よくある転生物語だと思うんだけど？

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　　　トゥーイ視点

　シュガー男爵邸ではまた使用人の入れ替えがありそうだ。
　リリアンお嬢様のお店がオープンし、一時的に邸の従者となっていた、レナード、ミッシェル、フランツの三人と下働きのジョージとエマはそちらのスタッフとして働く。以前から男爵邸に仕えていたステラもシェフとして邸を出て店の三階に住む事になった。
　結果、男爵邸には現在元からいた下働きが二人に御者が一人、メイドが二人。そして執事の私。
　お嬢様はザカリー侯爵家からの援助を心苦しく思われているようで、学園を卒業なさったら自立なさるおつもりだ。
　使用人達はすべて元はザカリー侯爵邸の者だが給料は少なくなってもこのまま男爵邸に残りたいと希望した。
　ここは居心地が良い。
　侯爵邸の給金にみあった規律正しく厳しい環境も一流の使用人達にとっては良いものだったが、一度この緩い職場で働いてしまえば元の環境に戻るのは難しいだろう。
　何より侯爵邸にはリリアンお嬢様がいない。
　リリアンお嬢様はかわいらしくて優しくて優秀でかわいい。
　お嬢様のいらっしゃる所はいつも春の庭園のように花が咲き乱れ甘い香りが漂う。そんな幻覚が見えてしまう。
　主人であるレイモンド様はたいへん厳しく、些細な事で叱られる私をいつも気づかってくださる。
「あのね、トゥーイ…さん。」
　さん？
「たいへんお世話になりましたが、そろそろ侯爵邸へ戻っていただきたいの。」
　！
「こちらで引き続きお仕えしたいと申し上げたはずですが？」
「でもね、トゥーイさんのお給料は私では支払うのは難しいの。」
　確かにザカリー家の使用人達は他の家門より多くいただいている。
「もとよりザカリー家と同じだけいただけるとは思っておりません。」
「でも、トゥーイさんはセティア子爵令息でしょう？男爵家で働くのはおかしいわ。侍従長をされているお父様もお許しにならないと思うの。」
　確かに父から許しをもらうのは難しいだろう。
「それでも私はお嬢様にお仕えしたいのです。」
「でもね…言いにくいのだけど…トゥーイさんが必要なお仕事って家にはあんまり無いと思うの。」
　え？
　それはまさか私が厄介者だという事？
　メイド達が哀れみの瞳で見ている。
「…お役にたてていないと…。」
「そ、そうじゃないの！ほら、家って私一人じゃない？ケイトとメリージェーン（メイド）と下働きの人がいれば十分なの。それに私も家事出来るし、財産管理も自分でできちゃうし、トゥーイさんのような優秀な執事はもったいないのよ。」
　うっ…お優しい。私を傷つけないように。
「しかし、男手がないと不用心です。」
「それはね、もう一人警備の人を雇おうと思うの。」
　くっ…たしかに私より安くて役にたちそうだ。
「…では安心して任せる事の出来る者がみつかりましたらザカリー邸に戻ります。」