2 / 8
第2話 最適化デート、初回は失敗する仕様です
しおりを挟む
花祭まで、あと数日。
花の王都リリシアは、朝から晩まで浮き足立っていた。
けれど、フロレアル家の執務室だけは、ある意味いつも通り――いや、いつも以上に張りつめていた。
「参事官、それはもう、戦時中の行軍表では」
机に肘をつきながら、カミーユが呆れた声を漏らす。
ローランの前には、一枚の紙が広げられていた。
横軸には時間、縦軸には場所とイベント。びっしりと書き込まれた文字列の上に、赤と青の線が緻密な軌道を描いている。
ページ上部には、やはり太字でこう記されていた。
《本日行程:花通り散策デート・最適化案》
「行軍表ではない。デートだ」
「デートに『移動時間は平均歩幅×歩数で算出』『人混み率予測』『休憩ポイント候補A~C』は必要でしょうか」
「必要だ。彼女を不要に疲れさせるわけにはいかん」
ローランは真顔だった。
デートで重要なのは、雰囲気と感情の流れ――らしい。
それは本を読んで知っている。実際、彼は恋愛指南書をこっそり数冊、読み込んでいる。
だが、どれも「自然体で」「ありのままの自分で」という、彼にとってもっとも頼りにならない助言を推奨してくるのだ。
策士の「自然体」とは、すなわち「過度な観察と分析と調整」である。
それを丸出しにするわけにはいかない。
ゆえに――一度、紙の上で全部出しておく必要があるのだ。
「……何度でも言いますが、参事官」
カミーユは、紙の一部を指でトントンと叩いた。
「この『手をつなぐ/つながない』の分岐表は、完全にやりすぎです」
「リスク管理だ」
「“つなぐ→彼女が驚く→手を離す→気まずい”“つながない→後悔する→今夜眠れない”って、参事官のメンタルの分岐ですよね」
図の端には、“最悪ケース:雨天+人混み+親族出現”という文字が見える。
その下には、小さく「※本日はそこまで悪い乱数は出ない、と信じたい」と書き足されていた。
「……俺だって、何もかも計画で縛りたいわけではない」
「でしたら、せめて“びっしりの計画書を持っている”ことがバレないようにしてください」
カミーユの正論に、ローランは小さく咳払いをした。
「今日は『自然体ふう』だ。昨日、彼女にもそう宣言してしまったからな」
「自然体“ふう”って言っている時点で、もう自然ではない気がしますが……まあ、いいです。
とにかく、その紙は内ポケットの奥にしまっておいてください。途中で落とさないように」
「昨日は、手帳は落としていない」
「スケジュール表を落としていました」
「……それは、忘れていい」
ローランは、紙を丁寧に三つ折りにすると、ジャケットの内側に滑り込ませた。
自然体、という概念は、彼にとって理解しづらい。
だが、リリアンヌが「自然体のローラン様も、きっと素敵です」と微笑んだあの場面を思い出すと――試してみようという気持ちにも、少しだけなるのだった。
***
花通りは、今日も花で溢れていた。
花屋の店先には、色とりどりの花束が山積みになり、道の両側には仮設の屋台が並んでいる。
花冠、押し花の栞、花の香水、花を模した菓子。視界のどこを向いても「花」だらけだ。
「ローラン様!」
花通りの入口で、リリアンヌが手を振っていた。
今日は淡い空色のドレスに、白いリボンの帽子。
胸元には、小さな花形のブローチが揺れている。
「……似合っている」
思わず本音がこぼれた。
自分でも驚いて、少しだけ目を瞬く。
「え?」
「……空と、道の色と、よく合っている」
慌てて補足を付け足す。
彼には珍しく「可愛い」などという言葉が出てこなかったが、リリアンヌは嬉しそうに頬を染めた。
「ありがとうございます。
花通りを歩くと聞いて、空色ならどんなお花とも喧嘩しないかなと思って。……最適化、してみました」
最後の一言に、ローランの口元がわずかに緩む。
「君が使うと、その言葉も柔らかく聞こえるな」
「そうでしょうか?」
「ああ。……行こうか」
並んで歩き出す。
人の流れをさりげなく観察しながら、ローランは紙に書いた行程を頭の片隅でなぞった。
――花市場のミニ屋台を冷やかす。
――中ほどの広場で、休憩を兼ねて軽食。
――最後に、花カフェで甘いもの。
その間に、「さりげない歩幅合わせ」「荷物を持つ」「日陰側への誘導」など、細かい気遣いポイントが散りばめられている。
「わぁ、見てください。あの花瓶、小さな家みたいです」
リリアンヌが、屋台のひとつに駆け寄る。
花瓶の口が家の屋根の形になっていて、煙突からは、細い蔓植物がひょろりと伸びていた。
「家から花が咲いているみたいで、かわいい……」
「君の部屋に置くのも悪くないな。窓辺に」
「いいのでしょうか?」
