13 / 26
12
しおりを挟む
改札口を出ると、それなりにビルが建っているのがわかる。
食事が出来そうな店もちらほら見えて安心する。
「うわ、でかい看板」
壱成が目にしているのは、『駅ちか5分で温泉宿!?』と書かれているもので、他の看板広告の二倍の大きさでかなり目立っている。温泉宿というだけあって、木造らしい建物は、風情があっていい感じだ。照明が暗く、少し古めかしい感じがレトロでいい。
しかも駅から5分なんて、目と鼻の先の近さだ。
「ここ、とりあえず行ってみて、空いてるか聞いてみる?」
「温泉だって、いいね」
二人して気になると頷き合い、看板に載っていた地図を頼りに温泉宿へ向かう。
ほどなくして見えてきた木造の渋い塀は近くの建物との年季が違う。
どこから入るのかと道なりに歩いていくと、ようやく塀が途切れ玄関口にたどり着いた。
「うーん、趣のあるホテルだな」
小さな庭には、ししおどしが一つある。苔むした大きな岩がどっしりとした様子で風情がある。
その近くには、手ごろな大きさのもみじの木と、大きな桜の木が植えてある。今の季節二つとも緑のみずみずしい葉がついている。風が吹くたびに二つの木の影がざわざわと動いて木陰の隙間の太陽の光で水がキラキラと光っている。
こじんまりとした庭なのに、まとまった印象の気持ちのいい庭だ。
石畳の道を歩くと靴の底がじゃりじゃりと音をさせる。
玄関ドアはガラスの自動ドアになっていて、中の様子がよくわかる。
「すいません、今日って空いてますか?」
壱成がフロントの若い店員さんに尋ねると、「何名様ですか?」「部屋はご一緒でよろしいですか?」
と質問をされる。
「和室でしたら空きがありますよ」と返事があり、この宿に泊まることになった。
ざんねんながらごはんについては予約していないため準備が難しいと言われてしまい外で食べることになった。
早めの時間ではあるが、部屋はもう準備できているためすぐにでも部屋に入れるらしい。
通された部屋は案外広い。畳敷きで、こじんまりとした机と座布団が敷いてある。
板の間には、七宝っぽい花瓶が置いてあり、掛け軸がかかっている。
掛け軸の下には、コンセントがある。
テレビは部屋に置いていないらしい。
宴会場から一番近い部屋だった。
平日だからから客が少ないのか、二人以外の客の姿は見なかった。
チェックインの時間よりも少し早いらしいから、もう少しすれば他の客の姿を見かけることがあるかもしれない。
部屋まで案内してくれた店員さんには「お布団はまた時間になったら準備させていただきます」などと言われたが、「自分たちでやるので大丈夫です」と断った。
楓は、部屋の中を見て回り、トイレや流しのある場所を確認していた。
楓は壱成が言った言葉に首を傾げて、「え? なんで? 敷いてもらえばいいのに」と言っている。
食事が出来そうな店もちらほら見えて安心する。
「うわ、でかい看板」
壱成が目にしているのは、『駅ちか5分で温泉宿!?』と書かれているもので、他の看板広告の二倍の大きさでかなり目立っている。温泉宿というだけあって、木造らしい建物は、風情があっていい感じだ。照明が暗く、少し古めかしい感じがレトロでいい。
しかも駅から5分なんて、目と鼻の先の近さだ。
「ここ、とりあえず行ってみて、空いてるか聞いてみる?」
「温泉だって、いいね」
二人して気になると頷き合い、看板に載っていた地図を頼りに温泉宿へ向かう。
ほどなくして見えてきた木造の渋い塀は近くの建物との年季が違う。
どこから入るのかと道なりに歩いていくと、ようやく塀が途切れ玄関口にたどり着いた。
「うーん、趣のあるホテルだな」
小さな庭には、ししおどしが一つある。苔むした大きな岩がどっしりとした様子で風情がある。
その近くには、手ごろな大きさのもみじの木と、大きな桜の木が植えてある。今の季節二つとも緑のみずみずしい葉がついている。風が吹くたびに二つの木の影がざわざわと動いて木陰の隙間の太陽の光で水がキラキラと光っている。
こじんまりとした庭なのに、まとまった印象の気持ちのいい庭だ。
石畳の道を歩くと靴の底がじゃりじゃりと音をさせる。
玄関ドアはガラスの自動ドアになっていて、中の様子がよくわかる。
「すいません、今日って空いてますか?」
壱成がフロントの若い店員さんに尋ねると、「何名様ですか?」「部屋はご一緒でよろしいですか?」
と質問をされる。
「和室でしたら空きがありますよ」と返事があり、この宿に泊まることになった。
ざんねんながらごはんについては予約していないため準備が難しいと言われてしまい外で食べることになった。
早めの時間ではあるが、部屋はもう準備できているためすぐにでも部屋に入れるらしい。
通された部屋は案外広い。畳敷きで、こじんまりとした机と座布団が敷いてある。
板の間には、七宝っぽい花瓶が置いてあり、掛け軸がかかっている。
掛け軸の下には、コンセントがある。
テレビは部屋に置いていないらしい。
宴会場から一番近い部屋だった。
平日だからから客が少ないのか、二人以外の客の姿は見なかった。
チェックインの時間よりも少し早いらしいから、もう少しすれば他の客の姿を見かけることがあるかもしれない。
部屋まで案内してくれた店員さんには「お布団はまた時間になったら準備させていただきます」などと言われたが、「自分たちでやるので大丈夫です」と断った。
楓は、部屋の中を見て回り、トイレや流しのある場所を確認していた。
楓は壱成が言った言葉に首を傾げて、「え? なんで? 敷いてもらえばいいのに」と言っている。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました
せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる