4 / 16
第三章 恐怖戦略の崩壊
しおりを挟む
黒曜王国の歴史書は、この日のことをどう記すのだろう。
――敵味方とも死者ゼロ。
――戦地一帯、子猫と綿あめに占領される。
――その結果、停戦交渉へ。
文字だけ見れば、誰かのいたずら書きにしか思えない。
けれど、それは紛れもない現実であり、黒曜宰相オルガの築いてきた「恐怖の均衡」が、静かに崩れ始めた瞬間でもあった。
* * *
「……以上が、今回の戦地報告だ」
重厚な会議室に、オルガの声が低く響いた。
長机を囲むのは、将軍、財務官、法務官、そして宰相府の高官たち。
壁には、黒曜王国と周辺諸国の地図が掛けられている。そのうちの一つ――国境付近の地図には、戦地を示す赤い印がつけられていた。
だが、その印のまわりに、なぜか誰かが小さく猫の顔を描き足している。
会議の前に見つけたとき、オルガは描いた者を探そうとしたが、なぜかやめた。
(……報告に嘘はない、という印だと思えばいい)
そう、自分に言い聞かせた。
「死傷者ゼロ……」
将軍が唸る。
「それ自体は喜ばしいことですが……しかし、宰相閣下。
兵士たちが戦意を喪失し、敵兵もまた武器を捨て、猫と甘味を分け合っていたというのは――」
「事実だ」
オルガは淡々と答えた。
「呪詛網は完全に無効化された。
敵の指揮官は、呪術の放棄と停戦交渉に応じる用意があると明言した」
「し、しかし……!」
別の高官が、書類を握りしめたまま身を乗り出す。
「黒曜王国の抑止力は、“恐怖”にありました。
宰相閣下の名を聞くだけで敵が震え、勝負の前から退くからこそ、これまで大規模な戦を避けてこられたのです。それが、今回の件で――」
「猫と綿あめのイメージに書き換わった、と」
オルガの言葉に、会議室の空気が凍りついた。
誰も、冗談だと思わなかった。
黒曜宰相は冗談など言わない。
「実際、王都では“猫と綿あめの宰相”なる呼び名が出始めている」
「なっ……!」
「不敬です! 直ちに取り締まるべきかと!」
財務官が顔色を変える。法務官も慌てて頷こうとしたが、そのとき、静かな声がそれを遮った。
「取り締まる必要はない」
「しかし――!」
「恐怖は命令で維持するものではない。
勝手に育ち、勝手に枯れる。今回の結果は、その一端だ」
オルガは椅子から立ち上がった。
窓の外、王都の街並みが遠くに見える。
戦地から戻って数日。街のざわめきはいつもより軽く、どこか浮き立っているように感じられた。
子どもたちが路地で遊ぶ声が、ここまで届く気がした。
『にゃーっ! 綿あめ陣形、発動!』
『黒曜宰相ごっこ禁止な! こわすぎるから!』
『じゃあ、猫曜宰相!』
――猫曜宰相。
耳に入ってしまったその言葉を、オルガは頭の片隅から追い出せなかった。
恐怖の象徴から、妙な愛称へ。
(……くだらない)
そう切り捨てるには、胸の奥が妙にざわつきすぎる。
会議室の視線が、一斉にオルガに刺さる。
「宰相閣下。我が国の防衛方針は、今後どうされるおつもりですか。
恐怖を失ってまで、この“新たなやり方”にこだわる理由があるのか……」
「こだわっているつもりはない」
オルガは短く答えた。
「私は、最も犠牲の少ない方策を選んだに過ぎん。
今回の結果は、予想外ではあったが――それでも、死者は一人も出ていない」
「しかし、威光が……」
「威光のために命を差し出せとは、私は一度も言っていない」
低く、静かな声だった。
高官たちは、言葉を失う。
オルガ自身も、自分が何を守ろうとしているのか、わからなくなっていた。
恐怖か、和平か。
威光か、命か。
そのすべてが、黒曜の指輪の文字と一緒に、心の中でぐにゃりと歪んでいる。
指輪に刻まれた古代文字が、じりじりと熱を持つ。
――恐れられてこそ、我あり。
そんな意味を含んだ文が、何度も何度も読み返されている感覚。
(恐れられなくなった私は……何だ?)
