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    クラウディア視点

 パーティー翌日。カイル殿下になぜあのような暴挙にでたのか詰問した。
 原因はフェリクスが恋愛教本がわりに勧めたロマンス小説だった。
「カイル殿下とリリアンはさほど親しくもないでしょう?なぜあのような事を?」
「花や手紙を何回も贈ったが?」
「花と手紙だけ?ドレスもアクセサリーも贈った事も無い相手にあんな事を?」
「高価な贈り物を喜ぶなど、ろくな女じゃないぞ。」
 得意気に言って見せるが、本の情報をうのみにしているな。
「リリアンは喜びますわ。」
「リリアンはそんな女じゃない!」
 はあ~本当におばか。
「シュガー男爵家は裕福ではございませんのよ。新しいドレスも買えないほどにね。
 年頃の令嬢が流行り遅れの小さくなったドレスでパーティーに行くのがどれだけ恥ずかしかったかおわかりにならないでしょうね。」
「そう…なのか。」
「今後はフェリクスではなく、年上の紳士におたずね下さいまし。」
 しっかりしているようでもたかが男子高校生だ。相談したフェリクスにしたって同い年。
 そしてリリアンの事は初恋なのだろう。
 まわりが見えなくなっているのだ。
 カイル殿下は悪い奴じゃない。
 幼い頃から共に育った幼なじみだ。男同士ならば親友にもなれただろう。
 プレゼントも贈った事など無いのだ。
 婚約者である俺には公費で回りの大人がすべてふさわしい物を用意する。ドレスも予め揃いで仕立ててある。もしかしたらどこの家でもクローゼットには衣装が入っていると思っていたのかもしれない。
「とにかくいきなり暗がりに連れ込まれて、リリアンはどれほど怖かった事か、震えて泣いておりましたのよ?」
 実は気持ち良かったなど言えんがな。
「いいですか!フェリクスから借りた本は男に都合が良いように書いてあるのです。あんな事を喜ぶ令嬢はおりませんから。」
「そうか…。
 クラウディアにも謝らねばならない。 
 婚約者がいる立場であのような振る舞いは恥ずべき行為だとわかっているのだ。
 だが、どうにもリリアンが気になって仕方がないないのだ。こんな気持ちは初めてでどうしていいかわからないし、逆に自分でも思ってもいない行動をしてしまう…おかしくなってしまったようだ。
 以後、気をつけるよ。すまなかった。」
 叱れた子犬のように項垂れる。
 こういう所がかわいくて憎めない。
 女性としての恋愛感情や嫉妬心が無いからそう思えるのだろう。
 
 前期の授業は4~6月夏期休暇は7・8月、後期は9~11月冬期休暇は12・1月となり、2月と3月は授業はほとんどないが補修が必要な人は受けて、あとは各自の準備期間だったり、年末から続く社交界行事に精を出す人もいる。
 今日からは前期の授業が終わり夏期休暇だ。
 だけど、俺には城でのお妃教育がある。
 しばらくリリアンに会えないのはさみしい。
 
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