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  リリアン視点

 なんだか哀れになった。
 私が転生者じゃなかったらレティシア様は予定どおりレイモンド様に愛されていたのかもしれない。思い通りにいかずあのようにすさんでしまったのかも。
 城に向かう馬車の中でそんな事を考えた。
 クラウディア様にはちょくちょく会えるようになった。
 手紙を出して二週間だったのが3日で会えるようになった。ザカリーパパのおかげだ。
 ザカリーパパはヴェネディクト・ヴァンヴェルート・ザカリー侯爵。この帝国の宰相を務めていらっしゃる。
 怖い方かと思っていたけど意外と気さくな方。
 でもそれは私に利用価値があるから。
 最初に城で会ってからザカリーパパとは文通してる。
 孤児院を利用した児童保護法が先月可決された。それによって虐待の疑いのある子供は保護される事になった。満足に子供を育てられない家庭は相談し、援助を受けたり仕事を斡旋してもらう事もできる。
 今後は義務教育についても議会で話し合う予定だと。
 これらの案はザカリー宰相が発案となっている。例のごとく身分の低い女の戯れ言など貴族は耳にしないから。
 私の功績はどこにも残らないけど、こうすることで一人でも多く救われる子供がいるのなら私はそれでいい。
 私は運良くおばあ様に助けてもらえたけど、世の中にはまだまだ飢えて死んでいく子がいるのだ。
 クラウディア様を待っていると今回もザカリーパパがいらした。
「やあリリアン、よく来たね。
 先日の農地改革の件だが、国から予算が出せそうだ。いっそのこと国立農業研究所を設立してはどうかと思うのだが?」
「それは良いですね。ですが、私が把握できているのは北部のクランセン伯爵領だけです。
 伯爵領に誘致していただければ幸いなのですが。」
「その点はまた議会で話し合う必要があるが、まあ大丈夫だろう。今現在も現地で研究しているものがいるのだろう?ならばその者が中心になったほうがよいだろう。」
「ありがとうございます。」
 クラウディア様がいらしたようだ。
「あらまたお父様がいらしてるのね。
 なんの話をしていたの?」
 農地を増やす話をしていた。
 この世界はいずれ食料難になる。
「帝国の食料供給は良くも悪くも安定していました。
 同じ農地から同じ物が毎年ほぼ同じ量収穫されます。
 でもそれって毎年一定量の人が飢えているって事ですよね。
 飢えて自然淘汰され、人口も安定している。
 児童保護法が施行され、義務教育が始まれば多くの子供が大人になり収入も増えるでしょう。
 そうなれば必然的に食料が不足します。
 その時に備え、今から農地を増やす必要があるのです。」
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