自分で刻んだわけでもない文字なのに、その「正しさ」に縛られている。
恐怖のない宰相は、空虚な器に過ぎないのではないか。
「……とにかく、近々、王都の民に向けて演説を行う」
オルガは会議室を見渡した。
「停戦の経緯と、今後の方針を明示する必要がある。
その場で“恐怖の王国”の看板を降ろすかどうか、決める」
高官たちは一様に険しい顔をしたが、誰も即座には反対しなかった。
恐怖戦略は、すでに綻び始めている。
その現実から目を背けるには、子猫と綿あめのインパクトが強すぎた。
* * *
「宰相さま、演説するんですか?」
廊下で待機していたポポは、会議が終わるとすぐに声をかけた。
肩の子猫は、すっかりオルガの執務服に慣れてしまったらしく、今や当然の顔で黒曜の肩章の上に座っている。
本人だけが、まだ慣れていない。
「する。逃げるわけにはいかん」
「逃げてもいいと思いますけどねえ。怖い顔で怒られるより、猫と綿あめで笑われるほうが、まだ身体にいいですよ」
「仕事の話だ」
きっぱりと言い捨てたものの、オルガの眉間には深い皺が寄っていた。
ポポには、その皺の間にも小さな文字が見える気がする。
“失敗するな”“恐れられろ”。
(まちがい、です)
心の中でだけ、何度もそう告げる。
けれど、口にしたところで、誤字にはならない。
彼自身が「まちがいだ」と認めない限り。
「演説、見ててもいいですか?」
「お前に聞いてほしい内容ではない」
「でも、聞きたいです。
だって宰相さま、たぶんものすごく、まじめなこと言うんでしょう?」
「馬鹿にしているのか」
「褒めてるんですよ。
……ほら、まちがいがあったら、その場で直してあげます」
冗談めかして笑うポポに、オルガは鼻を鳴らすだけだった。
だが、その灰色の瞳の奥で、またひとつ“小さなまる”が浮かんでは消えた。
* * *
演説の日、王都の中央広場は、人と猫と甘い匂いで埋め尽くされた。
黒曜の塔のふもとに広がる大広場。
普段は重々しい軍事行進が行われるこの場所に、今日は露店が並び、子猫を抱いた子どもたちの声が飛び交っている。
「見て、おかあさん! “戦地出身”の子なんだって!」
「よく食べる子ねえ……綿あめも欲しいの?」
「猫に綿あめは駄目よ。お母さんが食べ――」
いつもより柔らかい笑い声。
広場のあちこちで、「黒曜の塔って、意外とこわくないね」とささやき合う声も聞こえる。
ポポは広場の端に立って、その光景を眺めていた。
肩の子猫は、今日は彼女のところに戻ってきている。毛繕いをしながら、黒曜の塔の上の演説台をじっと見つめていた。
「……すごい眺めですねえ」
人の心が、少しだけ軽くなるとき。
言葉の棘が、何かに紛れてまるくなるとき。
その瞬間が、ポポは好きだ。
ただ、その代償として――ひとりの人間の築いてきた戦略が音を立てて崩れているのだと思うと、胸の奥がきゅっとした。
(宰相さま、ちゃんと立っていられるかな……)
黒曜の塔の中ほどに設けられた演説台に、黒い外套の人物が現れる。
人々の視線が、一斉にそこへ向かった。
オルガの姿は、いつも通りだった。
背筋は真っすぐ、表情は硬い。
ただ、肩に猫はいない。さすがに今日はどこかに預けたのだろう。
(よかった。さすがに今日肩に乗ってたら、それだけで大事件ですし)
ポポが胸をなでおろしたそのとき――塔の側面を、影がすばやくよぎった。
「……ん?」
広場のどこかから、小さな声。
「見て! うちの猫、また塔に登ってる!」
よく見ると、演説台の下の方で、何匹かの猫がうろうろしている。
黒曜石の階段は冷たく滑りやすいはずだが、猫たちは器用にぴょんぴょん飛び跳ねていた。
オルガは気づいていないのか、練り上げた原稿を開く。
広場に静けさが降りる。
「――国の民よ」
