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第1章
奇跡は私の知らない間に 6
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sideアイ
衝撃的だった。
さっき見た時は確かに女性だった。
でも、もう一度見た時はもう人間ではなくなっていた。
そして今、灰になって消えた。
約5分間の出来事だ。
金髪のお兄さんは灰を小瓶に回収してこちらへ向かって来た。
瓶の中の灰が元は人間だと思うと恐ろしくなる。
「君、本当に守護者見習いの学生さん?精霊に頼りすぎは良くないよ」
話が見えない。
「すみません、どういうことですか?」
私が問いかけたその時。
ガン!
屋上の扉が乱暴に開いた。
「あーっ!やっと見つけました、あなたが守護者の人ですか?」
そう言いながら入って来たのは私と同じくらいの歳に見える男の子だった。
「『オニ』は屋上って情報だったんですけど。もしかしてもう処理しちゃいました?」
「…………………うん?」
お兄さんの目が点になっている。
「ねぇ君、もしかして普通の学生さんだったりする?」
お兄さんは、私にそう聞いてきた。
「普通というと?」
「『オニ』のやっつけ方とか学校でやってる?」
「やるわけないじゃないですか!『オニ』を見たのも今が初めてです!」
私の言葉にお兄さんが膝から崩れ落ちた。
「うーわ、やっちまった…」と、頭を抱えている。
「本当にごめん、面倒なことに巻き込んだ」
………え?
٭❀*
「人違いだった、本当にすまない」
金髪のお兄さん……サシャさんは私に深々と頭を下げた。
サシャさんはなんと守護者の人だった。
「いえ、私も紛らわしいことしてすみませんでした」
まとめると、こうだ。
サシャさんは今日この博物館に『オニ』が出現する可能性があるため来ていたらしい。
そこで、守護者見習いの学生と共に『オニ』を処理することになっていた。
「守護者見習いの学生が来る」としか聞いていなかったサシャさんはタイミング良くエレベーターに乗っていた私をその学生だと思い込みここまで連れて来た。
「一般の人に最近『オニ』が出るようになったっていう情報はまだ公開してないんだ。それを知っていると俺が勘違いした」
私はエレベーターでの会話を思い出す。
『どこで手に入れた情報か教えてくれる?』
『ん…?えーと…、その、見てたらだんだん分かってきました』
『じゃあ、誰かに聞いたわけじゃないんだ?』
『はい!今日初めて知ったので』
『他の人に言ってない?』
『もちろんです。…でも、直に分かる事じゃないですか?』
私が「権蔵さんの鼻が良い」という非常にたわいもない情報の話だと思っていた会話。
…………もしかしなくても、あれが『オニ』の件についてだったのでは?
何だか会話がちょっと噛み合ってない気がするとは思っていた。
サシャさんを勘違いさせたのって完全に私が悪いじゃん!
《ぶははははっ!!!!》
今まで黙っていた権蔵さんが突然笑った。
《アイ、良くやったな。まさかこんなに早く情報を掴めると思ってなかったわ》
「権蔵さん、気付いてたんですか!?」
《当たり前だろ》
権蔵さんはすご~く意地の悪い笑みを浮かべた。
《おい、そこの守護者。これから『オニ』が何処に現れたか、どんな状況だったか、全部教えろ》
「なるほど…君はもしかして」
《分かってんなら言うんじゃねェ》
権蔵さんとサシャさんが何を話しているか分からない。
でも、一つ分かるのは権蔵さんは意地悪ってことだ。
私は権蔵さんを無理矢理カプセルに入れた。
「サシャさん、ご迷惑をおかけしました。絶対に誰にも言わないと約束します。……では、私もう行かなくちゃいけないので」
「待って」
「これ、俺の連絡先。情報を知られたからには放って置けないんだ。勝手でごめんね」
そう言って名刺をくれた。
「それに君の精霊……権蔵くんはこれからも俺たちと関わりたいと思ってると思うから」
「 ? 分かりました…」
「今度連絡するね」
サシャさんはそう言って笑った。
キラキラ光る金髪は、何故か懐かしく感じた。
٭❀*
その日の夜、私は夢を見た。
息苦しくて目を背けたくなるような夢。
私がいるのは大きな…パーティ会場のような場所。
そして目の前には、『オニ』。
どうして皆逃げないの?
