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   クラウディア視点

 リリアンはなぜか解らないがアレン第二皇子に誘われたと言った。皇族の誘いは断ってはいけない暗黙のルールがあるから賢明な皇族ならばいたずらに誘ったりはしないのに。
 ダンスが終わるとアレン殿下はリリアンの手を引いて部屋の隅へと。
 それを見てカイル殿下は、
「ク、クラウディア?リリアンはなぜアレンと親しくしているのかな?」
 リリアンがからむと途端にポンコツになるな。
「怪しいですわね。様子を見ましょうか。」
 すぐにでも後を追いたかったが皇太子とその婚約者だ。挨拶が後を絶たず、なかなか追い付けない。
 仕切りのカーテンから様子を伺えばリリアンの悲鳴が。
 カーテンを開けるとリリアンに覆い被さり乳を揉むアレン殿下。
 すぐさま殴りかかりたかったが相手は皇族だ。酷い言い訳を言い始めたアレン殿下の胸ぐらを掴み、殴り付けたのはカイル殿下だった。
 カイル殿下が怒った事など初めて見た、人を殴ったのも初めてなのではないだろうか。
 ちょっとかっこいいじゃないか。
 アレン殿下はすごすごと出て行った。
 リリアンを抱き起こし涙を拭く。
「カイル殿下、申し訳ございませんがリリアンを送って帰りますわ。」
「ああ、そうしてあげなさい。」
 殿下は上着を脱いでリリアンに掛ける。
 リリアンは相当怖かったのだろう。言葉が出ないようだ。
 代わりに言ってやろう。
「殿下。」
「なんだ?」
「ステキでした。」
 親指を立てる。
「あ…ああ、殴るというのは結構痛いものだな。」
 手をぷらぷらして照れ笑いする。
 リリアンも泣きながら親指を立てた。
 馬車に乗ると少し落ち着いたようで話し始めた。
 話しが長くなりそうだし、こんな泣き顔で家に帰せばおばあ様が心配するだろうからザカリー邸に泊まってもらう事にする。
「アレン殿下は転生者でストーリーを知っているようでした。
 でも私はあの人はなんだか信用できなくて、自分だけが転生者でクラウディア様の事は言わなかったんです。
 そしたら原作は私が主人公でクラウディア様は悪役令嬢だと言うんですよ。
 でももうストーリーは大きく変わってるとも言ってました。」
「だとしたらリリアンはカイル殿下の皇太子妃に?」
「ならないと思う。だとしたらアレン殿下が私を襲うのは変じゃないですか?
 主人公が脇役に犯されるとどうなる?」
「軌道修正は出来なくなるね。」
「軌道修正するために私を手にかけるか。
 自分が優位になるために手をかけるか。」
「優位になりたいというのなら奴は王位継承権二位だ。邪魔なのはカイル殿下だな。」
 結局答えは見付からなかった。
 仮に奴がストーリーを知っていたとしても本当の事を言うとは限らない。
 リリアンが怖い思いをしただけだった。
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