「花祭の記念くらい、構わない」
屋台の親父が、にやりと笑う。
「お二人さん、仲睦まじいことで」
「ち、違――」
「仲睦まじい、ですか?」
ローランが否定しきる前に、リリアンヌが純粋な顔で首をかしげる。
「そう見えますか? でしたら、善き最適化ができているのかもしれません」
「……善き最適化」
「はい。ローラン様の“段取り”のおかげで、わたし、あまり困らないでいられますから」
屋台の親父が「ほらな」と言いたげな目でローランを見た。
「お嬢さんも幸せそうだし、いい男捕まえたな」
「いえ、捕まえていただいたのは、わたしのほうで……」
どちらも完全に真面目なので、ローランだけが内心で盛大に狼狽えている。
――まずい。デート序盤から、精神的負荷が予定値を超えている。
買い物を済ませると、ローランはさりげなく花瓶の包みを持った。
「それは俺が持つ。重さの配分を考えれば――」
「ありがとうございます。
ローラン様は、本当に何でも最適化なさるのですね。重さまで」
「……職業病だ」
言うと、リリアンヌはふんわりと笑った。
「わたし、自分ではあまり考えられないので、助かっています。
でも、ローラン様が疲れてしまわないか、すこし心配です」
心配されてしまった。
“彼女に余計な心配をかけない”は、本日の目標のひとつだった。
それなのに、どうも彼のやることなすことが、全部「過剰に気を遣っている人」に見えているらしい。
――落ち着け。ここから挽回すればいい。
「疲れてはいない。計画を立てるのは、むしろ楽だ」
「楽なのですか?」
「ああ。何も決まっていないほうが、苦手だ」
「……そういうものなのですね。
わたしは、逆かもしれません。何も決まっていないほうが、気が楽で」
「それは、なぜだ?」
「決めてしまったら、間違えてはいけない気がして。
でも、何も決まっていないなら、間違えても、ただの寄り道かなって思えるので」
ローランは、一瞬だけ言葉を失った。
間違えてはいけない、という感覚は、彼にもよくわかる。
むしろ、その恐怖心があるからこそ、計画を何重にも重ねてきた。
「……君は、間違えたいのか?」
「いえ、できれば……間違えたくないです。
でも、どうしても、間違えてしまう気がして。おっとりしていますから」
自嘲気味に笑うその横顔に、ローランは少しだけ眉をひそめた。
「君のおっとりは、間違いではない」
「え?」
「むしろ、周囲の速度を落として、全体の安全を確保している」
「安全……?」
「速すぎる流れは、事故のもとだ。
君がいることで、歩幅を合わせようとする人間が増える。……統計を取れば、きっとそうだ」
完全に職務目線だったが、ローランなりの最大級の賛辞でもあった。
リリアンヌは一瞬ぽかんとしてから、ふわっと笑った。
「ローラン様の仰ることは、難しいのに、やさしいです」
「難しいのか、やさしいのか、どちらだ」
「両方です。
おっとりしているわたしのことを、『遅い』とか『邪魔』とか言う人もいるので……。
安全って言っていただけると、少し胸が楽になります」
その言葉に、ローランの胸がじん、と熱くなった。
――やはり、間違いなく守らねばならない。
彼は、紙に書いていた「歩幅合わせ」の項目に、自分の中でチェックマークをつけた。
予定していた以上に、今日は彼女の歩幅に意識を合わせよう、と。
***
花通りの中ほどにある小さな広場で、一休みすることにした。
ベンチに腰掛けると、すぐそばの屋台から、甘い香りが漂ってくる。
花型の焼き菓子と、花蜜を薄めたジュース。
露店の少年が、声を張り上げていた。
「ローラン様、あれ……!」
リリアンヌの視線は、完全に菓子にロックオンされていた。
「行くか?」
「よろしいのでしょうか?」
「糖分の補給は、疲労回復に有効だ」
ローランの返答は、どうあっても色気よりも実利寄りになる。
屋台で菓子を二つ選び、ジュースもふたつ。
ローランは手際よく支払いをすませ、リリアンヌに一つずつ手渡した。
「ありがとうございます。
このお花、形はバラなのに、味はレモンなのですね。ちょっと不思議」
「見た目と中身が違うのは、よくあることだ」
「ローラン様も、そうですか?」
「……どういう意味だ」
「見た目はとてもきちんとしていらっしゃるのに、内側は、作戦や保険でいっぱいなんでしょう?」
図星を刺されて、ローランはジュースをむせかけた。
「なぜそう思う」
「なんとなく、です。
この前も、花時計のときも、きっとたくさん考えて、言葉を選んでくださったんだろうなって感じたので」
彼女の直感は、たまに鋭すぎる。
ローランは、手にした菓子を見つめた。
バラの形をしているのに、レモンの香りがする。
