【完結】清い交際なんて!~温泉旅館でしっぽり♡したかったのに夜這いしてきたのは彼女の姿だけど彼女じゃないナニかだった

染西 乱

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「このまま帰るのもアレだし、どっか泊まってこ? な?」

怒った楓をなだめるような低姿勢で壱成が楓の顔を覗き込む。どこで練習しているのか、壱成は上目遣いが上手だ。

何を期待しているのか、あからさまな壱成の態度に楓は顔を手で覆って、真っ赤な顔を隠しながら頷く。

なにも壱成ばかりがコトを急いていたわけではない。
楓だって、壱成のことが好きで付き合っている。そういう関係になるのにだって抵抗はない。
昔と違って何をするのか十分に理解してもいる。
遅々として進まない関係にもやもやして親友の寧々に相談したことも何度だってある。
「楓ちゃんってば壱成くん大切にされてるのねー、壱成くんのこと見直しちゃった」などと寧々には揶揄されていた。
けど、だけど、大切にするにも限度というものがある。
気づけば二人揃ってお酒を飲める年になってしまっている。今回のキャンプで一緒に朝を迎えるのもやぶさかではないといろいろ準備してきた。
……昨日の夜はムダ毛の処理に時間がかかりすぎてしまったため、楓は少々寝不足だ。

楓は横目でちら、と壱成の股間がもっこり膨らんでるのを見る。
楓のことを思って興奮していると思えば嬉しくもある。

「あんま遠くまで行きすぎると田舎過ぎて何にもなくなっちまうし、この駅で降りてみるか」

乗り換えのために降りた駅だが、一応は急行が停まる駅なのでそれなりに栄えているはずだ。

「ン……」

楓は言葉少なに頷き、飲み干した紅茶のペットボトルを軽く握りつぶす。
壱成は渡した炭酸ジュースを一口だけ飲んで左手に持っている。
緑色のメロンを思わせるジュースの中で小さな泡が上に上がっていっている。

「泊るところがあればいいんだけどなぁ」

大体駅前には男女が二人で泊るための建物がある。十中八九この駅にもあるだろう。

楓はどきどきとうるさい心臓の音を聞く。壱成も気が急いているのかいつもより早口だなと感じてなんだかかわいいなと思った。
ひょうひょうとしているように見えて、壱成は壱成なりに緊張して焦っているのだ。

「こっち」

楓は壱成に手を引かれて改札を通った。
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