人々は怯えた表情で『オニ』を見上げているだけだった。
『貴方だけは逃げなさい』
私と同じブルーグレージュの髪の女の人は、そう言った。
私が走り出すのを躊躇った瞬間。
『オニ』は人をなぎ倒しながらこちらへ向かって来る。
それからは怖くて、夢中で走った。
走って走って、苦しくなっても走り続けた。
そうすれば誰か助けてくれる人がいるんじゃないかって思ったから。
外に出て私を待っていたのは、
『クロエさん…?』
良かった。
クロエさんならきっと助けてくれる。
『クロエさん!』
『あらまぁ、1人で出てきちゃダメじゃないか。一族の大切な集まりだろう。んで、なんだいそのクロエさんて呼び方は、クロエおばちゃまだろう?』
私の頭を撫でるクロエさんの手は大きい。
身長も私より大きい。
どういうこと?
ふと自分の手を見ると、子どもの手だった。
一体何が、起きてるの。
そう思ったところで目が覚めた。
「はぁ………はぁっ、は……」
前髪は汗でびっしょり濡れている。
なんだ今の夢は。
やけにリアルだった。
そう、今のは、確か。
「よ、ねんまえ……誕生日パーティ…?」
口に出した瞬間、記憶の蓋が少し開いた。
嫌だ嫌だ嫌だ。
思い出したくない。
お願い、もうあんな気持ちは要らない。
そう願っても、容赦なく蘇ってくる。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
《アイ!》
権蔵さんの、声だった。
すぐ側にぬいぐるみの様な権蔵さんがいた。
《深呼吸しろ》
言われた通りに大きく息を吸って、吐いて。
それを繰り返した。
《良い子だ。もう1回、寝とけ》
「うん……」
目を瞑ると、涙が頬を伝ったような気がした。
-----------------------------------------------
次回からは第2章に入ります。
魔法学校編です、ここまで何かと謎が多いですが明らかになっていくと思います!
楽しんで頂けると嬉しいです( ¨̮ )
衝撃的だった。
さっき見た時は確かに女性だった。
でも、もう一度見た時はもう人間ではなくなっていた。
そして今、灰になって消えた。
約5分間の出来事だ。
金髪のお兄さんは灰を小瓶に回収してこちらへ向かって来た。
瓶の中の灰が元は人間だと思うと恐ろしくなる。
「君、本当に守護者見習いの学生さん?精霊に頼りすぎは良くないよ」
話が見えない。
「すみません、どういうことですか?」
私が問いかけたその時。
ガン!
屋上の扉が乱暴に開いた。
「あーっ!やっと見つけました、あなたが守護者の人ですか?」
そう言いながら入って来たのは私と同じくらいの歳に見える男の子だった。
「『オニ』は屋上って情報だったんですけど。もしかしてもう処理しちゃいました?」
「…………………うん?」
お兄さんの目が点になっている。
「ねぇ君、もしかして普通の学生さんだったりする?」
お兄さんは、私にそう聞いてきた。
「普通というと?」
「『オニ』のやっつけ方とか学校でやってる?」
「やるわけないじゃないですか!『オニ』を見たのも今が初めてです!」
私の言葉にお兄さんが膝から崩れ落ちた。
「うーわ、やっちまった…」と、頭を抱えている。
「本当にごめん、面倒なことに巻き込んだ」
………え?
٭❀*
「人違いだった、本当にすまない」
金髪のお兄さん……サシャさんは私に深々と頭を下げた。
サシャさんはなんと守護者の人だった。
「いえ、私も紛らわしいことしてすみませんでした」
まとめると、こうだ。
サシャさんは今日この博物館に『オニ』が出現する可能性があるため来ていたらしい。
そこで、守護者見習いの学生と共に『オニ』を処理することになっていた。
「守護者見習いの学生が来る」としか聞いていなかったサシャさんはタイミング良くエレベーターに乗っていた私をその学生だと思い込みここまで連れて来た。
「一般の人に最近『オニ』が出るようになったっていう情報はまだ公開してないんだ。それを知っていると俺が勘違いした」
私はエレベーターでの会話を思い出す。
『どこで手に入れた情報か教えてくれる?』
『ん…?えーと…、その、見てたらだんだん分かってきました』
『じゃあ、誰かに聞いたわけじゃないんだ?』
『はい!今日初めて知ったので』
『他の人に言ってない?』
『もちろんです。…でも、直に分かる事じゃないですか?』
私が「権蔵さんの鼻が良い」という非常にたわいもない情報の話だと思っていた会話。
…………もしかしなくても、あれが『オニ』の件についてだったのでは?
