初恋と悪あがき

村上りく

文字の大きさ
12 / 81
第1章

天邪鬼少年 2(sideリュカ)

しおりを挟む
sideリュカ

「シャローヴァ家のソフィアと申します。よろしくお願い致します」

翌朝やって来たのはソフィア・シャローヴァ。
実物は写真よりうんと可愛かった。
婚約者候補の女とは何人か会ったことがあるが、ダントツで可愛い。
栗色のふわふわの髪の毛ととろんとしたタレ目に、俺の頭2個分以上小さい身長で「守ってあげたくなる」感じだ。

「俺はリュカ・アザール。よろしく、ソフィア」

営業スマイルをかますと、ソフィアは上目遣いで色々喋りだした。
んーあざといなぁ。
もう少し隠せないもんなのか。
テキトーに相槌を打って話を合わせたが、疲れる。
これから何回も合わないといけないって考えるとしんどいなー。



「それではリュカ様。明日、また参りますね」

「おう、待ってるよ」

馬術を見せたり趣味の話をしたりしてなんとか乗り切った。
明日も来るのか、風邪ひいたことにしようかな。
長い廊下を歩いて自室に戻っている最中窓から一華が見えた。
休憩の合間を縫って魔法の練習をしているのだ。

『魔法使えるようにしとけよ』

1年前にそう命令した。
16歳になったら魔法学校に一緒に入学する計画を立てているからだ。
あと2年で一華はアザール家の使用人を解雇し、自分付きのボディーガードにするつもりだ。
そうすれば一緒に学校へ通える。

結構上達してんじゃん。

俺は一華のいる庭へ走って行った。


٭❀*


ソフィアは毎日屋敷に来るようになった。
あざといけどまあ良い奴だから、家のためにも良好な関係を築こうと思う、友達として。
今日は馬術の練習中にやって来た。

「リュカ様、格好良いですわ!」

軽く手を振った。
毎日喋ってるとさすがにボロが出てきて雑な対応や口調になるけど、ソフィアは結構気にしないみたいだから楽だ。

あっちぃ、タオル欲しいな。

そう思って遠くにいるグリゴリーに言おうと思ったけどメイドとなんか話してる。
取りに行くのめんどくせぇな。
渡り廊下に一華がいるのが見えた。
運良く、目が合った。

「 タ オ ル 」

と口を動かすと、一華は数秒程度でタオルを用意しグリゴリーに渡して去って行った。
用意したんなら持って来いよ。


馬術の稽古が終わり、テラスでソフィアと喋ることにした。

一華いちかさんと随分仲が良いのですね」

えっ。
飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
ソフィアの口から「一華」という単語が出てくると思っていなかった。

「先程の馬術の練習中もお話ししていましたでしょう?」

「はぁ?何言ってんだよ。一華と俺が仲良いとか有り得ねぇって。あと、ソフィアの方が比べ物になんねーくらい可愛いからな」

「もぅ、恥ずかしいからやめてください」

可愛らしく頬を染めるソフィア。
ソフィアは可愛い系だもんな、そんで一華は美人系……強いて言うならな。
一華を美人て言っているわけじゃない。

「一華さんは美人だから、時々心配になるんです」

紅茶のカップを置き、表情を曇らせた。

「心配って何だよ?」

「その…リュカ様が一華さんの所に行ってしまうのではないかと」

「はあぁぁ??」

俺ってそんな風に見えるのか?
さっきから元気が無さそうだったのはそんな事を気にしていたからか。

「ごめんなさい…でも不安なんです」

まずいな、このまま帰してソフィアの父親に報告されたら。
良好な関係が……!!
俺はとびっきり優しい笑顔を作って、ソフィアの頭を撫でながら言った。

「一華はただの使用人だし、何とも思ってねぇよ」

まだ不安そうな顔をしている。
んー、嘘でも婚約をちらつかせた方が良いのか?

「それにソフィアと婚約したら出てってもらうつもりだから」

そう言うとやっと曇った顔に輝きが戻った。
嘘も方便と言うし、しょうがないよな。
残念ながら婚約する気は無いし一華を手放す気も無いけど。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

いや、無理。 (本編完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...