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第2章
妹に見えなくなった時から(sideサシャ)
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sideサシャ
俺は昔から卑怯だ。
自覚はしている。
昔色々あって、俺のせいで大切な弟にも迷惑をかけたし、ものすごく嫌われた。
だから、リュカにはもう迷惑をかけたくないと思っていた。
だけどリュカの婚約者候補の中に紅花がいたことは、納得できなかった。
昔から俺のことを「好きだ」と言ってくれる妹の様な存在。
でもいつからか、妹だと思えなくなった。
自分のものになって欲しいと思った。
リュカに取られたくなかった。
「良いんじゃない?アザール家にとってすごく良い条件の子だと思うよ」
父さんにはそう言っておいて、影でこそこそ手を回した。
紅花の気持ちを利用した。
彼女は俺が好きだから、俺の好みに合わせるために見た目は絶対に変える。
わざと、『染めてみたら?』『最近は、髪色の明るい子が素敵だと思うな』なんて言った。
本当は、紅花の黒髪がとても好きだったけど、リュカの好みと合わないように変えさせた。
リュカは昔から、髪色が暗めのロングヘアーが好きだったから。
だけどリュカと紅花は気が合ったようで、正式に婚約しても良いと言い始めた。
リュカを傷付けたあの日から、自分が最低な人間だと分かっている。
せめて彼女のことは傷付ける前に離れよう。
そう思った─────
٭❀*
「紅花、大丈夫か!?」
なのにどうして俺は、息を切らして彼女の所へ来てしまったんだ。
ルーベルに来るのは数年ぶりだったけれど保健室の場所は案内されるまでもない。
校門の前に迎えに来てくれたノアを追い越して走って来てしまった。
「「サシャさん!」」
紅花とアイが同時に言った。
俺は呼吸を整えてからベッドに向かった。
紅花の目が赤い。
泣いたのだろうか。
「体調は戻ったのか?」
俺が聞いても、紅花は答えなかった。
腫れた目元を隠すように俯く。
代わりに、ベッド脇の椅子に座っているアイが「良くなったと思います」と答えてくれた。
紅花に会うのは久しぶりだ。
俺が、会うのを躊躇っていたから。
紅花はきっと急避けられたと思って怒っている。
「あの」
アイは立ち上がりながら言った。
「私、ノアに用事があるのでちょっと出ます。サシャさん、ゆっくりして行ってくださいね」
アイはそう言ってさっさと出てしまった。
紅花と2人きりになって、保健室は静まった。
彼女の数ヶ月前まで黒かった髪は、夏家独特のピンクがかったブロンドとほぼ同じ色になっている。
見るのはこれで数回目だけれど、全然慣れない。
染めたらどうだと提案しておいて何だが、黒の方が紅花の白い肌が際立って良かった。
自分は本当に最低な人間だとつくづく思う。
「勝手に来てごめん」
俺はやっと声を発した。
「……どうして、来てくれたんですか?」
「そりゃ、紅花が倒れたって聞いたからだよ。帰りは送って行くから」
俺はベッドの横の椅子に座って、紅花に「立てるか?」と聞いた。
怪我人を送るだけ、それだけなら傍にいても許されるよな。
「……どうしてですか?」
紅花は低いトーンで言った。
何の話だ?
