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第2章
矛盾 (sideリュカ)
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sideリュカ
「アイに、一華の時の記憶を取り戻させないでくれ」
アイが一華だと確信が持てたら、俺の家に呼ぼうと思っていた。
それから、昔よく行ったケーキ屋にも行って、フルーツタルトを食べようと思った。
海にも連れて行こう、旅行もしよう。
俺の好きだった一華がどんな人間か、どんな関係だったか。
ゆっくり、話をしよう。
そう、思っていた。
「………意味が分からねぇ。思い出させるな?本気で言ってるのか」
怒りが湧いた。
俺の知らない間に「親戚」という名前で一華に近付いて、一華を愛想笑いの上手な可愛い女の子に変えておいて。
「俺がどれだけ、一華を探したと思ってんだよ………?」
「…ごめん。でも、話を聞いて欲しい」
٭❀*
それからの事は、まだ理解しきっていない。
正確に言うと、理解したくないのかもしれない。
ノアはカフェテリアから出て行き、俺とアレクはぼんやりしたままソファに座っていた。
一華の親族は【オニノヤガラ病】になったあいつの父親に殺されていた。
そのショックで一華は記憶喪失になり、「皆毒殺された」という記憶に塗り替えられた。
『もしも今アイが記憶を取り戻したら、今度こそ心が壊れてしまうかもしれない』
ノアの台詞を思い出した。
『だからお願いだ。アイには、一華に関する話は一切しないで欲しい』
そう言って、ノアは頭を下げた。
俺は、全然知らなかった。
一華の家族は親戚の誕生日パーティの最中に毒を仕込まれて全員殺られたと聞いていた。
それは一華の記憶が操作されてたのか。
それでも相当ショックだろう。
アイは人形みたいに表情を持たない奴だったから。
もし実の父が殺したと知ったら、どうなってしまうんだろう。
「アレク」
「何?暴走して変な事しないようにね」
「……少し、1人になりたい」
俺はそれだけ言って、カフェテリアから出た。
外の空気を吸いたかった。
ノアは、俺たちを信頼して打ち明けたのか。
アイのことも考えて。
でも。
でも、俺は。
一華が俺の事を思い出さないなんて耐えられない。
だって、やっと見つけたんだ。
「くそ…………」
俺は木陰にしゃがみ込んだ。
ダメと言われても、アイを見たら言ってしまうかもしれない。
「お前は城島一華だ」「一華の事をずっと探してた」って。
俺が頭を抱えていると、上から声が降ってきた。
「リュカくん?」
今1番会いたくない、会っちゃいけない人物の声。
「あ、やっぱりリュカくんだ。もしかして具合悪い?こんな所で何してるの」
青みがかった黒髪が、風に揺れている。
同じ色の瞳が、俺を見ている。
昔と何も変わらないはずなのに、纏っている雰囲気が違う。
優しげで、柔らかくて、どこかノアに似ている。
ああ、そうか。
アイがこうなったのは、ノアのお陰か。
記憶を失って、家族もいなくて、それを助けたのがノアだ。
一華を助けたのは俺だけど、アイを助けたのはノアなのか。
「具合…………は、良い」
「じゃあどうしてしゃがんでるの?」
アイは俺と同じ体勢になって、視線を合わせてきた。
一華。
と、言ってしまいそうになった。
「……なんでもねぇよ」
「何かあるでしょ、その態度。もしかして私何かした?実技テストの時も『気持ち悪い』って言ってたし」
それはアイに向けて言った言葉じゃない。
俺の気持ちが謎にモヤモヤしてたから気持ち悪かったんだ。
この女はいっつも勘違いするよな。
一周回って自意識過剰なんじゃねぇか?
「お前に言ったんじゃねぇし」
「え、そうだったの。分かりにく…」
「お前の解釈能力が乏しいんだよ」
「いやいや、リュカくんが言葉足らず過ぎるんだよ。もっと沢山話して、あと、もっと笑顔で!」
言葉足らず…?
笑顔で…?
俺はクラスの女の子はもちろん、パーティで出会う女の子にだっていつも話題を提供し、笑顔を振りまいてるぞ?
