29 / 81
第1章
奇跡は私の知らない間に 1
しおりを挟む
sideアイ
窓を開けると、12月の冷たい空気が部屋に入り込んで来る。
ラッセル家に来てもう3ヶ月以上が経過した。
時が流れるのは早いなぁと思う。
学校に行く前に庭の掃除をするのはすっかり習慣になっていた。
クロエさんは、「働かざる者食うべからず」の精神で、沢山仕事を与えてくれる。
ただお世話になるだけは嫌だったので嬉しかった。
「アイ、そろそろ朝食だよ!」
「はい!」
クロエさんの旦那さんは、海外出張に行っていて今は私とクロエさんだけでこの広い家で暮らしている。
クロエさんは最初ずっと機嫌が悪そうで怖かったけど、だんだんどんな人か分かってきて、今では仲良くなった(と思う)。
「先月のテストは帰ってきたのかい?」
「あ、渡すの忘れていました。後で見せますね」
「奨学生制度は?」
「なんとか継続です」
私は途中入学の試験で奨学生になる事が出来たので、定期試験で良い成績を取り続ければ卒業まで学費免除だ。
クロエさんが言うには「アイなら勉強しなくても奨学生継続なんて簡単だ」だそう。
クロエさんが教えてくれる昔の私の情報は「頭が良かった」しかない。
それ以外はいくら聞いても教えてくれないので、最近は諦め気味だ。
昔は頭が良くても、今の私はかなり頑張らないとすぐに成績が落ちる。
昔の私の頭、戻って来てくれ~と毎日思っている。
まあ、未だに何も思い出せてないのだけど。
「今日の課外授業、頑張るんだよ」
「は、はい…」
家を出る直前で、私にプレッシャーがのしかかった。
「アイちゃん、おはよう~」
「アイおはよう」
「2人ともおはよう」
馬車の窓からノアとルークくんが顔を出して挨拶してくれた。
今日は3ヶ月に1回の課外授業のため、学校より少し遠い精霊博物館に行く。
魔動式バスで行こうと思っていたところ、ノアが一緒に行こうと誘ってくれた。
「ルークは残念だけど、一緒には行けないな」
「僕だって精霊はくぶつかんいきたいよ…」
ルークくんはまだ初等部1年生。
今日の課外授業は動物園だそうだ。
「中等部の2年生になるまで我慢だな」
ノアがルークくんの膨らんだほっぺをつんつんしながら言った。
なんて微笑ましい光景なんだろう。
「じゃあ、ふたりともちゃんと【精霊付】になれるようにがんばってね?」
「ああ、頑張るよ」
「う………ん」
自信を持って言うノアは、やっぱりすごい。
私は今日のことが心配で、昨日全然眠れなかった。
今日は、ただの課外授業ではない。
【精霊付】になるための、言ってしまえば試験だ。
【精霊付】とは、魔法の技術や知能、性格などを精霊に認められた魔法使いのこと。
精霊に認められ、契約すると【精霊付】になれる。
学年800人以上いる中で毎年1回目で精霊と契約して帰ってこられるのは大体30人くらいだそうだ。
3年生でも何回か機会はあるが、卒業までに契約できるのは毎年平均で50人。
【精霊付】になるのは、かなり難しいことなのだ。
正直、自信はあまり無い。
でも私は絶対に【精霊付】にならなければいけない。
なぜなら、ルーシュベルト魔法学校に入るには【精霊付】でないとかなり不利になるからだ。
受験まであと約1年、どれだけ勉強を頑張っても、魔法が堪能でないと話にならない。
だから、頑張らねばならないのだ。
٭❀*
『モン精霊博物館』は、500年以上の歴史を持つ大きな博物館。
この時期は精霊と契約するために沢山の人が訪れるそうだ。
入口横の花壇には、ルティシーユ学園の制服を着た人がずらりとならんでいた。
一学年800人以上いるので、3クラスずつ1週間かけて精霊と対面する。
私とノアのクラスは今日、最終日だ。
他クラスで【精霊付】になれたのはなんと、たったの7人らしい。
それを聞いてさらに緊張する。
「アイ、落ち着いていれば大丈夫だよ。普通に博物館に遊びに来たと思っていれば良い」
「いいいいいつも通りだよ?はく、博物館楽しみだなあ!」
楽しみなんて嘘に決まっているけれど。
「はははっ、絶対嘘だろ!」
私は緊張で震えているというのに、ノアは何故か爆笑している。
成績優秀者は余裕があるなぁ。
きっとノアは龍の精霊とでも契約しちゃうんだろうな。
それで、余裕でルーシュベルト魔法学校にも入って…………ダメだ、ノアと比べたらキリがない。
楽しいこと考えて、リラックスしよ!