自分も、外側からは「冷静な策士」としてしか見られていないが、中身は想像以上に小心者である。
「……考えすぎるのは、悪い癖だ」
「わたしは、好きです」
リリアンヌは、迷いなく言った。
「考えすぎてしまう人は、きっと、誰かを傷つけたくないのだろうなって。
ローラン様の計画は、いつも、誰かが楽に息ができるようになっている気がします」
胸の奥が、じわりと温かくなる。
彼の計画は、しばしば「やりすぎ」と言われる。
けれど、彼にとっては、それが「安心を売る仕事」でもあった。
自分の安心も、相手の安心も、できるだけ確保しておきたい。
「……君は、よく見ているな」
「そうでしょうか? ぼんやりしているってよく言われます」
「ぼんやりしている人間は、そんなふうには言えない」
「では、ふんわり、でしょうか」
「……そうだな。ふんわり、は合っている」
お互いに笑い合ったところで、広場に時計の鐘が鳴り響いた。
そろそろ、最後の目的地――花カフェへ向かう時間だ。
***
花通りのはずれに、小さなカフェがある。
店内には、天井から下げられたドライフラワーと、壁一面の蔦。
窓際の席からは、通りを行き交う人と花がよく見える。
「わぁ……。ここ、秘密基地みたいです」
リリアンヌが目を輝かせる。
「ここの花蜜ティーは、評判がいい」
「ローラン様、よくご存じなのですね」
「花祭の協賛店だ。資料で見ただけだ」
本当は、過去に視察兼ねて一度来たことがある。
だが、「ひとりで下見しておいた」と告げるのは、さすがに恥ずかしかった。
窓際の席に腰を下ろすと、店員が花型のメニューを持ってきた。
「おすすめは、季節の花蜜ティーと、花びらクッキーの盛り合わせになります」
「花びらクッキー……!」
リリアンヌが食いつくのを横目に見ながら、ローランはメニューを一瞥した。
「では、それを二人分」
「はい、かしこまりました」
注文を終え、ふと窓の外を見ると、通りの花飾りが風に揺れている。
リリアンヌは、それを嬉しそうに眺めていた。
「……こうして、ゆっくり座るのは、久しぶりです」
「忙しかったか」
「はい。花祭前は、家のほうも、お客様が増えますから。
でも、忙しいのは嫌いではありません。たくさんの方が、楽しみにしてくださっている証拠ですから」
彼女の言葉には、少しだけ誇らしさが滲んでいた。
「だからこそ、今日みたいな時間が、とても贅沢に感じます。
ローラン様は、こういう時間も、お好きですか?」
唐突に向けられた問いに、ローランは一瞬答えに詰まった。
好きか、と聞かれて、即座に「好きだ」と言うのは、彼の性格上難しい。
けれど。
「……嫌いではない」
それは、彼にしてはかなり素直なほうの言葉だった。
「嫌いではない、ですか?」
「ああ。……いや、その。
君が、嬉しそうだから、悪くないと思う」
正面から出てきた本音に、リリアンヌの頬がぱあっと明るくなる。
「わたしが嬉しそうだから、ですか?」
「……あまり、繰り返すな」
「ふふ。なんだか、胸のあたりが、あたたかくなりました」
彼女が胸に手を当てて微笑むのを見て、ローランの胸も同じように温かくなる。
その瞬間だけは、彼の頭の中の行程表は、完全に真っ白になっていた。
花蜜ティーとクッキーが運ばれてきて、柔らかな甘い香りが漂う。
窓辺の席に差し込む午後の光の中で、二人はしばらく、ほんのささやかな他愛ない話を続けた。
家族のこと。好きな花のこと。
リリアンヌが、レースとリボンに目がないこと。
ローランが、意外と辛いものが苦手なこと。
笑い合ううちに、時間はあっという間に過ぎていった。
***
カフェを出る頃には、空は少しだけ茜色に染まり始めていた。
「今日は、本当に楽しかったです。
ローラン様が、こんなふうにご一緒してくださるなんて、思っていなかったので」
「……それは、どういう意味だ」
「いつもお仕事でお忙しそうでしたから。
わたし、お役に立てるように頑張らなきゃと思っていて、その……“お邪魔”にならないようにと」
お邪魔。
その言葉に、ローランは眉を寄せた。
「君が邪魔だったことなど、一度もない」
「そう、でしょうか?」
「ああ。むしろ――」
……むしろ、君がいることで、自分の仕事の意味が、少しだけ違って見える。
そう言えたら、どれほど簡単だろう。
喉まで出かかった言葉は、やはり「プライド」と「照れ」と「慣れていない」の三重結界に阻まれて、別の形に変わる。
「むしろ、君が楽しそうにしているのを見ると、計画を立てた甲斐があったと思う」
「計画を……」
「今日は、その……自然体、を目指したつもりだが」
最後のあたりは、半分以上小声だった。
「自然体、でしたか?」
「……不満か」
「いえ、とても素敵でした。
でも、少しだけ、いつもより、『よく考えていらっしゃるのだろうな』という感じはしました」
「それは自然体とは言わないな」
「ふふ。ローラン様の自然体は、『よく考えていらっしゃる』状態なのだと思います」
リリアンヌは、ふわりと笑った。
「わたし、今日、ひとつだけわかったことがあるんです」
「何だ?」
「ローラン様は、誰かのために考えるのが、お好きなのですね」
ローランは一瞬、言葉を失った。
それは、彼が自分自身に対してさえ、なかなか認められなかったことだ。
「好きだからやっている」と言ってしまうと、途端に照れくさくなる。
だからいつも、「職務だから」「必要だから」と言い換えてきた。
「……そう、かもしれない」
それでも、今日はなぜか、否定する気になれなかった。
「君がそう言うなら、そういうことにしておこう」
「はい。
では、これからも、わたしのことも、たくさん考えていただけますか?」
無邪気なお願いに、ローランの心臓が派手に跳ねた。
「……それは、もう、すでに」
「すでに?」
「いや。なんでもない」
どうしても、あと一歩が出てこない。
その“あと一歩”を出せない自分を、内心で少しだけ情けなく思いながらも――どこかで、ぎりぎりに立っているこの感覚を、嫌いになりきれない自分もいる。
別れ際、リリアンヌがふと振り返った。
「ローラン様」
「何だ」
「もし、また……今日みたいな最適化デートがありましたら」
「……最適化デート」
「はい。
そのときは、わたしも、少しだけ、ローラン様の“自然体”をお手伝いしてもいいですか?」
「どうやってだ」
「たとえば――」
リリアンヌは、少しだけ距離を詰めて、そっと彼の歩幅に自分の歩幅を合わせた。
「こうして、一緒に歩いてみるとか」
ローランは、数秒遅れてから、その意味を理解した。
心臓が大きく跳ねる。
うまく息ができない。
「……それは、かなり、有効な手法だ」
「ふふ。では、また今度も、試してみましょうね」
そう言って微笑む彼女を見ていると、「自然体」がなんであるか、ほんの少しだけわかったような気がした。
***
その夜。
ローランは、机の上に広げた紙を見つめていた。
《本日行程:花通り散策デート・最適化案》
びっしりと書き込まれた行程表の端には、新たなメモが書き足されている。
――結果:
計画通りに進行した部分もあるが、予定外の会話・行動が多発。
しかし、予期せぬ瞬間に、彼女の笑顔と本音を引き出せた。
――評価:
成功率70%。
「自然体ふう」の導入としては、及第点。
――今後の課題:
言葉の選択において、「職務的説明」と「感情的本音」のバランス調整が必要。
さらに、ひとつの項目が追加される。
――新規作戦候補:
・人混み時の庇い動作を用いた距離調整。
台詞案:「覚悟しておけ」。
※ただし、命の話に誤解されるリスクあり。言い換えパターン要検討。
ローランは、その一文に印をつけると、ペンを置いた。
「……覚悟しておけ、か」
窓の外では、花祭を待つ花々が、静かに夜風に揺れている。
次に彼がその言葉を口にするとき、
それが「命」の話ではなく、もっと別の何かの覚悟を促すものになるとは――
この時点の彼は、まだ知らない。
ただひとつだけ確かなのは。
すでに彼の心の中では、「リリアンヌのとなりを考える時間」が、日々のどんな案件よりも大きな割合を占め始めている――という事実だった。
花の王都リリシアは、朝から晩まで浮き足立っていた。
けれど、フロレアル家の執務室だけは、ある意味いつも通り――いや、いつも以上に張りつめていた。
「参事官、それはもう、戦時中の行軍表では」
机に肘をつきながら、カミーユが呆れた声を漏らす。
ローランの前には、一枚の紙が広げられていた。
横軸には時間、縦軸には場所とイベント。びっしりと書き込まれた文字列の上に、赤と青の線が緻密な軌道を描いている。
ページ上部には、やはり太字でこう記されていた。
《本日行程:花通り散策デート・最適化案》
「行軍表ではない。デートだ」
「デートに『移動時間は平均歩幅×歩数で算出』『人混み率予測』『休憩ポイント候補A~C』は必要でしょうか」
「必要だ。彼女を不要に疲れさせるわけにはいかん」
ローランは真顔だった。
デートで重要なのは、雰囲気と感情の流れ――らしい。
それは本を読んで知っている。実際、彼は恋愛指南書をこっそり数冊、読み込んでいる。
だが、どれも「自然体で」「ありのままの自分で」という、彼にとってもっとも頼りにならない助言を推奨してくるのだ。
策士の「自然体」とは、すなわち「過度な観察と分析と調整」である。
それを丸出しにするわけにはいかない。
ゆえに――一度、紙の上で全部出しておく必要があるのだ。
