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リリアン視点
後期の授業がはじまりしばらくは平穏な日々が続いたが、最近カイル殿下の良くない噂を耳にする。
町でお忍びデートをしているというのだ。
相手はクラウディア様ではなく、ロザリン・メィティア子爵令嬢。
あまり良くない噂しか聞かない娘だ。
そもそも彼女の家はパーティーで花を売って生計をたてている。それはこの世界では悪い事ではない。パーティーコンパニオンみたいなものらしい。
彼女はまだ学生にも関わらず家業を継いでいるとのこと。社交界には必要らしいから学園も目を瞑っているんだと。
でもロザリン嬢は学園でも男性を誘惑している。しかも恋人や婚約者のいる人ばかり。
カイル殿下は普段出席しないような下級貴族主宰の仮面舞踏会にロザリン嬢と頻繁に顔を出しているそう。
今日は生徒会の仕事で、どうしてもカイル殿下の確認を貰わなきゃいけない書類があって生徒会室で待っていた。
…なかなか来ない。
クラウディア様は用があって先に帰られた。
季節は冬に差し掛かり日が暮れるのも早い。
カイル殿下は夕陽が差し込む時間になってやっと来られた。
「すまなかったね、外出が少し長引いてしまって。」
ロザリン嬢とデートだったのだろうか、いつも一緒のフェリクス様がいない。
「クラウディアは?」
「侯爵様とのお約束があり帰られました。」
書類に順に目を通し、サインをする。
放っておけばいいのかもしれないけれどクラウディア様がないがしろにされるのは良くない。
私から見てもロザリン嬢は皇太子の品位を下げる存在だと思う。
決して個人の嫉妬からでは無い。
「あの…あまりよくない噂を耳にします。」
なんの事か察しがつくようで、
「君には関係の無い事だ。」
少し苛立ちまじりの声だ。
以前の清廉なイメージが揺らぐ。
「そうですね…。」
夕暮れの生徒会室で書類をめくる音だけが聞こえる。
沈黙の時間がやけに長く感じられた。
最初に会った時はステキな皇子様だったのに今は良くない所ばかり見えてしまう。
「問題は無いようだ、ご苦労。」
書類を受け取り、整理する。
もう要件は終わったから帰ってもいいのに、殿下は帰らない。
私が終わるのを待っていてくれているのかもしれない。
「さっきは…すまなかった。言い方がきつかった。」
「いえ、大丈夫です。」
「言い訳にしか聞こえないだろうが、その…ロザリン嬢とはそういう関係の付き合いではない。」
「はい。」
「町や下級貴族といった普段馴染みのない事柄について教えてもらっているだけだ。」
「はい。」
「リリアン?怒っているのか?」
「いいえ?関係の無い事ですから大丈夫ですよ。」
にっこり笑って見せた。
後期の授業がはじまりしばらくは平穏な日々が続いたが、最近カイル殿下の良くない噂を耳にする。
町でお忍びデートをしているというのだ。
相手はクラウディア様ではなく、ロザリン・メィティア子爵令嬢。
あまり良くない噂しか聞かない娘だ。
そもそも彼女の家はパーティーで花を売って生計をたてている。それはこの世界では悪い事ではない。パーティーコンパニオンみたいなものらしい。
彼女はまだ学生にも関わらず家業を継いでいるとのこと。社交界には必要らしいから学園も目を瞑っているんだと。
でもロザリン嬢は学園でも男性を誘惑している。しかも恋人や婚約者のいる人ばかり。
カイル殿下は普段出席しないような下級貴族主宰の仮面舞踏会にロザリン嬢と頻繁に顔を出しているそう。
今日は生徒会の仕事で、どうしてもカイル殿下の確認を貰わなきゃいけない書類があって生徒会室で待っていた。
…なかなか来ない。
クラウディア様は用があって先に帰られた。
季節は冬に差し掛かり日が暮れるのも早い。
カイル殿下は夕陽が差し込む時間になってやっと来られた。
「すまなかったね、外出が少し長引いてしまって。」
ロザリン嬢とデートだったのだろうか、いつも一緒のフェリクス様がいない。
「クラウディアは?」
「侯爵様とのお約束があり帰られました。」
書類に順に目を通し、サインをする。
放っておけばいいのかもしれないけれどクラウディア様がないがしろにされるのは良くない。
私から見てもロザリン嬢は皇太子の品位を下げる存在だと思う。
決して個人の嫉妬からでは無い。
「あの…あまりよくない噂を耳にします。」
なんの事か察しがつくようで、
「君には関係の無い事だ。」
少し苛立ちまじりの声だ。
以前の清廉なイメージが揺らぐ。
「そうですね…。」
夕暮れの生徒会室で書類をめくる音だけが聞こえる。
沈黙の時間がやけに長く感じられた。
最初に会った時はステキな皇子様だったのに今は良くない所ばかり見えてしまう。
「問題は無いようだ、ご苦労。」
書類を受け取り、整理する。
もう要件は終わったから帰ってもいいのに、殿下は帰らない。
私が終わるのを待っていてくれているのかもしれない。
「さっきは…すまなかった。言い方がきつかった。」
「いえ、大丈夫です。」
「言い訳にしか聞こえないだろうが、その…ロザリン嬢とはそういう関係の付き合いではない。」
「はい。」
「町や下級貴族といった普段馴染みのない事柄について教えてもらっているだけだ。」
「はい。」
「リリアン?怒っているのか?」
「いいえ?関係の無い事ですから大丈夫ですよ。」
にっこり笑って見せた。
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