低い声が、黒曜石に反響して広がる。
「今回の戦において、我が黒曜王国は、新たな手段によって敵の呪詛網を崩した。
それは、恐怖や報復ではなく――」
そのとき。
「にゃっ」
小さな黒猫が、演説台の欄干をひょいと乗り越えた。
それだけなら、まだ可愛いハプニングで済んだかもしれない。
問題は、その猫が、迷いなくオルガの肩を目指して突進したことだ。
「……っ」
さすがの黒曜宰相も、一瞬言葉を失う。
黒猫は、見事なジャンプで彼の外套の肩に着地し、前足でバランスを取りながら広場を見下ろした。
「にゃー」
広場がどよめいた。
「ね、猫が……!」
「肩に……!」
「あれ、“戦地出身”の子じゃない? うちの隣のおばさんが引き取ったって――!」
ざわめきに混じって、笑いが弾ける。
オルガは、猫を払うべきか一瞬迷った。
だが、肩に爪を立てて踏ん張る感触が、「落とされたくない」と訴えているように思えてしまう。
(……何を考えている)
猫に感情移入している自分に驚きながらも、手が動かなかった。
黒曜指輪の文字が、熱を帯びる。
“恐れられろ”、と刻まれた一文が、猫の体温でじりじりと滲んでいく。
広場の一角で、ポポが小さく息を呑んでいるのが見えた。
(宰相さま……)
この瞬間、彼の恐怖戦略は、完全に崩壊する。
それでも――。
オルガは、ゆっくりと口を開いた。
「……先ほどの続きだ」
声は少し低くなっていたが、震えてはいない。
「今回、我が国は、“恐怖を示すこと”ではなく、“誰も死なせないこと”を優先した。
その結果、戦場は……こうなった」
猫が、タイミングよく「にゃあ」と鳴く。
広場に、笑いと拍手が起こった。
オルガの灰色の瞳が、わずかに見開かれる。
彼はまだ、自分に向けて笑いが投げられることに慣れていない。
これまでは、怯えと憎しみか、せいぜい安堵しか向けられたことがなかった。
「恐怖によって抑止するやり方は、これまで多くの血を防いできた。
それは事実だ。私は、そのために“怪物”の役を引き受けてきた」
自嘲にも似た言葉が、広場の空気をかすかに震わせる。
ポポは、指輪の文字が「怪物」という単語でぎゅっと濃くなるのを見た。
「だが――」
オルガは、肩の猫に一瞬だけ視線を落とした。
「怪物の役に執着するあまり、別のやり方を見ようとしないなら、それは“まちがい”だ」
ポポの心臓が、一度強く跳ねた。
「まちがい」。
黒曜宰相の口から、その言葉が出た。
「今回の方法が、正しいとも限らない。
だが、私は――」
わずかな沈黙。
黒曜の塔の上で、風の音だけが吹き抜ける。
「――“恐怖だけが正解だ”という古い呪文を、一度、書き換えてみたいと思う」
広場が静まり返る。
誰かが、小さく息を吸う音。
誰かが、子猫を抱きしめる音。
そして――ぽつり、ぽつりと拍手が起こった。
「宰相さま……」
「生きてるほうが、いいに決まってる……」
「猫と綿あめで済むなら、そのほうが……!」
最初は遠慮がちだった拍手が、次第に広場全体に広がっていく。
恐怖のために下げられてきた頭が、初めて、自分の意思で上がる。
オルガは、その光景を信じられない思いで見下ろしていた。
(恐れではなく……)
そこにあるのは、奇妙な信頼と、少しの安堵、そして――ほんの少しの親しみ。
黒曜指輪の文字が、ぐにゃりと揺れる。
“恐れられてこそ、我あり”の文中の一文字が、ポロリと剥がれ落ちたように見えた。
その欠けた部分から、小さな“まる”がひとつ、光となって浮かび上がる。
ポポの目には、それがはっきり見えた。
(……今、宰相さま、自分で自分の呪文、ちょっとだけ直した)
誤字としてではなく、「まちがい」として。
他人に指摘されてではなく、自分で気づいて、言葉にした。
可愛い置換の魔法は発動しない。
これは、ポポの役目ではないからだ。