何だか会話がちょっと噛み合ってない気がするとは思っていた。
サシャさんを勘違いさせたのって完全に私が悪いじゃん!
《ぶははははっ!!!!》
今まで黙っていた権蔵さんが突然笑った。
《アイ、良くやったな。まさかこんなに早く情報を掴めると思ってなかったわ》
「権蔵さん、気付いてたんですか!?」
《当たり前だろ》
権蔵さんはすご~く意地の悪い笑みを浮かべた。
《おい、そこの守護者。これから『オニ』が何処に現れたか、どんな状況だったか、全部教えろ》
「なるほど…君はもしかして」
《分かってんなら言うんじゃねェ》
権蔵さんとサシャさんが何を話しているか分からない。
でも、一つ分かるのは権蔵さんは意地悪ってことだ。
私は権蔵さんを無理矢理カプセルに入れた。
「サシャさん、ご迷惑をおかけしました。絶対に誰にも言わないと約束します。……では、私もう行かなくちゃいけないので」
「待って」
「これ、俺の連絡先。情報を知られたからには放って置けないんだ。勝手でごめんね」
そう言って名刺をくれた。
「それに君の精霊……権蔵くんはこれからも俺たちと関わりたいと思ってると思うから」
「 ? 分かりました…」
「今度連絡するね」
サシャさんはそう言って笑った。
キラキラ光る金髪は、何故か懐かしく感じた。
٭❀*
その日の夜、私は夢を見た。
息苦しくて目を背けたくなるような夢。
私がいるのは大きな…パーティ会場のような場所。
そして目の前には、『オニ』。
どうして皆逃げないの?
人々は怯えた表情で『オニ』を見上げているだけだった。
『貴方だけは逃げなさい』
私と同じブルーグレージュの髪の女の人は、そう言った。
私が走り出すのを躊躇った瞬間。
『オニ』は人をなぎ倒しながらこちらへ向かって来る。
それからは怖くて、夢中で走った。
走って走って、苦しくなっても走り続けた。
そうすれば誰か助けてくれる人がいるんじゃないかって思ったから。
外に出て私を待っていたのは、
『クロエさん…?』
良かった。
クロエさんならきっと助けてくれる。
『クロエさん!』
『あらまぁ、1人で出てきちゃダメじゃないか。一族の大切な集まりだろう。んで、なんだいそのクロエさんて呼び方は、クロエおばちゃまだろう?』
私の頭を撫でるクロエさんの手は大きい。
身長も私より大きい。
どういうこと?
ふと自分の手を見ると、子どもの手だった。
一体何が、起きてるの。
そう思ったところで目が覚めた。
「はぁ………はぁっ、は……」
前髪は汗でびっしょり濡れている。
なんだ今の夢は。
やけにリアルだった。
そう、今のは、確か。
「よ、ねんまえ……誕生日パーティ…?」
口に出した瞬間、記憶の蓋が少し開いた。
嫌だ嫌だ嫌だ。
思い出したくない。
お願い、もうあんな気持ちは要らない。
そう願っても、容赦なく蘇ってくる。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
《アイ!》
権蔵さんの、声だった。
すぐ側にぬいぐるみの様な権蔵さんがいた。
《深呼吸しろ》
言われた通りに大きく息を吸って、吐いて。
それを繰り返した。
《良い子だ。もう1回、寝とけ》
「うん……」
目を瞑ると、涙が頬を伝ったような気がした。
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次回からは第2章に入ります。
魔法学校編です、ここまで何かと謎が多いですが明らかになっていくと思います!
楽しんで頂けると嬉しいです( ¨̮ )
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