったね。」
「ご…ごべんなざいっ…おで…おでたぢふざけて走ってたら…ぶつかって…。」
「そうだったの。今度からは気をつけようね?」
「うん!お姉ちゃん、ベノン助けてくれてありがとう。お兄ちゃんも助けてくれてありがとう。」
と、エドウィン殿下にもお礼を言った。
「ああ、気をつけるのだぞ。」
嬉しそうだ。
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