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学園といえば慈善事業に興味を示しているのはマレーネやスカーレットだけじゃない。
これまでは学園全体が貴族主義だったからそれに異を唱える者はいたとしても口には出来なかった。けれどゼネス神教皇国からの特使として派遣された教師のおかげで差別社会の問題点について話し合うようになったのだ。
どうやらガルシアン王国は他国に比べ、差別意識が高いらしい。
ゼネス神教の教えでは身分に関係なく人は人として尊重しなければならないとある。
具体的にはどういう事かよくわかんないけど。
とにかく生徒達の意識に変化や疑問が生じている。
その特使とはデューリンガー先生。神官だっていうのは嘘じゃなかったんだ。
他の先生や保護者の中には面白く思ってはいない人もいるだろうけど、正式な皇国からの使者には逆らえないらしい。
先生は何かを強要しているわけではなく、生徒自らが意識を変えるように問題提議するだけだった。
でもそうしているうちに少しずつ皆がこの国の歪みに気付くようになってきたみたいだ。
私たちが教えられていた近代歴史ではガルシアンは奴隷制度を廃止した先進的な国だとされていた。だから身分差別も他国と比べると少ないと教えられていたのにデューリンガー先生に言わせると差別意識が高い?よくわかんないな。
奴隷制度は廃止とは言われているが地方ではまだ奴隷として働いている人もいる。
各領地からの強い反発で自治権にまかせるとなったらしい。
国で高まる身分差別問題で槍玉に挙げられたのは意外にもブランシェール侯爵領だった。
ブランシェールでは未だに奴隷制度を設けているから。
ますますよくわかんない。
父様は差別はしていないと思う。
領地には行った事がないから奴隷がどういうものなのか実際にはわからないけど。
思いきってデューリンガー先生に質問してみた。
「奴隷制度は悪い事なんですか?」
「良いとは言えませんね。」
「じゃあ、ブランシェール領にいる奴隷は解放しなきゃいけないの?奴隷制度をやめない父様は悪い人?」
「そうとも言えません。」
「どっちなの?」
「難しい問題なのです。
ブランシェールの奴隷については私のほうでも報告を受けています。
衣食住に不自由することなく、過度な労働を強いられる事もなく、人権は守られていると聞いています。」
「王都の貧民達よりよっぽどいい暮らしをしているってことよね?」
「そうです。
彼らの違いは何だと思いますか?」
「主がいるかいないか?」
「それもありますが、仕事があるか無いかです。
彼らは働き口が無いのです。」
「それはあたしも思った。なんであの人達は働けないの?」
「元奴隷だったからです。」
「どういう事?それこそ差別じゃない。」
「そうです。
身分制度がこの世から無くなる事は無いでしょう。仮に貴族が廃止されたとしてもそれに代わる組織や上下関係が作られるはずです。そうしないと秩序を保つ事が出来なくなるでしょうから。
身分制度と差別意識は別と考えるべきです。
ブランシェール領の領民は他の土地と比べ差別意識は低いようです。
おそらく農業中心の土地がら、奴隷は労働力として大切に扱われたのではないでしょうか。もしくはそのように扱うよう領主様はじめ、貴族が率先して奴隷の人権を尊重したものと思われます。
それに反し、王都では奴隷制度を廃止した途端、貴族や商人達は奴隷を身一つで追い出しました。奴隷で無くなった彼らには雇い主が賃金を支払わなければならないからです。彼らは奴隷に賃金を払うくらいならばと、新しく別の庶民を雇う事にしたのでした。
その結果、街には職と住みかを無くした元奴隷の庶民が溢れてしまったのです。」
これまでは学園全体が貴族主義だったからそれに異を唱える者はいたとしても口には出来なかった。けれどゼネス神教皇国からの特使として派遣された教師のおかげで差別社会の問題点について話し合うようになったのだ。
どうやらガルシアン王国は他国に比べ、差別意識が高いらしい。
ゼネス神教の教えでは身分に関係なく人は人として尊重しなければならないとある。
具体的にはどういう事かよくわかんないけど。
とにかく生徒達の意識に変化や疑問が生じている。
その特使とはデューリンガー先生。神官だっていうのは嘘じゃなかったんだ。
他の先生や保護者の中には面白く思ってはいない人もいるだろうけど、正式な皇国からの使者には逆らえないらしい。
先生は何かを強要しているわけではなく、生徒自らが意識を変えるように問題提議するだけだった。
でもそうしているうちに少しずつ皆がこの国の歪みに気付くようになってきたみたいだ。
私たちが教えられていた近代歴史ではガルシアンは奴隷制度を廃止した先進的な国だとされていた。だから身分差別も他国と比べると少ないと教えられていたのにデューリンガー先生に言わせると差別意識が高い?よくわかんないな。
奴隷制度は廃止とは言われているが地方ではまだ奴隷として働いている人もいる。
各領地からの強い反発で自治権にまかせるとなったらしい。
国で高まる身分差別問題で槍玉に挙げられたのは意外にもブランシェール侯爵領だった。
ブランシェールでは未だに奴隷制度を設けているから。
ますますよくわかんない。
父様は差別はしていないと思う。
領地には行った事がないから奴隷がどういうものなのか実際にはわからないけど。
思いきってデューリンガー先生に質問してみた。
「奴隷制度は悪い事なんですか?」
「良いとは言えませんね。」
「じゃあ、ブランシェール領にいる奴隷は解放しなきゃいけないの?奴隷制度をやめない父様は悪い人?」
「そうとも言えません。」
「どっちなの?」
「難しい問題なのです。
ブランシェールの奴隷については私のほうでも報告を受けています。
衣食住に不自由することなく、過度な労働を強いられる事もなく、人権は守られていると聞いています。」
「王都の貧民達よりよっぽどいい暮らしをしているってことよね?」
「そうです。
彼らの違いは何だと思いますか?」
「主がいるかいないか?」
「それもありますが、仕事があるか無いかです。
彼らは働き口が無いのです。」
「それはあたしも思った。なんであの人達は働けないの?」
「元奴隷だったからです。」
「どういう事?それこそ差別じゃない。」
「そうです。
身分制度がこの世から無くなる事は無いでしょう。仮に貴族が廃止されたとしてもそれに代わる組織や上下関係が作られるはずです。そうしないと秩序を保つ事が出来なくなるでしょうから。
身分制度と差別意識は別と考えるべきです。
ブランシェール領の領民は他の土地と比べ差別意識は低いようです。
おそらく農業中心の土地がら、奴隷は労働力として大切に扱われたのではないでしょうか。もしくはそのように扱うよう領主様はじめ、貴族が率先して奴隷の人権を尊重したものと思われます。
それに反し、王都では奴隷制度を廃止した途端、貴族や商人達は奴隷を身一つで追い出しました。奴隷で無くなった彼らには雇い主が賃金を支払わなければならないからです。彼らは奴隷に賃金を払うくらいならばと、新しく別の庶民を雇う事にしたのでした。
その結果、街には職と住みかを無くした元奴隷の庶民が溢れてしまったのです。」
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