「……何度でも言いますが、参事官」
カミーユは、紙の一部を指でトントンと叩いた。
「この『手をつなぐ/つながない』の分岐表は、完全にやりすぎです」
「リスク管理だ」
「“つなぐ→彼女が驚く→手を離す→気まずい”“つながない→後悔する→今夜眠れない”って、参事官のメンタルの分岐ですよね」
図の端には、“最悪ケース:雨天+人混み+親族出現”という文字が見える。
その下には、小さく「※本日はそこまで悪い乱数は出ない、と信じたい」と書き足されていた。
「……俺だって、何もかも計画で縛りたいわけではない」
「でしたら、せめて“びっしりの計画書を持っている”ことがバレないようにしてください」
カミーユの正論に、ローランは小さく咳払いをした。
「今日は『自然体ふう』だ。昨日、彼女にもそう宣言してしまったからな」
「自然体“ふう”って言っている時点で、もう自然ではない気がしますが……まあ、いいです。
とにかく、その紙は内ポケットの奥にしまっておいてください。途中で落とさないように」
「昨日は、手帳は落としていない」
「スケジュール表を落としていました」
「……それは、忘れていい」
ローランは、紙を丁寧に三つ折りにすると、ジャケットの内側に滑り込ませた。
自然体、という概念は、彼にとって理解しづらい。
だが、リリアンヌが「自然体のローラン様も、きっと素敵です」と微笑んだあの場面を思い出すと――試してみようという気持ちにも、少しだけなるのだった。
***
花通りは、今日も花で溢れていた。
花屋の店先には、色とりどりの花束が山積みになり、道の両側には仮設の屋台が並んでいる。
花冠、押し花の栞、花の香水、花を模した菓子。視界のどこを向いても「花」だらけだ。
「ローラン様!」
花通りの入口で、リリアンヌが手を振っていた。
今日は淡い空色のドレスに、白いリボンの帽子。
胸元には、小さな花形のブローチが揺れている。
「……似合っている」
思わず本音がこぼれた。
自分でも驚いて、少しだけ目を瞬く。
「え?」
「……空と、道の色と、よく合っている」
慌てて補足を付け足す。
彼には珍しく「可愛い」などという言葉が出てこなかったが、リリアンヌは嬉しそうに頬を染めた。
「ありがとうございます。
花通りを歩くと聞いて、空色ならどんなお花とも喧嘩しないかなと思って。……最適化、してみました」
最後の一言に、ローランの口元がわずかに緩む。
「君が使うと、その言葉も柔らかく聞こえるな」
「そうでしょうか?」
「ああ。……行こうか」
並んで歩き出す。
人の流れをさりげなく観察しながら、ローランは紙に書いた行程を頭の片隅でなぞった。
――花市場のミニ屋台を冷やかす。
――中ほどの広場で、休憩を兼ねて軽食。
――最後に、花カフェで甘いもの。
その間に、「さりげない歩幅合わせ」「荷物を持つ」「日陰側への誘導」など、細かい気遣いポイントが散りばめられている。
「わぁ、見てください。あの花瓶、小さな家みたいです」
リリアンヌが、屋台のひとつに駆け寄る。
花瓶の口が家の屋根の形になっていて、煙突からは、細い蔓植物がひょろりと伸びていた。
「家から花が咲いているみたいで、かわいい……」
「君の部屋に置くのも悪くないな。窓辺に」
「いいのでしょうか?」
「花祭の記念くらい、構わない」
屋台の親父が、にやりと笑う。
「お二人さん、仲睦まじいことで」
「ち、違――」
「仲睦まじい、ですか?」
ローランが否定しきる前に、リリアンヌが純粋な顔で首をかしげる。
「そう見えますか? でしたら、善き最適化ができているのかもしれません」
「……善き最適化」
「はい。ローラン様の“段取り”のおかげで、わたし、あまり困らないでいられますから」
屋台の親父が「ほらな」と言いたげな目でローランを見た。
「お嬢さんも幸せそうだし、いい男捕まえたな」
「いえ、捕まえていただいたのは、わたしのほうで……」
どちらも完全に真面目なので、ローランだけが内心で盛大に狼狽えている。
――まずい。デート序盤から、精神的負荷が予定値を超えている。
買い物を済ませると、ローランはさりげなく花瓶の包みを持った。
「それは俺が持つ。重さの配分を考えれば――」
「ありがとうございます。
ローラン様は、本当に何でも最適化なさるのですね。重さまで」
「……職業病だ」
言うと、リリアンヌはふんわりと笑った。
「わたし、自分ではあまり考えられないので、助かっています。
でも、ローラン様が疲れてしまわないか、すこし心配です」
心配されてしまった。
“彼女に余計な心配をかけない”は、本日の目標のひとつだった。
それなのに、どうも彼のやることなすことが、全部「過剰に気を遣っている人」に見えているらしい。
