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  レイモンド視点

「アステローゼ公爵、並びに元公爵夫妻、レティシア嬢は前へ!」
 おずおずと前へ出る公爵家の者。それとは真逆になぜか意気揚々と進み出るレティシア嬢。
「お呼びでございますか?お義父様。」
「…君の父になった覚えは無い。」
 あわてて頭を下げさせる両親。
「さて、アステローゼ元公爵夫妻。再三に渡り貴公の令嬢を引き取りに来るよう申し渡したがなぜ無視されたのですか?」
「あ、あのそれは…娘はレイモンド殿といずれは結婚する事になるだろうし…。」
 元公爵が口ごもりながら答える。
「この虚言癖のある娘をザカリー家が受け入れると?」
「きょ、ぶ、無礼ではないか!」
「虚言癖の上、家宅侵入、窃盗、詐欺、挙げ句に本日は殺人未遂まで。いやはや恐れ入るよ。」
 誰の事を言っているのかわからないという風情のレティシア。
「お義父様ぁ?なんの事かしら?」
「…虚言ですな。あなたの父になった事もこれからなる事も無い。
 まず、家宅侵入。
 行くあてが無いというから仕方なく我が邸の離れに住まわせたが、本館には入るなと言っても何度も侵入されました。
 その際、執務室にも侵入し、帳簿を見せろと詰め寄ったそうです。
 ここにいる当家の執事の証言です。」
 ヒューイがいた。一礼し、
「はい、警備の目を掻い潜り幾度となく入り込み執務室を荒らした時に役人を呼ぶべきでした。リリアンお嬢様が止められましたが、穏便に済ますべきではございませんでした。申し訳ございません。」
「侯爵家は執事を変えるべきですわ!あのような卑しい者をなぜ令嬢のように扱うの!」
 レティシアが叫ぶ。
 父上が言ってやれと目で合図する。
「皇太子妃であらせられるクラウディア様からの命令でリリアンお嬢様はクラウディア様同等に扱うよう承っております。即ち、侯爵令嬢、即ち、後々の小侯爵夫人とわたくしどもは忖度しておりました。」
 なんだと?リリアンを?いや、それは私も考えてはいたが時期早々だと誰にも言わなかったのに。
 続けて父に代わりヒューイが証言する。
「アステローゼ元公爵令嬢は当家の名前で高額なドレスや宝石を買い求められましたが、当然当家に支払う義務はございません。
 送られてくる請求書はすべて公爵家に転送いたしておりましたが、一向に支払われないと当家に苦情がよせられました。」
 父が現在のアステローゼ公爵に問うと、
「当家でも支払う義務はございません。
 レティシア嬢はわたくしの娘でも妹でもございませんから。元公爵夫妻に支払って頂きたく存じます。」
「だそうだ。」
 請求書の束を渡され「なぜこんな…。」と項垂れる夫妻。
 まだ続くヒューイの証言。
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