初恋と悪あがき

村上りく

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第1章

奇跡は私の知らない間に 5

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sideアイ

「じゃあ、アイは魔法医になりたいのか?」

「そうだね…、頑張りたいと思ってる」

4年前から発症者がいなくなった謎の病気。
今でも多くの研究者や医師が、原因を明らかにしようとしている。
私は、【オニノヤガラ病】についてもっと知りたい。

「それに私、」
《アイ、出せ!》

突如権蔵さんの叫び声が聞こえた。
頭の中に響いて来るような、不思議な感覚。
反射的にカプセルから権蔵さんを出し、第一形態の権蔵さんを腕に抱えた。

「どうしたんですか突然」

《やっぱり、臭うな》

「え、私ですか」

《違ェよ》

権蔵さんは私の腕から飛び降り、エレベーターの方へ歩いて行ってしまう。

「ちょっと、権蔵さん?ここが集合場所だからあんまり離れられないんですけど…」

《アイ、乗るぞ》

全く、自分勝手な魔獣だ。
第一形態だから見た目は可愛いけど中身は同じだ。
まあ、クラスメイトはまだ全員集まる気配が無いし、少しくらいなら良いかな。
ノアに「ちょっと行ってくるね」と言うと、エレベーターに乗り込んだ。

《上だ、1番上に行け》

「分かりましたよ……何をしたいんですか?」

私はそう聞きながらエレベーターの5階のボタンを押した。

《『オニ』になる1歩手前まできてるな》

「え…?今なんて言いました、『オニ』って言いました!?」

《あーーめんどくせェな黙ってついて来い》

「待って下さい、説明を…」

ポーーン…
『3階です』

権蔵さんと言い争っているとエレベーターが開いた。
良かった、乗る人がいるんだ。
一度ここで降りて……。

「あれ、また会ったね」

ドアの向こう側にいたのは、金髪の男性だった。
よく会うなぁ、本日3回目だ。

「もしかして君の精霊?【精霊付】になれたんだね」

《おい、早く乗れ。オレたちは急いでるんだ》

失礼なことを言う権蔵さんの口を慌てて塞ぐ。

「お、なかなか威勢の良いコだ。……カタルスか。精霊は基本カプセルの中に入れておかないとダメだよ?」

男性は慣れた手つきで権蔵を拾い上げる。

「すみません、なんか出てきちゃって」

「最初の方は難しいよね」

やっぱり【精霊付】の人だったんだ。
アドバイスくれたもんね、そう言えば貰ったアドバイス全然使ってないな。
後で権蔵さんに「あなたが必要なの!」とか言ってみようかなー。
何となく金髪の男性を見ると、5階のボタンが押してあるのを見て、にこやかだった表情が一瞬消えて、真顔になった。

「……5階に用があるの?」

「え…….と、用というか」
《お前と同じ用事だと思うけどな》


権蔵さんがそう言うと、金髪のお兄さんは納得したように頷いた。
「君が例の子だったのか…」と、顎に手を付けて言った。
2人(1人と1匹?)は緊張感のある空気になる。
何が起こってるの?
すごい居ずらい雰囲気なんですけど。

「随分鼻の良いコと契約したんだね」

「そうですね、かなりいいと思います」

さっきから臭う臭う、って言ってるから鼻は良いんだろう。
動物は人間より嗅覚が優れていそうだし。

「どこで手に入れた情報か教えてくれる?」

「ん…?」

お兄さんの顔が笑顔なのにものすごく怖い。
情報って、権蔵さんの鼻が良いってこと?
そんなに重要な情報かな…。
ポーーンと、5階に到着し扉が開いた。
2人と1匹で降りると、お兄さんの迫力はもっと上がった気がした。

「えーと…、その、見てたらだんだん分かってきました」

「じゃあ、誰かに聞いたわけじゃないんだ?」

「はい!今日初めて知ったので」

「他の人に言ってない?」

「もちろんです。…でも、直に分かる事じゃないですか?」

カタルスは鼻が良いという情報は、調べればすぐ出てきそうだけどな。
権蔵さんを見ると、何故かものすごく笑っていた。

《ぶはははははっアイってバカだよな!!!!!なんで噛み合うんだよ面白すぎるだろ》

はぁ?
笑っている意味が分からない。

「笑ってないで、早く行きたいんですよね?」

《ああ、その兄ちゃんに着いていけば良いよ》

お兄さんは謎のため息をついて、

「来るなら急ぐよ」

と言った。


えっ、どこ行くの?
何するの?

取り敢えずお兄さんを追いかけた。


٭❀*


お兄さん超足速い…!!
私はぜえぜえ言いながら後を追った。
やっと追いついたと思ったら、そこは屋上だった。

「権蔵さん、こんな所に一体何の用があるんですか」

権蔵さんにそう聞きながら屋上の右端を見ると、女の人が立っていた。
何だか、様子がおかしいように見える。
震えているように見える、風かなぁ。

《アイ、第二形態だ》

「今ですか?」

《当たり前だろ、『オニ』相手に第一なんて相手にされない》

権蔵さんは《何言ってんだ》と言いたげに行った。

が、

それはこっちのセリフだ。

「『オニ』相手って何ですか!?」

《だから、あそこにいるだろうが》

「え?何言ってるんですか、あれは女のひ………と」



もう一度見ると、女の人じゃなくなっていた。



バキッバキッと音を立てながら既に3メートルくらいの大きさになっていた。
皮膚は肌色の部分がなく、全て黄褐色だった。

「あれって…………」

《『オニ』だな》

はぁああ!?!?
私は叫びたくなった。

《オレが早く「外」に出たいって言った理由は、『オニ』がまた出るようになったからだよ》

「そんな事言ってましたっけ?」

《お前が最後まで聞かなかったんだよ》

私聞いてなかったっけ…?(※「奇跡は私の知らない間に 3」参照)
混乱しすぎて頭が痛くなってくる。
『オニ』が約4年ぶりに現れたって、結構なニュースじゃないか。
でも、そんなニュース聞いたことないな。

《『オニ』の処理は極端な話、人を殺してるからな。いくら凶暴化したって元は人間だ。でも、『オニ』になった瞬間駆除の対象だ。多分、隠密に処理してるんだろうな》

「でも、昔は守護者ガーディアンはヒーローだって。皆を救う人たちだって言われてたじゃないですか」

《随分昔の情報だな。それは、『オニ』を駆除した後元の人間が助かる確率がゼロだと解明される前までだ》

「そんな…」

私は、守護者ガーディアンは正義の味方だと教えられていた。

ずっと。

誰に教えて貰っていた?
そう、確かあれは……………
《アイ、第二だっつってんだろ!》

「はいっ?」

慌てて魔力を込め、権蔵さんを第二形態にする。
すると、目の前に大きなライオン……じゃなくてカタルスが現れた。
そして、金髪のお兄さんと権蔵さんは『オニ』目掛けて魔法を発動する。
数分後には、もう『オニ』は灰になって消えていた。




私はしばらく動くことが出来なかった。
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