「ほら、笑顔笑顔」
アイはそう言って自分の口角を指で上げてみせた。
その仕草は初めて見た。
なんか、
「………かわ」
俺の口からそんな言葉が零れ落ちた。
………あっぶな。
間違っても「可愛い」なんて言う訳にはいかない。
「かわ……靴に汚れついてんぞ」
俺はしゃがんでいるのを良い事に、アイの一切汚れの無い革靴を拭った振りをした。
「ありがとう」
………………………………。
俺は、どうかしてしまったのだろうか。
さっきから、内臓が膨張した感覚がする。
気持ち悪いはずなのに心地良い。
1人になりたいのにこいつと居たい。
ムカつくのに可愛い。
思い出して欲しいのに思い出して欲しくない。
両立するはずの無い感情たちが、俺を支配していた。
「アイに、一華の時の記憶を取り戻させないでくれ」
アイが一華だと確信が持てたら、俺の家に呼ぼうと思っていた。
それから、昔よく行ったケーキ屋にも行って、フルーツタルトを食べようと思った。
海にも連れて行こう、旅行もしよう。
俺の好きだった一華がどんな人間か、どんな関係だったか。
ゆっくり、話をしよう。
そう、思っていた。
「………意味が分からねぇ。思い出させるな?本気で言ってるのか」
怒りが湧いた。
俺の知らない間に「親戚」という名前で一華に近付いて、一華を愛想笑いの上手な可愛い女の子に変えておいて。
「俺がどれだけ、一華を探したと思ってんだよ………?」
「…ごめん。でも、話を聞いて欲しい」
٭❀*
それからの事は、まだ理解しきっていない。
正確に言うと、理解したくないのかもしれない。
ノアはカフェテリアから出て行き、俺とアレクはぼんやりしたままソファに座っていた。
一華の親族は【オニノヤガラ病】になったあいつの父親に殺されていた。
そのショックで一華は記憶喪失になり、「皆毒殺された」という記憶に塗り替えられた。
『もしも今アイが記憶を取り戻したら、今度こそ心が壊れてしまうかもしれない』
ノアの台詞を思い出した。
『だからお願いだ。アイには、一華に関する話は一切しないで欲しい』
そう言って、ノアは頭を下げた。
俺は、全然知らなかった。
一華の家族は親戚の誕生日パーティの最中に毒を仕込まれて全員殺られたと聞いていた。
それは一華の記憶が操作されてたのか。
それでも相当ショックだろう。
アイは人形みたいに表情を持たない奴だったから。
もし実の父が殺したと知ったら、どうなってしまうんだろう。
「アレク」
「何?暴走して変な事しないようにね」
「……少し、1人になりたい」
俺はそれだけ言って、カフェテリアから出た。
外の空気を吸いたかった。
ノアは、俺たちを信頼して打ち明けたのか。
アイのことも考えて。
でも。
でも、俺は。
一華が俺の事を思い出さないなんて耐えられない。
だって、やっと見つけたんだ。
「くそ…………」
俺は木陰にしゃがみ込んだ。
ダメと言われても、アイを見たら言ってしまうかもしれない。
「お前は城島一華だ」「一華の事をずっと探してた」って。
俺が頭を抱えていると、上から声が降ってきた。
「リュカくん?」
今1番会いたくない、会っちゃいけない人物の声。
「あ、やっぱりリュカくんだ。もしかして具合悪い?こんな所で何してるの」
青みがかった黒髪が、風に揺れている。
同じ色の瞳が、俺を見ている。
昔と何も変わらないはずなのに、纏っている雰囲気が違う。
優しげで、柔らかくて、どこかノアに似ている。
ああ、そうか。
アイがこうなったのは、ノアのお陰か。
記憶を失って、家族もいなくて、それを助けたのがノアだ。
一華を助けたのは俺だけど、アイを助けたのはノアなのか。
「具合…………は、良い」
「じゃあどうしてしゃがんでるの?」
アイは俺と同じ体勢になって、視線を合わせてきた。
一華。
と、言ってしまいそうになった。
「……なんでもねぇよ」
「何かあるでしょ、その態度。もしかして私何かした?実技テストの時も『気持ち悪い』って言ってたし」
それはアイに向けて言った言葉じゃない。
俺の気持ちが謎にモヤモヤしてたから気持ち悪かったんだ。
この女はいっつも勘違いするよな。
一周回って自意識過剰なんじゃねぇか?
「お前に言ったんじゃねぇし」
「え、そうだったの。分かりにく…」
「お前の解釈能力が乏しいんだよ」
「いやいや、リュカくんが言葉足らず過ぎるんだよ。もっと沢山話して、あと、もっと笑顔で!」
言葉足らず…?
笑顔で…?
俺はクラスの女の子はもちろん、パーティで出会う女の子にだっていつも話題を提供し、笑顔を振りまいてるぞ?
「ほら、笑顔笑顔」
アイはそう言って自分の口角を指で上げてみせた。
その仕草は初めて見た。
なんか、
「………かわ」
俺の口からそんな言葉が零れ落ちた。
………あっぶな。
間違っても「可愛い」なんて言う訳にはいかない。
「かわ……靴に汚れついてんぞ」
俺はしゃがんでいるのを良い事に、アイの一切汚れの無い革靴を拭った振りをした。
「ありがとう」
………………………………。
俺は、どうかしてしまったのだろうか。
さっきから、内臓が膨張した感覚がする。
気持ち悪いはずなのに心地良い。
1人になりたいのにこいつと居たい。
ムカつくのに可愛い。
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両立するはずの無い感情たちが、俺を支配していた。
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