戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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 怖くて眠れない夜が続いた。
 それでも眠ってしまうとアレクシオンは膝を抱えて頭を少し傾けてこちらを見ている。見ているだけなのだけど意味があるようで怖い。
 じっとしているとますます嫌な事を考えてしまう。
 この世界の人達はみんな最初から優しかった。
 テリオス君もマティアス殿下もサンディも。
 でもそれは全部アレクシオンに対してだ、私にでは無い。
 これだけ皆に好かれているということはやっぱりいい人だったのだろう。私なんかがとって変われるはずもない。
 誰も私自身を知らない。私なんか愛してくれない。 
 さみしい。
 私ってこんなに後ろ向きな人間じゃなかったはずなのにな。
 知らない土地で一人でお店を開こうとしていた時も不安より期待と希望でわくわくしていた。
 こんな事になるならもっと家族と一緒にいれば良かった。そしたら死ぬこともなかったし。
 ママに会いたい。パパにももっと優しくすればよかった。弟だって面倒くさがらずに仲良くすればよかった。
 お城に行こう。
 テリオス君はついて来ないでって言ってしまった。テリオス君は悪くないのに。私が勝手に拗ねただけだ。
 クク王子はお互い知り合って間もない。最初は「戦鬼」のイメージで怖がられたけど今はアレクシオンではない私の事を慕ってくれている。
 やっぱり癒される。
 この前のパーティーからアンジュリンとも親しくなり婚約する事になった。アンジュリンは私の養女だから王子は私の義理の息子となる。
 でもしばらく遊んでいたらマティアス殿下に呼び出された。
「マティアス皇太子殿下に、ご挨拶いたします。」
「ああ、よく来てくれたね。さっそくだが、お前の提案どおり新しい宗教を初めてみたが、なかなか評判がいい。光聖神教に不信感を持ったもの達が新たに拠り所を求めていたからちょうどいいタイミングだった。」
「そうですか、今はまだ路地で広めている段階ですか?」
「ああそうなんだ、そろそろ神殿を建てようと思っているので、意見を聞きたくてな。
 権威を示す為の神殿だが豪華な神殿はなにかイメージが違う気がしてな。」
「んー…質素で小さな神殿をいくつも建ててはどうかな。礼拝だけではなくて子供達に文字も教えましょうよ。お札の効果で人々は文字に興味を持ったはず。」
「教えるのは良いが、平民の子供が習いに来るだろうか?平民にとっては子供も働き手とされているから。」
「休日を作りませんか?一週間のうち1日を休日として、皆が礼拝に来るのです。
 お布施は無くてもよいことにして、野菜なんかでもいいことにするんです。
 で、持ちよった食べ物でスープなんかを作って子供や貧しい人に配るのです。
 そして、その後に勉強させるんです。」
「なるほど、それなら貧しくても子供に食事をさせるために神殿に足を運ぶな。
 これも、異世界の知識か?」
「そうなりますね。私なんかが思い付くアイディアじゃないですよ。」
「そんな言い方は良くない。どんなに優れた人物でも書物よりヒントを得ることもある。重要なのは知識を活かせるかどうかだ。
 私はとても助かっている。」
 ああ、そうですね。アレクシオンはこんな卑屈な事言いませんもんね。
 いつも優しいけどマティアス殿下が見ているのもアレクシオンだ。
 さみしい。
 うつむき黙ってしまった。
「どうしたのだ?」
「…疲れたのでもう帰っていいですか。」
 
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