クラスの列に並びながら、昨日の夜ご飯を思い浮かべた。
美味しかったな、ローストビーフ。
添えてあったポテトも美味しかった…………ん?
曲がり角の所で、段ボールの中身をぶちまけている人を発見してしまった。
まだ、時間あるし良いよね。
そう思って列から離れ、男性に近付く。
「大丈夫ですか?」
私は拾ったフルーツ(?)らしきものを男性の持っていた段ボールの中に入れた。
「ありがとうございま……………す」
金髪の男性は、「ま」と「す」の間をたっぷりとってお礼を言ってくれた。
目を見開いた男性は、20代半ばくらいの青い瞳が綺麗な人だった。
「これで全部ですか?」
私は最後のフルーツを段ボールに入れて、そう言った。
「どうもありがとう………あの、」
「アイー!!何してるんだ?」
ノアの声がした。
振り返るとクラスの列が進んでいる!
早く行かなくちゃ。
「私もう行かないと…えっと、何か言いかけてましたか?」
「いえ、………勘違いだったみたいです」
「そうですか、では」
私は急いで列に戻った。
窓を開けると、12月の冷たい空気が部屋に入り込んで来る。
ラッセル家に来てもう3ヶ月以上が経過した。
時が流れるのは早いなぁと思う。
学校に行く前に庭の掃除をするのはすっかり習慣になっていた。
クロエさんは、「働かざる者食うべからず」の精神で、沢山仕事を与えてくれる。
ただお世話になるだけは嫌だったので嬉しかった。
「アイ、そろそろ朝食だよ!」
「はい!」
クロエさんの旦那さんは、海外出張に行っていて今は私とクロエさんだけでこの広い家で暮らしている。
クロエさんは最初ずっと機嫌が悪そうで怖かったけど、だんだんどんな人か分かってきて、今では仲良くなった(と思う)。
「先月のテストは帰ってきたのかい?」
「あ、渡すの忘れていました。後で見せますね」
「奨学生制度は?」
「なんとか継続です」
私は途中入学の試験で奨学生になる事が出来たので、定期試験で良い成績を取り続ければ卒業まで学費免除だ。
クロエさんが言うには「アイなら勉強しなくても奨学生継続なんて簡単だ」だそう。
クロエさんが教えてくれる昔の私の情報は「頭が良かった」しかない。
それ以外はいくら聞いても教えてくれないので、最近は諦め気味だ。
昔は頭が良くても、今の私はかなり頑張らないとすぐに成績が落ちる。
昔の私の頭、戻って来てくれ~と毎日思っている。
まあ、未だに何も思い出せてないのだけど。
「今日の課外授業、頑張るんだよ」
「は、はい…」
家を出る直前で、私にプレッシャーがのしかかった。
「アイちゃん、おはよう~」
「アイおはよう」
「2人ともおはよう」
馬車の窓からノアとルークくんが顔を出して挨拶してくれた。
今日は3ヶ月に1回の課外授業のため、学校より少し遠い精霊博物館に行く。
魔動式バスで行こうと思っていたところ、ノアが一緒に行こうと誘ってくれた。
「ルークは残念だけど、一緒には行けないな」
「僕だって精霊はくぶつかんいきたいよ…」
ルークくんはまだ初等部1年生。
今日の課外授業は動物園だそうだ。
「中等部の2年生になるまで我慢だな」
ノアがルークくんの膨らんだほっぺをつんつんしながら言った。
なんて微笑ましい光景なんだろう。
「じゃあ、ふたりともちゃんと【精霊付】になれるようにがんばってね?」
「ああ、頑張るよ」
「う………ん」
自信を持って言うノアは、やっぱりすごい。
私は今日のことが心配で、昨日全然眠れなかった。
今日は、ただの課外授業ではない。
【精霊付】になるための、言ってしまえば試験だ。
