【完結】清い交際なんて!~温泉旅館でしっぽり♡したかったのに夜這いしてきたのは彼女の姿だけど彼女じゃないナニかだった

染西 乱

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改札口を出ると、それなりにビルが建っているのがわかる。
食事が出来そうな店もちらほら見えて安心する。

「うわ、でかい看板」

壱成が目にしているのは、『駅ちか5分で温泉宿!?』と書かれているもので、他の看板広告の二倍の大きさでかなり目立っている。温泉宿というだけあって、木造らしい建物は、風情があっていい感じだ。照明が暗く、少し古めかしい感じがレトロでいい。
しかも駅から5分なんて、目と鼻の先の近さだ。

「ここ、とりあえず行ってみて、空いてるか聞いてみる?」

「温泉だって、いいね」

二人して気になると頷き合い、看板に載っていた地図を頼りに温泉宿へ向かう。
ほどなくして見えてきた木造の渋い塀は近くの建物との年季が違う。

どこから入るのかと道なりに歩いていくと、ようやく塀が途切れ玄関口にたどり着いた。

「うーん、趣のあるホテルだな」

小さな庭には、ししおどしが一つある。苔むした大きな岩がどっしりとした様子で風情がある。
その近くには、手ごろな大きさのもみじの木と、大きな桜の木が植えてある。今の季節二つとも緑のみずみずしい葉がついている。風が吹くたびに二つの木の影がざわざわと動いて木陰の隙間の太陽の光で水がキラキラと光っている。

こじんまりとした庭なのに、まとまった印象の気持ちのいい庭だ。

石畳の道を歩くと靴の底がじゃりじゃりと音をさせる。

玄関ドアはガラスの自動ドアになっていて、中の様子がよくわかる。

「すいません、今日って空いてますか?」

壱成がフロントの若い店員さんに尋ねると、「何名様ですか?」「部屋はご一緒でよろしいですか?」
と質問をされる。

「和室でしたら空きがありますよ」と返事があり、この宿に泊まることになった。
ざんねんながらごはんについては予約していないため準備が難しいと言われてしまい外で食べることになった。
早めの時間ではあるが、部屋はもう準備できているためすぐにでも部屋に入れるらしい。

通された部屋は案外広い。畳敷きで、こじんまりとした机と座布団が敷いてある。
板の間には、七宝っぽい花瓶が置いてあり、掛け軸がかかっている。
掛け軸の下には、コンセントがある。
テレビは部屋に置いていないらしい。

宴会場から一番近い部屋だった。
平日だからから客が少ないのか、二人以外の客の姿は見なかった。
チェックインの時間よりも少し早いらしいから、もう少しすれば他の客の姿を見かけることがあるかもしれない。

部屋まで案内してくれた店員さんには「お布団はまた時間になったら準備させていただきます」などと言われたが、「自分たちでやるので大丈夫です」と断った。
楓は、部屋の中を見て回り、トイレや流しのある場所を確認していた。
楓は壱成が言った言葉に首を傾げて、「え? なんで? 敷いてもらえばいいのに」と言っている。
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