けれど、その瞬間、黒曜の塔の周りの空気が、ほんの少し、柔らかくなった。
恐怖戦略は、崩壊した。
もう、元には戻らない。
だが、その崩壊の跡地には――何か別のものが、生まれかけている。
* * *
「……疲れた」
演説が終わり、執務室に戻ったオルガは、椅子に腰を下ろすなりそう呟いた。
誰もいない部屋で、ようやく息を吐く。
指輪に刻まれた文字が、じんわりと冷えていくのがわかった。
「怪物の役にこだわるとはな。
そんな幼稚な自己紹介を、いつまで信じていた」
自嘲めいた笑いが、喉の奥で空回りする。
扉が、控えめにノックされた。
「どうぞ」
「お疲れさまですー」
ひょこ、と顔を出したのはポポだった。
片手には、小さな包み。
もう片方の手には、いつの間に拾ってきたのか、また別の子猫。
「勝手に入るなと言ったはずだが」
「勝手じゃないですよ。ちゃんとノックしました」
「そういう問題ではない」
オルガが眉を寄せると、ポポは気にした様子もなく部屋に入り、机の端に包みを置いた。
「これ、“まちがいのお詫び”です」
「……何の話だ」
「恐怖だけが正解、って思ってたの、まちがいだったって、さっき言ったじゃないですか。
その“まちがい”を見逃してたの、私もだから」
ポポは、少しだけ真面目な顔になった。
「宰相さまの指輪の文字、ずっと見えてました。
でも、自分でまちがいだって認めるまで、私には触れないって、わかってたから」
オルガの視線が、無意識に指輪へ落ちた。
古代文字は、相変わらず黒曜石の表面に刻まれている。
ただ、一部分だけ、欠けたように薄くなっている気がした。
「……お前の魔法では、直せないのか」
「はい。本人が、“それ、まちがいだな”って思わないと、“誤字”扱いにならないんです。
だから、今日の演説は、宰相さまにしかできないお仕事でした」
ポポは包みを開けた。
中には、小さな星型の砂糖菓子が入っている。
「さっき、広場にいた子どもが、“恐い宰相さまが、ちょっとだけ優しくなった気がする”って言ってました。
嬉しかったから、つい砂糖を多めに混ぜちゃいました」
「砂糖を……」
「甘さの過剰供給かもしれませんが、暴走はしないと思います。たぶん」
オルガは、半ば呆れたように、半ば諦めたように息を吐いた。
「“たぶん”は外せと言っている」
「がんばります」
どこかで聞いたやりとりだ、とオルガは思った。
戦地の草原で、子猫と綿あめが降った日。
あの日から、世界の書き方は少しずつ変わっている。
恐怖戦略は崩壊した。
それは、自分の中に刻まれていた古い呪文が、ひとつ剥がれ落ちたということでもある。
一つ剥がれれば、二つ目も、三つ目も――いつかは。
指輪の縁に、小さな“まる”が光る。
それはまだ、誤字として扱われていない。
ただの余白。
だが、そこに何を書くかは、自分次第だ。
(“恐れられないなら、価値がない”ではなく――)
ペンを取る。
黒曜のインクが、静かに紙に落ちる。
ポポは、机の向こうからこっそり覗き込んでいたが、何を書いているかは読まなかった。
それは、彼自身のための、人には見せない「書き換え」だから。
「……何ですか、その顔」
「いや、宰相さまの“まちがい帳”に、新しい一文が増えた気がしただけです」
「私の書いたものを勝手に帳簿扱いするな」
「でも、まちがいがあれば、いつでも直しに伺いますから」
ポポの笑顔は、相変わらず柔らかい。
その柔らかさが、ときどき黒曜石の表面を少しだけ曇らせて、そして磨き直していく。
恐怖戦略は崩壊した。
その代わりに、ゆっくりと――とてもゆっくりと――
“まちがいからやり直す政治”という、可笑しな新戦略が、黒曜の塔の中で息をし始めていた。
そして、その中心には必ず、
まちがい解呪屋と黒曜の宰相が、子猫と甘い砂糖菓子を挟んで座っているのだった。
――敵味方とも死者ゼロ。
――戦地一帯、子猫と綿あめに占領される。
――その結果、停戦交渉へ。
文字だけ見れば、誰かのいたずら書きにしか思えない。
けれど、それは紛れもない現実であり、黒曜宰相オルガの築いてきた「恐怖の均衡」が、静かに崩れ始めた瞬間でもあった。
* * *
「……以上が、今回の戦地報告だ」
重厚な会議室に、オルガの声が低く響いた。
長机を囲むのは、将軍、財務官、法務官、そして宰相府の高官たち。
壁には、黒曜王国と周辺諸国の地図が掛けられている。そのうちの一つ――国境付近の地図には、戦地を示す赤い印がつけられていた。
だが、その印のまわりに、なぜか誰かが小さく猫の顔を描き足している。
会議の前に見つけたとき、オルガは描いた者を探そうとしたが、なぜかやめた。
(……報告に嘘はない、という印だと思えばいい)
そう、自分に言い聞かせた。
「死傷者ゼロ……」
将軍が唸る。
「それ自体は喜ばしいことですが……しかし、宰相閣下。
兵士たちが戦意を喪失し、敵兵もまた武器を捨て、猫と甘味を分け合っていたというのは――」
「事実だ」
オルガは淡々と答えた。
「呪詛網は完全に無効化された。
敵の指揮官は、呪術の放棄と停戦交渉に応じる用意があると明言した」
「し、しかし……!」
別の高官が、書類を握りしめたまま身を乗り出す。
「黒曜王国の抑止力は、“恐怖”にありました。
宰相閣下の名を聞くだけで敵が震え、勝負の前から退くからこそ、これまで大規模な戦を避けてこられたのです。それが、今回の件で――」
「猫と綿あめのイメージに書き換わった、と」
オルガの言葉に、会議室の空気が凍りついた。
誰も、冗談だと思わなかった。
黒曜宰相は冗談など言わない。
「実際、王都では“猫と綿あめの宰相”なる呼び名が出始めている」
「なっ……!」
「不敬です! 直ちに取り締まるべきかと!」
財務官が顔色を変える。法務官も慌てて頷こうとしたが、そのとき、静かな声がそれを遮った。
「取り締まる必要はない」
「しかし――!」
「恐怖は命令で維持するものではない。
勝手に育ち、勝手に枯れる。今回の結果は、その一端だ」
オルガは椅子から立ち上がった。
窓の外、王都の街並みが遠くに見える。
戦地から戻って数日。街のざわめきはいつもより軽く、どこか浮き立っているように感じられた。
子どもたちが路地で遊ぶ声が、ここまで届く気がした。
『にゃーっ! 綿あめ陣形、発動!』
『黒曜宰相ごっこ禁止な! こわすぎるから!』
『じゃあ、猫曜宰相!』
――猫曜宰相。
耳に入ってしまったその言葉を、オルガは頭の片隅から追い出せなかった。
恐怖の象徴から、妙な愛称へ。
(……くだらない)
そう切り捨てるには、胸の奥が妙にざわつきすぎる。
会議室の視線が、一斉にオルガに刺さる。
「宰相閣下。我が国の防衛方針は、今後どうされるおつもりですか。
恐怖を失ってまで、この“新たなやり方”にこだわる理由があるのか……」
「こだわっているつもりはない」
オルガは短く答えた。
「私は、最も犠牲の少ない方策を選んだに過ぎん。
今回の結果は、予想外ではあったが――それでも、死者は一人も出ていない」
「しかし、威光が……」
「威光のために命を差し出せとは、私は一度も言っていない」
低く、静かな声だった。
高官たちは、言葉を失う。
オルガ自身も、自分が何を守ろうとしているのか、わからなくなっていた。
恐怖か、和平か。
威光か、命か。
そのすべてが、黒曜の指輪の文字と一緒に、心の中でぐにゃりと歪んでいる。
指輪に刻まれた古代文字が、じりじりと熱を持つ。
――恐れられてこそ、我あり。
そんな意味を含んだ文が、何度も何度も読み返されている感覚。
(恐れられなくなった私は……何だ?)
自分で刻んだわけでもない文字なのに、その「正しさ」に縛られている。
恐怖のない宰相は、空虚な器に過ぎないのではないか。
「……とにかく、近々、王都の民に向けて演説を行う」
オルガは会議室を見渡した。
「停戦の経緯と、今後の方針を明示する必要がある。
その場で“恐怖の王国”の看板を降ろすかどうか、決める」
高官たちは一様に険しい顔をしたが、誰も即座には反対しなかった。
恐怖戦略は、すでに綻び始めている。
その現実から目を背けるには、子猫と綿あめのインパクトが強すぎた。
* * *
「宰相さま、演説するんですか?」
廊下で待機していたポポは、会議が終わるとすぐに声をかけた。
肩の子猫は、すっかりオルガの執務服に慣れてしまったらしく、今や当然の顔で黒曜の肩章の上に座っている。
本人だけが、まだ慣れていない。
「する。逃げるわけにはいかん」
「逃げてもいいと思いますけどねえ。怖い顔で怒られるより、猫と綿あめで笑われるほうが、まだ身体にいいですよ」
「仕事の話だ」
きっぱりと言い捨てたものの、オルガの眉間には深い皺が寄っていた。
ポポには、その皺の間にも小さな文字が見える気がする。
“失敗するな”“恐れられろ”。
(まちがい、です)
心の中でだけ、何度もそう告げる。
けれど、口にしたところで、誤字にはならない。
彼自身が「まちがいだ」と認めない限り。
「演説、見ててもいいですか?」
「お前に聞いてほしい内容ではない」
「でも、聞きたいです。
だって宰相さま、たぶんものすごく、まじめなこと言うんでしょう?」
「馬鹿にしているのか」
「褒めてるんですよ。
……ほら、まちがいがあったら、その場で直してあげます」
冗談めかして笑うポポに、オルガは鼻を鳴らすだけだった。
だが、その灰色の瞳の奥で、またひとつ“小さなまる”が浮かんでは消えた。
* * *
演説の日、王都の中央広場は、人と猫と甘い匂いで埋め尽くされた。
黒曜の塔のふもとに広がる大広場。
普段は重々しい軍事行進が行われるこの場所に、今日は露店が並び、子猫を抱いた子どもたちの声が飛び交っている。
「見て、おかあさん! “戦地出身”の子なんだって!」
「よく食べる子ねえ……綿あめも欲しいの?」
「猫に綿あめは駄目よ。お母さんが食べ――」
いつもより柔らかい笑い声。
広場のあちこちで、「黒曜の塔って、意外とこわくないね」とささやき合う声も聞こえる。
ポポは広場の端に立って、その光景を眺めていた。
肩の子猫は、今日は彼女のところに戻ってきている。毛繕いをしながら、黒曜の塔の上の演説台をじっと見つめていた。
「……すごい眺めですねえ」
人の心が、少しだけ軽くなるとき。
言葉の棘が、何かに紛れてまるくなるとき。
その瞬間が、ポポは好きだ。
ただ、その代償として――ひとりの人間の築いてきた戦略が音を立てて崩れているのだと思うと、胸の奥がきゅっとした。
(宰相さま、ちゃんと立っていられるかな……)
黒曜の塔の中ほどに設けられた演説台に、黒い外套の人物が現れる。
人々の視線が、一斉にそこへ向かった。
オルガの姿は、いつも通りだった。
背筋は真っすぐ、表情は硬い。
ただ、肩に猫はいない。さすがに今日はどこかに預けたのだろう。
(よかった。さすがに今日肩に乗ってたら、それだけで大事件ですし)
ポポが胸をなでおろしたそのとき――塔の側面を、影がすばやくよぎった。
「……ん?」
広場のどこかから、小さな声。
「見て! うちの猫、また塔に登ってる!」
よく見ると、演説台の下の方で、何匹かの猫がうろうろしている。
黒曜石の階段は冷たく滑りやすいはずだが、猫たちは器用にぴょんぴょん飛び跳ねていた。
オルガは気づいていないのか、練り上げた原稿を開く。
広場に静けさが降りる。
「――国の民よ」
低い声が、黒曜石に反響して広がる。
「今回の戦において、我が黒曜王国は、新たな手段によって敵の呪詛網を崩した。
それは、恐怖や報復ではなく――」
そのとき。
「にゃっ」
小さな黒猫が、演説台の欄干をひょいと乗り越えた。
それだけなら、まだ可愛いハプニングで済んだかもしれない。
問題は、その猫が、迷いなくオルガの肩を目指して突進したことだ。
「……っ」
さすがの黒曜宰相も、一瞬言葉を失う。
黒猫は、見事なジャンプで彼の外套の肩に着地し、前足でバランスを取りながら広場を見下ろした。
「にゃー」
広場がどよめいた。
「ね、猫が……!」
「肩に……!」
「あれ、“戦地出身”の子じゃない? うちの隣のおばさんが引き取ったって――!」
ざわめきに混じって、笑いが弾ける。
オルガは、猫を払うべきか一瞬迷った。
だが、肩に爪を立てて踏ん張る感触が、「落とされたくない」と訴えているように思えてしまう。
(……何を考えている)
猫に感情移入している自分に驚きながらも、手が動かなかった。
黒曜指輪の文字が、熱を帯びる。
“恐れられろ”、と刻まれた一文が、猫の体温でじりじりと滲んでいく。
広場の一角で、ポポが小さく息を呑んでいるのが見えた。
(宰相さま……)
この瞬間、彼の恐怖戦略は、完全に崩壊する。
それでも――。
オルガは、ゆっくりと口を開いた。
「……先ほどの続きだ」
声は少し低くなっていたが、震えてはいない。
「今回、我が国は、“恐怖を示すこと”ではなく、“誰も死なせないこと”を優先した。
その結果、戦場は……こうなった」
猫が、タイミングよく「にゃあ」と鳴く。
広場に、笑いと拍手が起こった。
オルガの灰色の瞳が、わずかに見開かれる。
彼はまだ、自分に向けて笑いが投げられることに慣れていない。
これまでは、怯えと憎しみか、せいぜい安堵しか向けられたことがなかった。
「恐怖によって抑止するやり方は、これまで多くの血を防いできた。
それは事実だ。私は、そのために“怪物”の役を引き受けてきた」
自嘲にも似た言葉が、広場の空気をかすかに震わせる。
ポポは、指輪の文字が「怪物」という単語でぎゅっと濃くなるのを見た。
「だが――」
オルガは、肩の猫に一瞬だけ視線を落とした。
「怪物の役に執着するあまり、別のやり方を見ようとしないなら、それは“まちがい”だ」
ポポの心臓が、一度強く跳ねた。
「まちがい」。
黒曜宰相の口から、その言葉が出た。
「今回の方法が、正しいとも限らない。
だが、私は――」
わずかな沈黙。
黒曜の塔の上で、風の音だけが吹き抜ける。
「――“恐怖だけが正解だ”という古い呪文を、一度、書き換えてみたいと思う」
広場が静まり返る。
誰かが、小さく息を吸う音。
誰かが、子猫を抱きしめる音。
そして――ぽつり、ぽつりと拍手が起こった。
「宰相さま……」
「生きてるほうが、いいに決まってる……」
「猫と綿あめで済むなら、そのほうが……!」
最初は遠慮がちだった拍手が、次第に広場全体に広がっていく。
恐怖のために下げられてきた頭が、初めて、自分の意思で上がる。
オルガは、その光景を信じられない思いで見下ろしていた。
(恐れではなく……)
そこにあるのは、奇妙な信頼と、少しの安堵、そして――ほんの少しの親しみ。
黒曜指輪の文字が、ぐにゃりと揺れる。
“恐れられてこそ、我あり”の文中の一文字が、ポロリと剥がれ落ちたように見えた。
その欠けた部分から、小さな“まる”がひとつ、光となって浮かび上がる。
ポポの目には、それがはっきり見えた。
(……今、宰相さま、自分で自分の呪文、ちょっとだけ直した)
誤字としてではなく、「まちがい」として。
他人に指摘されてではなく、自分で気づいて、言葉にした。
可愛い置換の魔法は発動しない。
これは、ポポの役目ではないからだ。
けれど、その瞬間、黒曜の塔の周りの空気が、ほんの少し、柔らかくなった。
恐怖戦略は、崩壊した。
もう、元には戻らない。
だが、その崩壊の跡地には――何か別のものが、生まれかけている。
* * *
「……疲れた」
演説が終わり、執務室に戻ったオルガは、椅子に腰を下ろすなりそう呟いた。
誰もいない部屋で、ようやく息を吐く。
指輪に刻まれた文字が、じんわりと冷えていくのがわかった。
「怪物の役にこだわるとはな。
そんな幼稚な自己紹介を、いつまで信じていた」
自嘲めいた笑いが、喉の奥で空回りする。
扉が、控えめにノックされた。
「どうぞ」
「お疲れさまですー」
ひょこ、と顔を出したのはポポだった。
片手には、小さな包み。
もう片方の手には、いつの間に拾ってきたのか、また別の子猫。
「勝手に入るなと言ったはずだが」
「勝手じゃないですよ。ちゃんとノックしました」
「そういう問題ではない」
オルガが眉を寄せると、ポポは気にした様子もなく部屋に入り、机の端に包みを置いた。
