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  レイモンド視点

「あの…レイモンド様、本日はエスコートしていただき、ありがとうございます。」
「あ、ああ。」
 レティシア嬢が話しかけてくるがリリアンの事が気がかりだ。
「後程またよろしくお願いいたします。」
 右手を差し出す。
 口づけしろと?
 公女に口づけする栄誉を与えるとでも言いたいのか?
 面倒くさい、さっさと終わらせてリリアンの後を追った。
 男爵邸に着くとトゥーイが、
「お嬢様はどなたにも会いたくないとおっしゃってます。」
「貴様…誰に向かって。」
「も、申し訳ございません。」
 部屋の中からは泣き声が聞こえる。
 おばあ様が亡くなった時ですらこのように泣いてはいなかったのに。
 勝手にドアを開けベッドの縁に座るが気がつかない。
「リリアン?」
 手をかけて軽くゆする。
「何を泣いている?」
「あ…う…パーティーは?」 
「どうでもいい、何故泣いているかと聞いている。」 
 今でもカイル殿下の事が好きなのか?
 声をあげて泣くほどに悔しいのか?
「さみしかった…一人だけ取り残されたみたいで…さみしかった…。」
 聞いた所で本当の事は言えないのだろう。
 クラウディアはリリアンの親友で私はその兄だ。
 リリアンは常にクラウディアの結婚を祝福し、二人の幸せを願っていた。
 その気持ちに偽りは無いのだろう。
 自分の本当の気持ちを除けば。
「私がいる。」 
 しがみつくリリアンが愛しくもあり憎らしくもあった。
 口づけをすると「もっとして。」とねだる。
 さみしいからか?
 カイル殿下を忘れたいから?
 腹立たしい、私をそんな事に利用するのか。
 いいだろう、忘れてさせてやろう。
 荒々しく衣服を破り剥ぎ取り、身体中を愛撫した。いや、愛撫というよりは痛みを与えた。
 強く握れば折れてしまいそうな細い腕を押さえつけ、抵抗できるはずもない身体に吸い付き歯を立て自分のものだというかのように印をつけた。
 細い腰を掴み自分の欲望をリリアンの中にねじ込むと悲鳴をあげて泣いた。
「痛いっ!痛いぃぃっ!いやあぁ…もう許して!」
 許せない。
 他の男を想って泣くくらいなら、私を恨んで泣け。
 このまま縛り付けて私だけのものにして、誰の目にも触れないように閉じ込めてしまいたい。
 そんな願望をずっと抑制していた。
 欲しいままに貪り、犯し、欲望のすべてをこの小さな身体に注ぎ終わる頃にはぐったりと動かなくなってしまった。
 そうなってしまってから自分のしたことのおぞましさに気がついた。
 大量の出血の跡が見られるシーツに痣だらけのか細い身体。
 これは私のした事か?
 ピクリと指先物が動いた。
「すまない…私はなんという事を…。」 
「私が望んだ事です。」  
 かすれた声で答える。
 あわてて水を飲ませた。
 
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