初恋と悪あがき

村上りく

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第1章

私の事を知っている? 1

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sideアイ

マクファーソン家で暮らし始めて1週間が経った。
記憶喪失になってから色々な事があって息をつく暇もなかったが、ここ数日はゆっくりできた。
9月からはノアとルークくんが通っているルティシーユ学園に入る方向で話が進んでいる。
ノアと同じ中等部2年生として途中入学する予定だ。
今度途中入学のための試験を受けに行く。
それまでは毎日勉強。




と、思っていたら。
嵐がやって来たのだ。



٭❀*



いつも通りの朝。
朝食を終えて、庭の掃除をしていた。
使用人の仕事にも随分慣れてきたなぁ。

「アイちゃん!急いで服を着替えて、客間に行きますわよ!」

突然ベティが血相を変えて走って来た。
あ、最近「アイちゃん」と呼んでもらえるようになった、嬉しい。

「どうしたの、ベティ。お客様?」

「説明は着替えながらにしましょう!」

ベティは私が持っていたホウキを素早くしまうと、腕を掴んで部屋まで走った。
ベティ、足はや!
意外な特技に驚きながらも、渡された服に着替える。
ベティに髪の毛をセットしてもらいながら説明をしてもらった。

「ラッセル家のクロエさんがあと10分ほどで到着されるんですって。アイちゃんはラッセル家のお嬢様ですから、掃除をしているところは見せられませんわ」

「ラッセルって、私を引き取ってくれた家の!?」

「そうです、まだ顔を合わせたことが無いでしょう?」

「うん。確か、仕事で外国にいるから挨拶は今度ってアリスさんに言われてて…」
 
「今度と言うのが、今日ですわ」

そんないきなり!?
どうしよう、何も準備してない。
特技とか披露した方が良いのかな、気に入ってもらえないと引き取る話は白紙に…とか言われるかな!?

「大丈夫ですか?」

「無理だよ…」

「アイちゃんなら大丈夫…だと思います。でも、クロエさんは礼儀作法に厳しい方ですから気をつけてくださいね」

「会ったことあるの?」

「この屋敷にいらっしゃったことが何度かあるんです。お話したことはありませんけれど…でも!アイちゃんの話を聞いて、写真を見たら直ぐに引き取りたいとおっしゃったんですって。アイちゃんは気に入られているんですよ!」

話を聞いて、写真を送っただけ…?
ずっと不思議に思っていたけど、どうして赤の他人の私を引き取ってくれたんだろう。


コンコンコン


「クロエさんがいらっしゃいましたよ」

「 ! 今行きます」

とにかく今は失礼のないようにしなくっちゃ。
 
٭❀*

客間へ行くと、アリスさんとレイさん、それから見たことの無い女性がソファで向かい合って座っていた。
この女性がクロエさんなのかな。
アリスさんは楽しげに話しているけど、レイさんはずっと無表情だ。

「初めまして…アイと言います!」

緊張で声がひっくり返りそうになった。
クロエさんは座ったまま私を見つめている。

「アイちゃん、彼女がクロエ・ラッセルさんよ~」

アリスさんはいつも通りおっとりとした口調で紹介してくれた。
クロエさんは30代くらいに見えるふくよかな女性だった。

「クロエさん、よろしくお願いします」

私はとっても丁寧にお辞儀をした。
しかし、クロエさんはにこりともしない。
え…と、どうしよう?
困っていると、クロエさんは突然立ち上がった。
顔をずいと近付けてくる。

「本当に何も思い出していないのかい?」

「え…?」

「あたし!あたしの事は分かるかい?」

「え、え?えーと今日初めてお会いしました…よね?」

戸惑いながらそう言うと、クロエさんは「ふーん」と言ってソファに座り直した。

「悪かったね、急に近付いて。でも、近くで見れば思い出すと思ったんだよ」

「????」

「……昔より随分表情が豊かになったもんだね」


それって…。


「もしかして、記憶を失う前の私を知っているんですか!?」

「ああ、よく知っているさ」

「教えてください。私はどこで誰と暮らして、どんな人だったんですか?家や…家族は?」

「質問が多いねぇ。まずは人の話を聞くものだよ」

「す、すみません…」

謝りながらも心臓は早いままだ。
まさか、私を知っている人と出会えるなんて。


私は深呼吸をして、クロエさんの言葉を待った。


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