【精霊付】とは、魔法の技術や知能、性格などを精霊に認められた魔法使いのこと。
精霊に認められ、契約すると【精霊付】になれる。
学年800人以上いる中で毎年1回目で精霊と契約して帰ってこられるのは大体30人くらいだそうだ。
3年生でも何回か機会はあるが、卒業までに契約できるのは毎年平均で50人。
【精霊付】になるのは、かなり難しいことなのだ。
正直、自信はあまり無い。
でも私は絶対に【精霊付】にならなければいけない。
なぜなら、ルーシュベルト魔法学校に入るには【精霊付】でないとかなり不利になるからだ。
受験まであと約1年、どれだけ勉強を頑張っても、魔法が堪能でないと話にならない。
だから、頑張らねばならないのだ。
٭❀*
『モン精霊博物館』は、500年以上の歴史を持つ大きな博物館。
この時期は精霊と契約するために沢山の人が訪れるそうだ。
入口横の花壇には、ルティシーユ学園の制服を着た人がずらりとならんでいた。
一学年800人以上いるので、3クラスずつ1週間かけて精霊と対面する。
私とノアのクラスは今日、最終日だ。
他クラスで【精霊付】になれたのはなんと、たったの7人らしい。
それを聞いてさらに緊張する。
「アイ、落ち着いていれば大丈夫だよ。普通に博物館に遊びに来たと思っていれば良い」
「いいいいいつも通りだよ?はく、博物館楽しみだなあ!」
楽しみなんて嘘に決まっているけれど。
「はははっ、絶対嘘だろ!」
私は緊張で震えているというのに、ノアは何故か爆笑している。
成績優秀者は余裕があるなぁ。
きっとノアは龍の精霊とでも契約しちゃうんだろうな。
それで、余裕でルーシュベルト魔法学校にも入って…………ダメだ、ノアと比べたらキリがない。
楽しいこと考えて、リラックスしよ!
クラスの列に並びながら、昨日の夜ご飯を思い浮かべた。
美味しかったな、ローストビーフ。
添えてあったポテトも美味しかった…………ん?
曲がり角の所で、段ボールの中身をぶちまけている人を発見してしまった。
まだ、時間あるし良いよね。
そう思って列から離れ、男性に近付く。
「大丈夫ですか?」
私は拾ったフルーツ(?)らしきものを男性の持っていた段ボールの中に入れた。
「ありがとうございま……………す」
金髪の男性は、「ま」と「す」の間をたっぷりとってお礼を言ってくれた。
目を見開いた男性は、20代半ばくらいの青い瞳が綺麗な人だった。
「これで全部ですか?」
私は最後のフルーツを段ボールに入れて、そう言った。
「どうもありがとう………あの、」
「アイー!!何してるんだ?」
ノアの声がした。
振り返るとクラスの列が進んでいる!
早く行かなくちゃ。
「私もう行かないと…えっと、何か言いかけてましたか?」
「いえ、………勘違いだったみたいです」
「そうですか、では」
私は急いで列に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
いや、無理。 (本編完結)
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。
一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。
もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、
「わかってくれるだろう?ミーナ」
と手を差し伸べた。
だから私はこう答えた。
「いや、無理」
と。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる