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  リリアン視点

 本気で家を出た。
 使用人達も一緒に、自分の私物以外はすべて置いて、一時的にホテルへ。
 トゥーイに早急に新しい邸を探してもらうけれど、前より大きな邸にしてと、念を押した。   
 ちょっとした意地だ。
 ホテルに移ったのにちゃんと調べて皇帝陛下から詫び状と爵位の授与式、及びパーティーの招待状が届けられた。
 皇帝陛下の詫び状などというものはめったにお目にかかれないらしい。
 内容は姪のレティシア嬢が迷惑をかけて悪かったと、レイモンド様は悪くないので許してあげてなんて、いかにもザカリーパパに書かされた反省文みたいな内容だった。
 でも本当に子爵に昇格するんだ。
 逃げ出した後パーティーで私の功績をザカリー宰相が公表した。
 多少政治的背景は臭うけど、素直に嬉しい。
 女性の地位向上を謳っている皇太子妃殿下の成果の一つにしたいのだろうけど。まあいいや。
 私はこの世界に認められたんだ。
 あのレティシア嬢だけど、ザカリー家の名前をかたって色々お買い物していたらしい。
 愛人にばかり高価な贈り物はずるいから同等の品をもらって当たり前だとか、いずれは侯爵夫人になるのだから今買っても同じ事だとか、そんな理由で。
 だけどそんな理屈は通る訳もなく、詐欺罪でお店側から訴えられた。返済の充てなどどこにもなく、どうやら娼館に身売りするはめになったらしい。一応皇族の血が流れているという事でかなりの高額で売れたそうだ。
 同じ転生者としては複雑だけど、自業自得だと思う。前世の記憶があるなら回避する努力もするべきだった。
 メイドが大きなプレゼント用の箱を持ってきた。
「レイモンド様からドレスが届きましたよ。」
 ん~…なんで全部置いていった人にまた贈るかな?
 薄桃色にダイヤをちりばめたいかにも高そうなドレスにサファイアのアクセサリー。
 蓋を閉めて。
「さてと、ドレス買いにいきますか。」
「え?これ着ないのですか?」
「いらなーい!」
 濃いワインレッドのドレスにした。
 もう誰かの為に淡い色のドレスで着飾る必要は無い。
 だれかの好みのメイクをする必要もない。
 髪型だって好きにする。
 誰かにエスコートしてもらわなくても執事の手を借りればいい。
 ダンスを申し込んでくる相手なんて掃いて捨てるほどいる。
 当然レイモンド様のエスコートはお断りよ。
 私は一人でもちゃんと立てる。
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