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28 正しいって何? 王様視点
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レティシアがクロッカス夫人に打たれた晩、僕はまた熱を出した。
エバンス先生とレティシアが話している。
「うーむ…知恵熱のようですが、今日何か特別変わった事はございましたか?」
「私がクロッカス夫人に打たれた事くらいかな?」
なぜレティシアはクロッカス夫人に打たれなければならなかったのか。僕は驚いて何もできなかった。
「それがショックだったのかも知れませんね。王様は暴力的な場面を見たことはなかったでしょうから。
それにしてもなぜそんな事に?」
「うーん…私が身の程知らずで生意気だったからかな?アハハ。」
笑っているけどすごく痛かったはずだ。まだ、頬が腫れている。治癒しないのかと聞いたら放っておけば治るからと。
エバンス先生はもう大丈夫だろうからと自室に戻った。レティシアはまた熱が上がるかもしれないからと、しばらくここにいてくれる。
「ねえレティシア、クロッカス夫人は悪い人だったのになぜレティシアは自分が悪かったように言うの?」
「そうですねぇ、全部が全部悪いとは言えないからかな?王様だって今まではクロッカス夫人の言う事はちゃんと聞かなきゃって思ってたんじゃないですか?」
確かにそうだ。後宮においてクロッカス夫人は絶対で逆らうなど考えた事もなかった。母上がそうだから間違っているとも思わなかった。
「彼女が正しくなかったら、何が正しいのか正直混乱している。」
「いい事を教えてあげましょうか?
実は、世の中には正しい事なんて何ひとつ無いんですよ。」
「どういう事?」
「みんなより良い方を選んでいるだけなんです。」
「どうやって?正しい方を選ぶんじゃないの?」
「そうですね。さっきのクロッカス夫人の話しですが、私の悪かった所は、まず王様と手を繋いでいた事です。」
え?ダメだったの?今も手を繋いでいるけど。
「事情を知らない人が見たらまず驚きます。本来なら王様と男爵令嬢の私などは直接口をきくのも許されません。王太后様に許しを得ているので大丈夫ですけどね。
それに、目上の人に対する礼儀もなってなかったですね。
誰にでも自分の正義ってのがあるんですよ。だから王様も悪いと思う事でも全部を否定しないで、逆に正しいと思う事でも間違いが無いか考えるようにしてみて下さい。」
「…難しいよ。」
また熱が出そうだ。
「悩んだ時はかわいい方を選んだらいいんです。」
は?
「私が知ってることわざに「可愛いは正義」ってのがあるんですよ。意味はえーと、「己の直感を信じよ」です。」
眠そうに目をこすりながら笑う。
レティシアの話しは簡単そうで難しくて、難しいのに簡単に解決できそうだ。
「今は解らなくてもいいんですよ。王様にはまだまだ時間はたくさんありますからね。」
ベッドの横の椅子に座り僕の手を握ったまま眠ってしまったようだ。薄暗い明かりの下でも腫れて見える頬が痛々しい。僕はレティシアを守れなかったのも悔しかったんだ。クロッカス夫人が怖くて、体がすくんでただ打たれるのを見ていた。非力で権力もうまく使えない自分が恥ずかしい。
そっと頬に触れてみる。僕が触れたからといって治癒できるわけでもないのに。
「う…ん…。」
おこしてしまったようだ。
「あ、ごめん、痛かった?」
「ううっ、寒い。」
えっ?ちょっと。どうしよう、寝ぼけて僕の布団の中に入ってきた。
僕の腕に抱きついて顔を刷り寄せる。
侍女は?
居眠りしてる。起こさなきゃ。
でも…でも…でもっ。
かわいい!レティシアかわいい!柔らかい髪が僕の頬をくすぐる。このまま横を向いたらおでこに僕の唇が触れる。
どうしよう、すっごいドキドキする。さっきまで悩んでいたことなど、どうでもよくなった。
キスたい。
おでこでいいんだ。ちょっと触れるだけでいいんだ。
ハッ!何?
痛い!痛い!痛い!
どうして「こんな所」が痛い?病気?でもレティシアがこんなに側にいるんだからそんなはずは。
直感的に悟った。
これはエッチな事だ。
これはいけない事だ。
侍女を起こさなきゃ。
「エ、エミリ、起きて。レティシアが寝ぼけてるんだ。」
「はっ!も、申し訳ございません。」
「そっと起こさずに部屋に運んであげて。」
エミリは護衛の騎士を呼んだ。騎士はそっとレティシアを抱き上げて連れて行ってくれた。僕もいつかあんな風にかっこよく抱き上げられるようになりたい。
なんという事だろう、僕にはグロリアという婚約者がいるのに、他の女の子にこんなにも邪な感情を抱いてしまうなんて。こんな気持ちは誰にも知られてはならない。
エバンス先生とレティシアが話している。
「うーむ…知恵熱のようですが、今日何か特別変わった事はございましたか?」
「私がクロッカス夫人に打たれた事くらいかな?」
なぜレティシアはクロッカス夫人に打たれなければならなかったのか。僕は驚いて何もできなかった。
「それがショックだったのかも知れませんね。王様は暴力的な場面を見たことはなかったでしょうから。
それにしてもなぜそんな事に?」
「うーん…私が身の程知らずで生意気だったからかな?アハハ。」
笑っているけどすごく痛かったはずだ。まだ、頬が腫れている。治癒しないのかと聞いたら放っておけば治るからと。
エバンス先生はもう大丈夫だろうからと自室に戻った。レティシアはまた熱が上がるかもしれないからと、しばらくここにいてくれる。
「ねえレティシア、クロッカス夫人は悪い人だったのになぜレティシアは自分が悪かったように言うの?」
「そうですねぇ、全部が全部悪いとは言えないからかな?王様だって今まではクロッカス夫人の言う事はちゃんと聞かなきゃって思ってたんじゃないですか?」
確かにそうだ。後宮においてクロッカス夫人は絶対で逆らうなど考えた事もなかった。母上がそうだから間違っているとも思わなかった。
「彼女が正しくなかったら、何が正しいのか正直混乱している。」
「いい事を教えてあげましょうか?
実は、世の中には正しい事なんて何ひとつ無いんですよ。」
「どういう事?」
「みんなより良い方を選んでいるだけなんです。」
「どうやって?正しい方を選ぶんじゃないの?」
「そうですね。さっきのクロッカス夫人の話しですが、私の悪かった所は、まず王様と手を繋いでいた事です。」
え?ダメだったの?今も手を繋いでいるけど。
「事情を知らない人が見たらまず驚きます。本来なら王様と男爵令嬢の私などは直接口をきくのも許されません。王太后様に許しを得ているので大丈夫ですけどね。
それに、目上の人に対する礼儀もなってなかったですね。
誰にでも自分の正義ってのがあるんですよ。だから王様も悪いと思う事でも全部を否定しないで、逆に正しいと思う事でも間違いが無いか考えるようにしてみて下さい。」
「…難しいよ。」
また熱が出そうだ。
「悩んだ時はかわいい方を選んだらいいんです。」
は?
「私が知ってることわざに「可愛いは正義」ってのがあるんですよ。意味はえーと、「己の直感を信じよ」です。」
眠そうに目をこすりながら笑う。
レティシアの話しは簡単そうで難しくて、難しいのに簡単に解決できそうだ。
「今は解らなくてもいいんですよ。王様にはまだまだ時間はたくさんありますからね。」
ベッドの横の椅子に座り僕の手を握ったまま眠ってしまったようだ。薄暗い明かりの下でも腫れて見える頬が痛々しい。僕はレティシアを守れなかったのも悔しかったんだ。クロッカス夫人が怖くて、体がすくんでただ打たれるのを見ていた。非力で権力もうまく使えない自分が恥ずかしい。
そっと頬に触れてみる。僕が触れたからといって治癒できるわけでもないのに。
「う…ん…。」
おこしてしまったようだ。
「あ、ごめん、痛かった?」
「ううっ、寒い。」
えっ?ちょっと。どうしよう、寝ぼけて僕の布団の中に入ってきた。
僕の腕に抱きついて顔を刷り寄せる。
侍女は?
居眠りしてる。起こさなきゃ。
でも…でも…でもっ。
かわいい!レティシアかわいい!柔らかい髪が僕の頬をくすぐる。このまま横を向いたらおでこに僕の唇が触れる。
どうしよう、すっごいドキドキする。さっきまで悩んでいたことなど、どうでもよくなった。
キスたい。
おでこでいいんだ。ちょっと触れるだけでいいんだ。
ハッ!何?
痛い!痛い!痛い!
どうして「こんな所」が痛い?病気?でもレティシアがこんなに側にいるんだからそんなはずは。
直感的に悟った。
これはエッチな事だ。
これはいけない事だ。
侍女を起こさなきゃ。
「エ、エミリ、起きて。レティシアが寝ぼけてるんだ。」
「はっ!も、申し訳ございません。」
「そっと起こさずに部屋に運んであげて。」
エミリは護衛の騎士を呼んだ。騎士はそっとレティシアを抱き上げて連れて行ってくれた。僕もいつかあんな風にかっこよく抱き上げられるようになりたい。
なんという事だろう、僕にはグロリアという婚約者がいるのに、他の女の子にこんなにも邪な感情を抱いてしまうなんて。こんな気持ちは誰にも知られてはならない。
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