――落ち着け。ここから挽回すればいい。
「疲れてはいない。計画を立てるのは、むしろ楽だ」
「楽なのですか?」
「ああ。何も決まっていないほうが、苦手だ」
「……そういうものなのですね。
わたしは、逆かもしれません。何も決まっていないほうが、気が楽で」
「それは、なぜだ?」
「決めてしまったら、間違えてはいけない気がして。
でも、何も決まっていないなら、間違えても、ただの寄り道かなって思えるので」
ローランは、一瞬だけ言葉を失った。
間違えてはいけない、という感覚は、彼にもよくわかる。
むしろ、その恐怖心があるからこそ、計画を何重にも重ねてきた。
「……君は、間違えたいのか?」
「いえ、できれば……間違えたくないです。
でも、どうしても、間違えてしまう気がして。おっとりしていますから」
自嘲気味に笑うその横顔に、ローランは少しだけ眉をひそめた。
「君のおっとりは、間違いではない」
「え?」
「むしろ、周囲の速度を落として、全体の安全を確保している」
「安全……?」
「速すぎる流れは、事故のもとだ。
君がいることで、歩幅を合わせようとする人間が増える。……統計を取れば、きっとそうだ」
完全に職務目線だったが、ローランなりの最大級の賛辞でもあった。
リリアンヌは一瞬ぽかんとしてから、ふわっと笑った。
「ローラン様の仰ることは、難しいのに、やさしいです」
「難しいのか、やさしいのか、どちらだ」
「両方です。
おっとりしているわたしのことを、『遅い』とか『邪魔』とか言う人もいるので……。
安全って言っていただけると、少し胸が楽になります」
その言葉に、ローランの胸がじん、と熱くなった。
――やはり、間違いなく守らねばならない。
彼は、紙に書いていた「歩幅合わせ」の項目に、自分の中でチェックマークをつけた。
予定していた以上に、今日は彼女の歩幅に意識を合わせよう、と。
***
花通りの中ほどにある小さな広場で、一休みすることにした。
ベンチに腰掛けると、すぐそばの屋台から、甘い香りが漂ってくる。
花型の焼き菓子と、花蜜を薄めたジュース。
露店の少年が、声を張り上げていた。
「ローラン様、あれ……!」
リリアンヌの視線は、完全に菓子にロックオンされていた。
「行くか?」
「よろしいのでしょうか?」
「糖分の補給は、疲労回復に有効だ」
ローランの返答は、どうあっても色気よりも実利寄りになる。
屋台で菓子を二つ選び、ジュースもふたつ。
ローランは手際よく支払いをすませ、リリアンヌに一つずつ手渡した。
「ありがとうございます。
このお花、形はバラなのに、味はレモンなのですね。ちょっと不思議」
「見た目と中身が違うのは、よくあることだ」
「ローラン様も、そうですか?」
「……どういう意味だ」
「見た目はとてもきちんとしていらっしゃるのに、内側は、作戦や保険でいっぱいなんでしょう?」
図星を刺されて、ローランはジュースをむせかけた。
「なぜそう思う」
「なんとなく、です。
この前も、花時計のときも、きっとたくさん考えて、言葉を選んでくださったんだろうなって感じたので」
彼女の直感は、たまに鋭すぎる。
ローランは、手にした菓子を見つめた。
バラの形をしているのに、レモンの香りがする。
自分も、外側からは「冷静な策士」としてしか見られていないが、中身は想像以上に小心者である。
「……考えすぎるのは、悪い癖だ」
「わたしは、好きです」
リリアンヌは、迷いなく言った。
「考えすぎてしまう人は、きっと、誰かを傷つけたくないのだろうなって。
ローラン様の計画は、いつも、誰かが楽に息ができるようになっている気がします」
胸の奥が、じわりと温かくなる。
彼の計画は、しばしば「やりすぎ」と言われる。
けれど、彼にとっては、それが「安心を売る仕事」でもあった。
自分の安心も、相手の安心も、できるだけ確保しておきたい。
「……君は、よく見ているな」
「そうでしょうか? ぼんやりしているってよく言われます」
「ぼんやりしている人間は、そんなふうには言えない」
「では、ふんわり、でしょうか」
「……そうだな。ふんわり、は合っている」
お互いに笑い合ったところで、広場に時計の鐘が鳴り響いた。
そろそろ、最後の目的地――花カフェへ向かう時間だ。
***
花通りのはずれに、小さなカフェがある。
店内には、天井から下げられたドライフラワーと、壁一面の蔦。
窓際の席からは、通りを行き交う人と花がよく見える。
「わぁ……。ここ、秘密基地みたいです」
リリアンヌが目を輝かせる。
「ここの花蜜ティーは、評判がいい」
「ローラン様、よくご存じなのですね」
「花祭の協賛店だ。資料で見ただけだ」
