初恋と悪あがき

村上りく

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第1章

奇跡は私の知らない間に 1

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sideアイ

窓を開けると、12月の冷たい空気が部屋に入り込んで来る。
ラッセル家に来てもう3ヶ月以上が経過した。
時が流れるのは早いなぁと思う。
学校に行く前に庭の掃除をするのはすっかり習慣になっていた。
クロエさんは、「働かざる者食うべからず」の精神で、沢山仕事を与えてくれる。
ただお世話になるだけは嫌だったので嬉しかった。

「アイ、そろそろ朝食だよ!」

「はい!」

クロエさんの旦那さんは、海外出張に行っていて今は私とクロエさんだけでこの広い家で暮らしている。
クロエさんは最初ずっと機嫌が悪そうで怖かったけど、だんだんどんな人か分かってきて、今では仲良くなった(と思う)。

「先月のテストは帰ってきたのかい?」

「あ、渡すの忘れていました。後で見せますね」

「奨学生制度は?」

「なんとか継続です」

私は途中入学の試験で奨学生になる事が出来たので、定期試験で良い成績を取り続ければ卒業まで学費免除だ。
クロエさんが言うには「アイなら勉強しなくても奨学生継続なんて簡単だ」だそう。
クロエさんが教えてくれる昔の私の情報は「頭が良かった」しかない。
それ以外はいくら聞いても教えてくれないので、最近は諦め気味だ。
昔は頭が良くても、今の私はかなり頑張らないとすぐに成績が落ちる。
昔の私の頭、戻って来てくれ~と毎日思っている。

まあ、未だに何も思い出せてないのだけど。

「今日の課外授業、頑張るんだよ」

「は、はい…」

家を出る直前で、私にプレッシャーがのしかかった。




「アイちゃん、おはよう~」
「アイおはよう」

「2人ともおはよう」

馬車の窓からノアとルークくんが顔を出して挨拶してくれた。
今日は3ヶ月に1回の課外授業のため、学校より少し遠い精霊博物館に行く。
魔動式バスで行こうと思っていたところ、ノアが一緒に行こうと誘ってくれた。

「ルークは残念だけど、一緒には行けないな」

「僕だって精霊はくぶつかんいきたいよ…」

ルークくんはまだ初等部1年生。
今日の課外授業は動物園だそうだ。

「中等部の2年生になるまで我慢だな」

ノアがルークくんの膨らんだほっぺをつんつんしながら言った。
なんて微笑ましい光景なんだろう。

「じゃあ、ふたりともちゃんと【精霊付】になれるようにがんばってね?」

「ああ、頑張るよ」
「う………ん」

自信を持って言うノアは、やっぱりすごい。
私は今日のことが心配で、昨日全然眠れなかった。
今日は、ただの課外授業ではない。
【精霊付】になるための、言ってしまえば試験だ。
【精霊付】とは、魔法の技術や知能、性格などを精霊に認められた魔法使いのこと。
精霊に認められ、契約すると【精霊付】になれる。
学年800人以上いる中で毎年1回目で精霊と契約して帰ってこられるのは大体30人くらいだそうだ。
3年生でも何回か機会はあるが、卒業までに契約できるのは毎年平均で50人。
【精霊付】になるのは、かなり難しいことなのだ。

正直、自信はあまり無い。
でも私は絶対に【精霊付】にならなければいけない。
なぜなら、ルーシュベルト魔法学校に入るには【精霊付】でないとかなり不利になるからだ。
受験まであと約1年、どれだけ勉強を頑張っても、魔法が堪能でないと話にならない。
だから、頑張らねばならないのだ。



٭❀*



『モン精霊博物館』は、500年以上の歴史を持つ大きな博物館。
この時期は精霊と契約するために沢山の人が訪れるそうだ。
入口横の花壇には、ルティシーユ学園の制服を着た人がずらりとならんでいた。
一学年800人以上いるので、3クラスずつ1週間かけて精霊と対面する。
私とノアのクラスは今日、最終日だ。
他クラスで【精霊付】になれたのはなんと、たったの7人らしい。
それを聞いてさらに緊張する。

「アイ、落ち着いていれば大丈夫だよ。普通に博物館に遊びに来たと思っていれば良い」

「いいいいいつも通りだよ?はく、博物館楽しみだなあ!」

楽しみなんて嘘に決まっているけれど。

「はははっ、絶対嘘だろ!」

私は緊張で震えているというのに、ノアは何故か爆笑している。
成績優秀者は余裕があるなぁ。
きっとノアは龍の精霊とでも契約しちゃうんだろうな。
それで、余裕でルーシュベルト魔法学校にも入って…………ダメだ、ノアと比べたらキリがない。
楽しいこと考えて、リラックスしよ!

クラスの列に並びながら、昨日の夜ご飯を思い浮かべた。
美味しかったな、ローストビーフ。
添えてあったポテトも美味しかった…………ん?
曲がり角の所で、段ボールの中身をぶちまけている人を発見してしまった。
まだ、時間あるし良いよね。
そう思って列から離れ、男性に近付く。

「大丈夫ですか?」

私は拾ったフルーツ(?)らしきものを男性の持っていた段ボールの中に入れた。

「ありがとうございま……………す」

金髪の男性は、「ま」と「す」の間をたっぷりとってお礼を言ってくれた。
目を見開いた男性は、20代半ばくらいの青い瞳が綺麗な人だった。 

「これで全部ですか?」

私は最後のフルーツを段ボールに入れて、そう言った。

「どうもありがとう………あの、」
「アイー!!何してるんだ?」


ノアの声がした。
振り返るとクラスの列が進んでいる!
早く行かなくちゃ。

「私もう行かないと…えっと、何か言いかけてましたか?」

「いえ、………勘違いだったみたいです」

「そうですか、では」

私は急いで列に戻った。
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