俺が眉をひそめて彼女を見ると、今日初めて目が合った。
「あたしのこと避けてたのに、どうして優しくするんですか?」
紅花は唇を噛んだ。
きっと泣くのを我慢しているのだろう。
俺はこの顔に、昔から弱い。
でも。
「避けてる?そんな訳ないよ」
俺は逃げた。
余裕があるフリをして笑った。
「そろそろ帰ろうか、顔色も結構良いし」
「………あたしは、避けられて悲しかったです。サシャさんのことが……好」
紅花が何か言いかけたのを止めるように、俺は頭を撫でた。
「避けてたらここに来ないだろ?カバン持って来るから、ちょっと待ってて」
そう言って、逃げるように保健室を出た。
紅花が何を言おうとしたか分かった。
だから止めた。
お願いだから、やめてくれ。
そんなこと俺に言っちゃダメだ。
君にはリュカがいる。
紅花とリュカが婚約すれば、俺は何の後ろめたさもなく君と会える。
君の、義兄として。
俺は昔から卑怯だ。
自覚はしている。
昔色々あって、俺のせいで大切な弟にも迷惑をかけたし、ものすごく嫌われた。
だから、リュカにはもう迷惑をかけたくないと思っていた。
だけどリュカの婚約者候補の中に紅花がいたことは、納得できなかった。
昔から俺のことを「好きだ」と言ってくれる妹の様な存在。
でもいつからか、妹だと思えなくなった。
自分のものになって欲しいと思った。
リュカに取られたくなかった。
「良いんじゃない?アザール家にとってすごく良い条件の子だと思うよ」
父さんにはそう言っておいて、影でこそこそ手を回した。
紅花の気持ちを利用した。
彼女は俺が好きだから、俺の好みに合わせるために見た目は絶対に変える。
わざと、『染めてみたら?』『最近は、髪色の明るい子が素敵だと思うな』なんて言った。
本当は、紅花の黒髪がとても好きだったけど、リュカの好みと合わないように変えさせた。
リュカは昔から、髪色が暗めのロングヘアーが好きだったから。
だけどリュカと紅花は気が合ったようで、正式に婚約しても良いと言い始めた。
リュカを傷付けたあの日から、自分が最低な人間だと分かっている。
せめて彼女のことは傷付ける前に離れよう。
そう思った─────
٭❀*
「紅花、大丈夫か!?」
なのにどうして俺は、息を切らして彼女の所へ来てしまったんだ。
ルーベルに来るのは数年ぶりだったけれど保健室の場所は案内されるまでもない。
校門の前に迎えに来てくれたノアを追い越して走って来てしまった。
「「サシャさん!」」
紅花とアイが同時に言った。
俺は呼吸を整えてからベッドに向かった。
紅花の目が赤い。
泣いたのだろうか。
「体調は戻ったのか?」
俺が聞いても、紅花は答えなかった。
腫れた目元を隠すように俯く。
代わりに、ベッド脇の椅子に座っているアイが「良くなったと思います」と答えてくれた。
紅花に会うのは久しぶりだ。
俺が、会うのを躊躇っていたから。
紅花はきっと急避けられたと思って怒っている。
「あの」
アイは立ち上がりながら言った。
「私、ノアに用事があるのでちょっと出ます。サシャさん、ゆっくりして行ってくださいね」
アイはそう言ってさっさと出てしまった。
紅花と2人きりになって、保健室は静まった。
彼女の数ヶ月前まで黒かった髪は、夏家独特のピンクがかったブロンドとほぼ同じ色になっている。
見るのはこれで数回目だけれど、全然慣れない。
染めたらどうだと提案しておいて何だが、黒の方が紅花の白い肌が際立って良かった。
自分は本当に最低な人間だとつくづく思う。
「勝手に来てごめん」
俺はやっと声を発した。
「……どうして、来てくれたんですか?」
「そりゃ、紅花が倒れたって聞いたからだよ。帰りは送って行くから」
俺はベッドの横の椅子に座って、紅花に「立てるか?」と聞いた。
怪我人を送るだけ、それだけなら傍にいても許されるよな。
「……どうしてですか?」
紅花は低いトーンで言った。
何の話だ?
俺が眉をひそめて彼女を見ると、今日初めて目が合った。
「あたしのこと避けてたのに、どうして優しくするんですか?」
紅花は唇を噛んだ。
きっと泣くのを我慢しているのだろう。
俺はこの顔に、昔から弱い。
でも。
「避けてる?そんな訳ないよ」
俺は逃げた。
余裕があるフリをして笑った。
「そろそろ帰ろうか、顔色も結構良いし」
「………あたしは、避けられて悲しかったです。サシャさんのことが……好」
紅花が何か言いかけたのを止めるように、俺は頭を撫でた。
「避けてたらここに来ないだろ?カバン持って来るから、ちょっと待ってて」
そう言って、逃げるように保健室を出た。
紅花が何を言おうとしたか分かった。
だから止めた。
お願いだから、やめてくれ。
そんなこと俺に言っちゃダメだ。
君にはリュカがいる。
紅花とリュカが婚約すれば、俺は何の後ろめたさもなく君と会える。
君の、義兄として。
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