本当は、過去に視察兼ねて一度来たことがある。
だが、「ひとりで下見しておいた」と告げるのは、さすがに恥ずかしかった。
窓際の席に腰を下ろすと、店員が花型のメニューを持ってきた。
「おすすめは、季節の花蜜ティーと、花びらクッキーの盛り合わせになります」
「花びらクッキー……!」
リリアンヌが食いつくのを横目に見ながら、ローランはメニューを一瞥した。
「では、それを二人分」
「はい、かしこまりました」
注文を終え、ふと窓の外を見ると、通りの花飾りが風に揺れている。
リリアンヌは、それを嬉しそうに眺めていた。
「……こうして、ゆっくり座るのは、久しぶりです」
「忙しかったか」
「はい。花祭前は、家のほうも、お客様が増えますから。
でも、忙しいのは嫌いではありません。たくさんの方が、楽しみにしてくださっている証拠ですから」
彼女の言葉には、少しだけ誇らしさが滲んでいた。
「だからこそ、今日みたいな時間が、とても贅沢に感じます。
ローラン様は、こういう時間も、お好きですか?」
唐突に向けられた問いに、ローランは一瞬答えに詰まった。
好きか、と聞かれて、即座に「好きだ」と言うのは、彼の性格上難しい。
けれど。
「……嫌いではない」
それは、彼にしてはかなり素直なほうの言葉だった。
「嫌いではない、ですか?」
「ああ。……いや、その。
君が、嬉しそうだから、悪くないと思う」
正面から出てきた本音に、リリアンヌの頬がぱあっと明るくなる。
「わたしが嬉しそうだから、ですか?」
「……あまり、繰り返すな」
「ふふ。なんだか、胸のあたりが、あたたかくなりました」
彼女が胸に手を当てて微笑むのを見て、ローランの胸も同じように温かくなる。
その瞬間だけは、彼の頭の中の行程表は、完全に真っ白になっていた。
花蜜ティーとクッキーが運ばれてきて、柔らかな甘い香りが漂う。
窓辺の席に差し込む午後の光の中で、二人はしばらく、ほんのささやかな他愛ない話を続けた。
家族のこと。好きな花のこと。
リリアンヌが、レースとリボンに目がないこと。
ローランが、意外と辛いものが苦手なこと。
笑い合ううちに、時間はあっという間に過ぎていった。
***
カフェを出る頃には、空は少しだけ茜色に染まり始めていた。
「今日は、本当に楽しかったです。
ローラン様が、こんなふうにご一緒してくださるなんて、思っていなかったので」
「……それは、どういう意味だ」
「いつもお仕事でお忙しそうでしたから。
わたし、お役に立てるように頑張らなきゃと思っていて、その……“お邪魔”にならないようにと」
お邪魔。
その言葉に、ローランは眉を寄せた。
「君が邪魔だったことなど、一度もない」
「そう、でしょうか?」
「ああ。むしろ――」
……むしろ、君がいることで、自分の仕事の意味が、少しだけ違って見える。
そう言えたら、どれほど簡単だろう。
喉まで出かかった言葉は、やはり「プライド」と「照れ」と「慣れていない」の三重結界に阻まれて、別の形に変わる。
「むしろ、君が楽しそうにしているのを見ると、計画を立てた甲斐があったと思う」
「計画を……」
「今日は、その……自然体、を目指したつもりだが」
最後のあたりは、半分以上小声だった。
「自然体、でしたか?」
「……不満か」
「いえ、とても素敵でした。
でも、少しだけ、いつもより、『よく考えていらっしゃるのだろうな』という感じはしました」
「それは自然体とは言わないな」
「ふふ。ローラン様の自然体は、『よく考えていらっしゃる』状態なのだと思います」
リリアンヌは、ふわりと笑った。
「わたし、今日、ひとつだけわかったことがあるんです」
「何だ?」
「ローラン様は、誰かのために考えるのが、お好きなのですね」
ローランは一瞬、言葉を失った。
それは、彼が自分自身に対してさえ、なかなか認められなかったことだ。
「好きだからやっている」と言ってしまうと、途端に照れくさくなる。
だからいつも、「職務だから」「必要だから」と言い換えてきた。
「……そう、かもしれない」
それでも、今日はなぜか、否定する気になれなかった。
「君がそう言うなら、そういうことにしておこう」
「はい。
では、これからも、わたしのことも、たくさん考えていただけますか?」
無邪気なお願いに、ローランの心臓が派手に跳ねた。
「……それは、もう、すでに」
「すでに?」
「いや。なんでもない」
どうしても、あと一歩が出てこない。
その“あと一歩”を出せない自分を、内心で少しだけ情けなく思いながらも――どこかで、ぎりぎりに立っているこの感覚を、嫌いになりきれない自分もいる。
別れ際、リリアンヌがふと振り返った。
「ローラン様」
「何だ」
