初恋と悪あがき

村上りく

文字の大きさ
39 / 81
第2章

嬉しくなんかない 5(sideリュカ)

しおりを挟む
sideリュカ

隣にはニコニコと機嫌良さそうに笑うアレク。
朝の列車の中だった。
昨日の夜、アレクに電話をした。
一華いちかのことについて正直に思っていることを話したが、恥ずかしすぎて回想は出来ない。
もう忘れた。

「お前が認めたことだし、これからはちゃんと俺も協力するからね~」

「は、お前。今まで協力してなかったのかよ」

「今まで以上にって意味だよ」

何かを企んでいるような表情が、気に入らない。
なんだよこいつ。

「でも今日はそっちじゃなくて学力調査テストに頭使えよ」

ルーシュベルト魔法学校では入学式の次の日に学力を測るためのテストが行われる。
卒業する時にどのくらい伸びたかを見るデータになるらしい。
あとは、順位が張り出されるので上位生徒はクラスメート以外からも名前が知れ渡る。
……下位も逆の意味で有名になる。
俺は日頃から勉強してるから余裕だけどな。

「うん?………テ、スト?」

アレクの表情が固まった。
こいつまさか………。

「そんなのあったんだ………」

「えええええ、お前それはやばいぞ。何事も最初が肝心って言うだろ!」

「うっわ、いつも遊んでばっかりのリュカに言われるとすごい悔しいけど意外に頭良いから何も言えないや」

意外、は余計だ。
アザール家の人間たるもの、勉強は出来ないとダメなんだ。
小さい頃からどんだけ叩き込まれたと思ってんだ。

「リュカサマ~、どこが出そう?」

プライドなんて微塵もないアレクは急に鞄から数学の教科書を取り出して、甘えた声を出した。
普段クールぶってるアレクがこんなになるの久々に見た。
しっかりしろよな……。
この状態を女子に見せてやりたいわ。
そしたら俺だけがモテるのに。
俺はアレクの教科書をぶん取って、おそらく出るであろう場所に付箋を貼り始めた。



٭❀*



そして、テストが終わった。
結構簡単だった。
これは1位……いや、入試のこともあったから控え目に、10番以内と予想しておこう。

アレク迎えに行くか。
今日は部活見学でもしてから帰るかな…。

「アザールくん」

「あ?」

不意をつかれて間抜けな声が出てしまう。
急に担任のアクセル先生が声を掛けてきたのだ。

「頼まれてくれないかな?」

オドオドと、頼りない口調で言う。
アクセル先生が指さしたのは大量の資料。
何を言われるか想像がついた。

「俺友達むかえに……」
「お願いだよアザールくん~」

アクセル先生は俺を拝んで言った。
頭1個分以上小さいのでつむじしか見えない。

「ホチキス止めしたら第3資料室に持って来て…!」

多分誰も引き受けてくれなかったんだろうな。
だって、めっちゃ断りやすいもん。
「嫌でーす」って言ったらすぐ引き下がるだろうな。
しかも、プリントの量がおかしい。
重ねたら多分前見えないくらいの多さ。
断ろうかと思ったけど不憫なので引き受けることにした。
アレクを手伝わせればすぐ終わるだろ。
アクセル先生は何度もお礼を言いながら教室を出て行った。


パチン、パチン


静かな教室を、ホチキス止めする音だけが響く。
こんなことになるなら女の子に残ってもらえば良かった。
1人でこの雑用は暇すぎる。
アレクも来ねぇし。

「グゼル、いるか?」

俺は小声で言った。
しばらくすると窓から光の玉が入って来た。

《リュカくんど~したの?教室で精霊は呼んだらダメなんじゃな~い?》

光の玉は徐々に形を変え、クマのぬいぐるみの様な姿になって机の上にちょこんと座った。

「まじで暇すぎだから手伝ってくんね?大丈夫大丈夫、第1形態なら魔力弱すぎて分かんねぇよ」

ルーシュベルト魔法学校の生徒はほとんど【精霊付】。
俺も、このモンガ(クマ科の魔法動物)の精霊と契約している。

《まあ、失礼しちゃうわ~!ワタシの魔力は強いのよ~》

そう言いながらもホチキスを手に持って手伝ってくれる気満々のグゼル。
最初はあんまり仲良くなかったけど、1年以上一緒に過ごしていたら打ち解けた。
第1形態はめっちゃ可愛いけど、第2は怖いからな、最初は正直ビビった。

「ありがとな」

《しょうがないわねぇ!》

今では可愛くてしょうがない。
言わないけど。



2人(1人と1匹?)で作業したらあっという間に終わった。

「じゃ、資料室行って来るから戻って良いぞ」

グゼルと別れると、大量のプリントを持って第3資料室を目指した。
アクセル先生って見かけによらず人使い荒いな、今度から気を付けよ。


٭❀*


両手がふさがってるからドアが開けられねぇ。
どうにか足で開けようとドアをガタガタ揺らしていると、開いた。

「おぅあっ」

急に開いたのでバランスを崩したが、セーフ。
どうやら中にいた人が開けてくれたようだ。

「あざす」

プリントで全く顔は見えないが礼を言った。


「いえいえ、大変ですね」




え。




女子生徒の声だろう。
高すぎず低すぎず落ち着いていて、心地良い。
俺は驚いた。
だって、この声って。

俺は慌てて大量のプリントをテーブルに置き、声の主の方を向いた。







そこにいたのは、


一華いちかだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

いや、無理。 (本編完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

処理中です...