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第十五話 「外の確保」
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私
「二人の時間がほしいです」
その言葉は、静かで、でもはっきりしていた。
混んでないので、でもない。
効率です、でもない。
ただ、ほしい。
私は胸の奥が熱くなるのを感じながら、笑った。
「うん。ほしい」
私が同じ言葉を返した瞬間、彼の肩が少しだけ下がった。
安心したみたいに。
彼は“短くでいい”と言った。
逃げ道を残す主導。
縛らない主導。
私はその優しさが、好きだ。
公園じゃなく、今日は少しだけ別の道を選んだ。
小さなパン屋。窓が大きくて、店内が静か。
席は三つだけ。
甘い匂いがして、音が少ない。
彼が入口で立ち止まり、私を見る。
「……大丈夫ですか」
“外”の確認。
臆病がまだいる。
私は頷いて、手首のバンドを軽く見せた。
「大丈夫。合図もあるし」
彼が小さく頷く。
「……はい」
店内に入ると、彼はいつもより視線が落ち着いていた。
人が少ない。音が少ない。
選んだ場所が、彼らしい。
カウンターでパンを選んでいると、彼が先に言った。
「……あなたが好きそうなの、あります」
彼が指さしたのは、小さな蜂蜜のパン。
甘いけど重くない。
ちょうどいい。
「え、覚えてたの」
「……覚えます」
淡々と、でも確定。
私たちは二つ買って、窓際の席に座った。
外の光が柔らかく差して、彼の横顔が少しだけ優しい。
私は一口食べて、息を吐いた。
「……いいね。二人の時間」
彼は頷く。
「……はい」
その返事が、もう“確保”の返事だ。
私はふと、付箋の束のことを思い出した。
「ありがとう」も「今日はここまで」も、あなたが使えるように。
私はバッグから付箋を一枚取り出して、さらさらと書いた。
二人の時間、ありがとう
それを、彼の前にそっと置く。
彼の目が少しだけ揺れて、付箋を見つめる。
そして、ゆっくり言った。
「……受け取ります」
受け取る。
彼が受け取ると、落ち着く。
私は笑って頷いた。
「うん。受け取って」
彼は付箋を丁寧に折らずに、手帳の間に挟んだ。
大事なものをしまう手つき。
「……この時間」
彼がぽつりと言った。
「……終わらせたくないです」
また出た。
終わるのが嫌。
以前は、怖がりながら言っていた。
今は、少しだけ自然。
私は一拍置いて、ちゃんと受け取る練習をする。
「うん。終わらせたくないんだ」
彼が頷く。
「……はい」
私は少しだけ笑って、枠も置く。
「じゃあ、パン食べ終わるまで。終わったら、また奥に戻ろう」
彼の肩が少し下がる。
「……はい。パンの終わりまで」
同じ言葉を繰り返す。
確保の仕方が、可愛い。
私は一口食べながら、彼の手元を見る。
指先が少しだけ緩んでいる。呼吸も深い。
外でも、彼は整えられるようになってきた。
それは私のためでもあり、彼自身のためでもある。
私は静かに言った。
「ねえ。二人の時間、言ってくれて嬉しかった」
彼は少しだけ目を伏せた。
「……言うの、怖かったです」
「うん。怖いよね」
「……でも、足りないので」
足りない。
この言葉は、もう悲しい言葉じゃない。
未来へ伸びる言葉になっている。
私は笑って頷いた。
「うん。足りないときは、言って」
彼が小さく頷く。
「……はい。言います」
「二人の時間がほしいです」
その言葉は、静かで、でもはっきりしていた。
混んでないので、でもない。
効率です、でもない。
ただ、ほしい。
私は胸の奥が熱くなるのを感じながら、笑った。
「うん。ほしい」
私が同じ言葉を返した瞬間、彼の肩が少しだけ下がった。
安心したみたいに。
彼は“短くでいい”と言った。
逃げ道を残す主導。
縛らない主導。
私はその優しさが、好きだ。
公園じゃなく、今日は少しだけ別の道を選んだ。
小さなパン屋。窓が大きくて、店内が静か。
席は三つだけ。
甘い匂いがして、音が少ない。
彼が入口で立ち止まり、私を見る。
「……大丈夫ですか」
“外”の確認。
臆病がまだいる。
私は頷いて、手首のバンドを軽く見せた。
「大丈夫。合図もあるし」
彼が小さく頷く。
「……はい」
店内に入ると、彼はいつもより視線が落ち着いていた。
人が少ない。音が少ない。
選んだ場所が、彼らしい。
カウンターでパンを選んでいると、彼が先に言った。
「……あなたが好きそうなの、あります」
彼が指さしたのは、小さな蜂蜜のパン。
甘いけど重くない。
ちょうどいい。
「え、覚えてたの」
「……覚えます」
淡々と、でも確定。
私たちは二つ買って、窓際の席に座った。
外の光が柔らかく差して、彼の横顔が少しだけ優しい。
私は一口食べて、息を吐いた。
「……いいね。二人の時間」
彼は頷く。
「……はい」
その返事が、もう“確保”の返事だ。
私はふと、付箋の束のことを思い出した。
「ありがとう」も「今日はここまで」も、あなたが使えるように。
私はバッグから付箋を一枚取り出して、さらさらと書いた。
二人の時間、ありがとう
それを、彼の前にそっと置く。
彼の目が少しだけ揺れて、付箋を見つめる。
そして、ゆっくり言った。
「……受け取ります」
受け取る。
彼が受け取ると、落ち着く。
私は笑って頷いた。
「うん。受け取って」
彼は付箋を丁寧に折らずに、手帳の間に挟んだ。
大事なものをしまう手つき。
「……この時間」
彼がぽつりと言った。
「……終わらせたくないです」
また出た。
終わるのが嫌。
以前は、怖がりながら言っていた。
今は、少しだけ自然。
私は一拍置いて、ちゃんと受け取る練習をする。
「うん。終わらせたくないんだ」
彼が頷く。
「……はい」
私は少しだけ笑って、枠も置く。
「じゃあ、パン食べ終わるまで。終わったら、また奥に戻ろう」
彼の肩が少し下がる。
「……はい。パンの終わりまで」
同じ言葉を繰り返す。
確保の仕方が、可愛い。
私は一口食べながら、彼の手元を見る。
指先が少しだけ緩んでいる。呼吸も深い。
外でも、彼は整えられるようになってきた。
それは私のためでもあり、彼自身のためでもある。
私は静かに言った。
「ねえ。二人の時間、言ってくれて嬉しかった」
彼は少しだけ目を伏せた。
「……言うの、怖かったです」
「うん。怖いよね」
「……でも、足りないので」
足りない。
この言葉は、もう悲しい言葉じゃない。
未来へ伸びる言葉になっている。
私は笑って頷いた。
「うん。足りないときは、言って」
彼が小さく頷く。
「……はい。言います」
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