初恋と悪あがき

村上りく

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第2章

嬉しくなんかない 3(sideリュカ)

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sideリュカ

気付けばアレクを追い越して職員室へ走っていた。


会いたい、会いたい、会いたい。


走っている間にそれしか考えていなかった。

「失礼します」

職員室の中に入って辺りを見回しても、一華いちからしき人物は見当たらない。
良く見てみると、後ろ姿だけは一華に見えなくもない黒髪の女子生徒が教師と話していただけだ。
バッチリ顔が見えるけど、全然一華じゃない。
そう思うと、一気に冷静になれた。


なんだ…………。


やっぱり有り得ないよな。
呼吸を整えて職員室を出た。
今頃来たアレクはぜぇぜぇ言っている。
アレクは身長がバカでかくて脚が長いはずなのに走るのが遅い。
球技は出来るのに走りは絶望的、ゲームばっかりやってっからだ!
一華を見たのもアレクのゲームやりすぎた故の視力低下による見間違えだろう。

「おいアレク、帰んぞ」

「はぁ、……は、…もう居なかったの?」

「ばーか。見間違えだ」

「嘘だー、絶対見たもん」

「『見たもん』じゃねぇよ可愛くねぇわ。さっ、教室に戻るぞ」

俺が歩き出すとアレクは慌てて手首を掴んだ。

「お前まだ一華ちゃんのこと探すの諦めるなよ」

俺はアレクの手を振り払って言った。

「は?諦めたんじゃねぇ、探す必要が無いんだあんな女」

そうだ、あいつは非常識な失礼女だ。
今更会ったところで嬉しくも悲しくも無い。

「強がんなって、今めっちゃ全力疾走だったじゃん。会いたいんでしょ?」

「い、い、まのは、ちょっとした運動だ!……会いたいとか馬鹿じゃねぇの?思ってねーし(※思ってました)」

「素直じゃないな……」

アレクの奴どうしちゃったんだよ。
俺が一華に会いたいと思ってるって勘違いしてたのか。
あいつがどうなっていようと俺には関係ない。
どーせ顔で男を誘惑して上手く暮らしてるだろ!
男を手の上で転がしながら生活する一華を想像して腹が立った。
想像上でも俺を苛立たせるなんて相当な性悪女だ!
そんなやつが仮にルーベルにいたら逆に会ってみたい。
そう、俺はさっき会ってみたいと思ったんだ、そうに違いない。



٭❀*



「良いかアレク今後万が一、一華に似てる奴がいても俺に報告する必要は無いからな」

「分かったよ」

「じゃあ後でな。一緒に帰るだろ」

「分かったよ、じゃあ後で……………あ!」

アレクが俺を見て言った。
ん、俺じゃない。
俺の後ろ?

振り返ると、新入生代表挨拶をしていたあの男が歩いて来るのが見えた。

「ノア!」

アレクは珍しく大きな声をあげた。

「アレク、久しぶりだな」

ノア・マクファーソンは絶対毎日鏡の前で練習してんだろ、と思うほどスカした笑顔で近付いて来た。

「おいアレク。あいつと知り合いだったのかよ」

俺は慌ててアレクに聞いた。

「ああ、リュカにも紹介したいと思ってた」

俺はノア・マクファーソンをじっくり眺めた。
赤茶の髪に若干タレ目の、一見無害な男に見える。
でも、代表挨拶をして調子に乗っていることだろう。

「もしかしてリュカ・アザールくんか?」

ノア・マクファーソンはニコニコしながらそう言った。

「はぁ?何で知ってんだよ」

「アレクとは昔からの知り合いなんだ、よろしくな」

握手を求められたけど応えなかった。
そんな俺の態度に驚いたアレク脇腹を思い切り殴られた。
痛てぇ。

「リュカ、前に話したの覚えてない?ノア・マクファーソン。初対面なのに失礼だよ」

「だってこいつ首席だろ」

「それがなんだ」

「俺より成績良い奴は嫌いだ」

俺の言葉にため息をついたアレクは「こういう奴なんだよ」とか勝手に紹介している。
まさかアレクとノアこいつが知り合いだったとは。
そう言えば昔、友達を紹介したいからパーティに来いとか言われたことあったなぁ。
大昔すぎて覚えてねぇけど。


ノアは俺の態度に気分を悪くすることは無かったようで、逆に「面白そうだな」とか言い始めている。



なんかいけ好かない奴だ。
俺よりモテてたら承知しねぇからな。


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