「もし、また……今日みたいな最適化デートがありましたら」
「……最適化デート」
「はい。
そのときは、わたしも、少しだけ、ローラン様の“自然体”をお手伝いしてもいいですか?」
「どうやってだ」
「たとえば――」
リリアンヌは、少しだけ距離を詰めて、そっと彼の歩幅に自分の歩幅を合わせた。
「こうして、一緒に歩いてみるとか」
ローランは、数秒遅れてから、その意味を理解した。
心臓が大きく跳ねる。
うまく息ができない。
「……それは、かなり、有効な手法だ」
「ふふ。では、また今度も、試してみましょうね」
そう言って微笑む彼女を見ていると、「自然体」がなんであるか、ほんの少しだけわかったような気がした。
***
その夜。
ローランは、机の上に広げた紙を見つめていた。
《本日行程:花通り散策デート・最適化案》
びっしりと書き込まれた行程表の端には、新たなメモが書き足されている。
――結果:
計画通りに進行した部分もあるが、予定外の会話・行動が多発。
しかし、予期せぬ瞬間に、彼女の笑顔と本音を引き出せた。
――評価:
成功率70%。
「自然体ふう」の導入としては、及第点。
――今後の課題:
言葉の選択において、「職務的説明」と「感情的本音」のバランス調整が必要。
さらに、ひとつの項目が追加される。
――新規作戦候補:
・人混み時の庇い動作を用いた距離調整。
台詞案:「覚悟しておけ」。
※ただし、命の話に誤解されるリスクあり。言い換えパターン要検討。
ローランは、その一文に印をつけると、ペンを置いた。
「……覚悟しておけ、か」
窓の外では、花祭を待つ花々が、静かに夜風に揺れている。
次に彼がその言葉を口にするとき、
それが「命」の話ではなく、もっと別の何かの覚悟を促すものになるとは――
この時点の彼は、まだ知らない。
ただひとつだけ確かなのは。
すでに彼の心の中では、「リリアンヌのとなりを考える時間」が、日々のどんな案件よりも大きな割合を占め始めている――という事実だった。
0
あなたにおすすめの小説
『借景の婚約者 ― 学院長代理の計算違い』
星乃和花
恋愛
【全9話+@:月金21:00更新】
学院長が病気療養中で、若き策士紳士セドリックが「学院長代理」に就任。
ある有力貴族が「学院長代理が独身なのは不安材料だ」と寄付を渋り始め、
セドリックは評判回復のために「(仮の)婚約者を立てる」ことを思いつくが――
そこで拾ってしまったのが、家政学科の天然少女リラ。
「……君だ。君に頼みたい」
リラは学園のためになれるならと、喜んで引き受ける。
学園のために寄付金を安定させたい目的だったのに、ふたりの日常に募り始める"恋"はおおきくてーー
少しの緊迫感(6話と8話)も添えた、糖度高めの日常ラブコメです。
『噂が先に婚約しましたが、私はまだ“練習相手”のつもりです(堅実護衛が半歩前から離れません)』
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全8話+後日談1話⭐︎
舞踏会が苦手な伯爵令嬢ルシアは、社交の“空気圧”に飲まれて流されがち。
――そして致命的に、エスコートされると弱い。
そんな彼女の“練習相手”に選ばれたのは、寡黙で堅実、おおらかな護衛隊出身の男ロアン。
半歩前を歩き、呼吸の乱れを見抜き、必要なときだけ手を差し出す彼の優しさは、甘い言葉ではなく「確認」と「対策」でできていた。
「怖くない速度にします」
「あなたが望めば、私はいます」
噂が先に婚約しても、社交界が勝手に翻訳しても――守られるのは、ルシアの意思。
なのに最後の一曲で、ルシアは言ってしまう。
「……ロアンさんと踊りたい」
堅実すぎる護衛の甘さに、流され注意。
噂より先に“帰る場所”ができてしまう、異世界ほの甘ラブコメです。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
初恋の名前
星乃和花
恋愛
⭐︎日水金21:40更新ー全25話⭐︎
「望むなら、手を取る」
幼い頃から憧れてきた“兄みたいな人”は、いつだって私の歩幅を守ってくれた。
大結界更新を前に、王都のための“婚約”が決まった日――
鈍感な令嬢エリシアは、ようやく自分の胸の熱の正体に気づきはじめる。
息が浅い夜は、手を。
怖い朝は、抱きしめて。
結果で示した先に待っていたのは、初恋の名前を呼ぶ瞬間だった。
ーーこれは初めての“恋“を憧れや尊敬と思い込んでいる彼女と、その気持ちが“恋“と知りながらも彼女が自分の言葉で気づく日を待つ彼の、一途で静かな溺愛。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる