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乗り換えが二回。
キャンプ場まで2時間ちょっと。
車の免許を最近取ったところなので、レンタカーでもよかったかなとも思う。
しかし慣れない車で山道を運転するというのも気疲れしてキャンプ場についたらクタクタということが予想できたのでやめにした。
しかも楓は車にめちゃくちゃ酔うらしい。
ということで今回はおとなしく電車にしておいてよかった。

期せずして二人して地味な装いになってしまっていて、いささか華やかさに欠ける。
が、ここでかわいらしくシフォンのワンピースの生足に歩きにくそうなサンダルをチョイスしてくるような楓は楓ではない。
キャンプと言えば動きやすい服装。
虫刺されを警戒して肌露出ゼロぐらい野暮ったくなってしまっている楓だからかわいいのだ。

繋いでいる楓の左手には、一年前の誕生日に壱成がプレゼントした指輪がきっちりとつけられている。
婚約指輪かと思うほど律儀に毎日指輪をつけてくれていることに壱成はくすぐったさを感じているし、楓のいじらしさがかわいいなとも思う。
当然壱成の指にも同じデザインの指輪が嵌められていて、見ればすぐに彼女持ちだとわかる。
世の中には彼女がいるとわかっていてあえて近づいてくるような女もいるのが難点だ。

人のまばらな田舎の電車は二人掛けのシートになっていて、近づかなければ何をしていても見えないだろうなと壱成は思う。
色気のない恰好をしているが、かわいい彼女だ、隣にいたらちょっかいをかけたくなるのは世の定め……。

そ、とパンツできっちりと隠されている太ももの上に手を置いた。
ざらざらとした繊維の感触と、太ももの柔らかさが手に伝わる。

楓は何も言わないが、突然の壱成の行動にぎょっとして慌てたように壱成を睨んだ。
しかし力づくで止められたりはしていない。

このぐらいならまだ許してもらえるのか、と調子に乗った壱成はその手をするすると動かして、股の間まで移動する。
楓はばっと足をきつく閉じてしまった。期せずして太ももの間に手を挟まれた壱成はそのぷにぷにとした触感を指先で楽しむ。

「ッ!」

楓が眉を吊り上げて、壱成の肩を硬いこぶしで殴ってきた。

「痛いんだけど」

「ばかッ」

怒鳴ってきた楓の瞳は潤んでいる。恥ずかしかったんだろう。

「ン、ごめん。我慢する」

「……」

プイと壱成から顔をそらして窓の外の景色を見ているふりをしている楓の後ろから抱き着いて、服の上からでいいから胸を揉みしだきたいな、などと思うがやめておこう。

そういうのは夜にすればいい。
そういう手はずだ。

楓だってはずだ。
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