「これ、“まちがいのお詫び”です」
「……何の話だ」
「恐怖だけが正解、って思ってたの、まちがいだったって、さっき言ったじゃないですか。
その“まちがい”を見逃してたの、私もだから」
ポポは、少しだけ真面目な顔になった。
「宰相さまの指輪の文字、ずっと見えてました。
でも、自分でまちがいだって認めるまで、私には触れないって、わかってたから」
オルガの視線が、無意識に指輪へ落ちた。
古代文字は、相変わらず黒曜石の表面に刻まれている。
ただ、一部分だけ、欠けたように薄くなっている気がした。
「……お前の魔法では、直せないのか」
「はい。本人が、“それ、まちがいだな”って思わないと、“誤字”扱いにならないんです。
だから、今日の演説は、宰相さまにしかできないお仕事でした」
ポポは包みを開けた。
中には、小さな星型の砂糖菓子が入っている。
「さっき、広場にいた子どもが、“恐い宰相さまが、ちょっとだけ優しくなった気がする”って言ってました。
嬉しかったから、つい砂糖を多めに混ぜちゃいました」
「砂糖を……」
「甘さの過剰供給かもしれませんが、暴走はしないと思います。たぶん」
オルガは、半ば呆れたように、半ば諦めたように息を吐いた。
「“たぶん”は外せと言っている」
「がんばります」
どこかで聞いたやりとりだ、とオルガは思った。
戦地の草原で、子猫と綿あめが降った日。
あの日から、世界の書き方は少しずつ変わっている。
恐怖戦略は崩壊した。
それは、自分の中に刻まれていた古い呪文が、ひとつ剥がれ落ちたということでもある。
一つ剥がれれば、二つ目も、三つ目も――いつかは。
指輪の縁に、小さな“まる”が光る。
それはまだ、誤字として扱われていない。
ただの余白。
だが、そこに何を書くかは、自分次第だ。
(“恐れられないなら、価値がない”ではなく――)
ペンを取る。
黒曜のインクが、静かに紙に落ちる。
ポポは、机の向こうからこっそり覗き込んでいたが、何を書いているかは読まなかった。
それは、彼自身のための、人には見せない「書き換え」だから。
「……何ですか、その顔」
「いや、宰相さまの“まちがい帳”に、新しい一文が増えた気がしただけです」
「私の書いたものを勝手に帳簿扱いするな」
「でも、まちがいがあれば、いつでも直しに伺いますから」
ポポの笑顔は、相変わらず柔らかい。
その柔らかさが、ときどき黒曜石の表面を少しだけ曇らせて、そして磨き直していく。
恐怖戦略は崩壊した。
その代わりに、ゆっくりと――とてもゆっくりと――
“まちがいからやり直す政治”という、可笑しな新戦略が、黒曜の塔の中で息をし始めていた。
そして、その中心には必ず、
まちがい解呪屋と黒曜の宰相が、子猫と甘い砂糖菓子を挟んで座っているのだった。
0
あなたにおすすめの小説
『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』
星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】
経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。
なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。
「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」
階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。
全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに!
「頬が赤い。必要だ」
「君を、大事にしたい」
真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。
さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!?
これは健康管理?それとも恋愛?
――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる